リアルサウンド連載「From Editors」第59回:sacaiの“かわいい”が詰まった『sacai A to Z』は無限に楽しい
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
“sacaiらしさ”にあらためて触れる
「From Editors」の自分の回では図録ばかりを紹介しているのですが、例にもれず今回も。昨年のちょうど今頃の季節、たまたま立ち寄った神保町の古書店でたくさんの本が並ぶなか、いちばんに目についた作品集『sacai A to Z』を紹介します。
2015年に発売されたsacai初の作品集『sacai A to Z』。「A」=Astonish、「B」=Brand……と、AからZのアルファベット順にいかにsacaiというブランドがあるのかが200点以上の写真やエッセイとともに収録され、大解剖されています。たとえば、「C」=Creation。そこには1999年の設立以降2000年SSから順にブランド/各コレクションを代表するアイテムの写真が並び、一目見ただけでクリエイティブにおけるsacaiのアイデンティティがどこにあるのかがわかるような構成になっています。「C」の章で最初に出てくるのは、もちろんニット(sacaiは5型のニットから始まったブランドなのです)。それだけでときめきポイントは爆上がりです。
すべてのページが素敵なのは言わずもがなですが、個人的に特に好きな章は「I」です。そのまま“自分”というチャプターで、白地に黒文字で「I」とだけ書かれた扉と、創立者である阿部千登勢の写真――たったこれだけで構成された2ページの章。しかし、真っ黒のワンピースに厚いウェッジソールのサンダルを履いた彼女の姿こそ、スタンダードとエレガントの黄金比だなあと、つくづく思わされます。
sacaiのショッピング袋もその黄金比の詰め合わせだと思っています。sacaiのショッピング袋は、外側は白地に黒文字で「sacai」と書いてあるだけの一見シンプルな紙袋なのですが、底板がミラーになっているんですね。これがさりげないおしゃれであり、とてもsacaiらしい。お気に入りのアイテムを持ち帰り、家に帰ってそれを取り出し、空になった袋を前にしても「どこまでもsacaiすぎる!」とハッピーな気持ちになります。
2024年SSのアンクルブーツを早くおろしたいなあと快晴の日を待ちながら、異素材のドッキングのかわいさ、透けるクリエイティブの強さ……自分がsacaiを好きな理由をあらためて感じることのできる作品集のページを捲る毎日です。
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