NAQT VANE、新メンバー Yunoaを迎えて広げる挑戦 『Dispersion』リリースをVANEsと祝福した一夜

 澤野弘之トータルプロデュースによるチームプロジェクト・NAQT VANEが、約1年ぶりとなるイベント『NAQT VANE Special Event - Dispersion -』を5月11日に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて開催した。これは今年1月にリリースされた1stフルアルバム『Dispersion』の発売を記念し、収録曲すべてを披露する一夜限りのスペシャルイベントとして行われたもの。公演中には新メンバー加入のサプライズ発表ならびにお披露目パフォーマンスもあり、会場へ詰めかけたVANEs(ファンの呼称)を驚喜させた。

 定刻を回り場内が暗転すると、バンドメンバーに続いてモノトーンのシャツをまとった澤野弘之、ブラックを基調にしたシックかつゴージャスな装いのHarukazeがゆっくりとステージに登場。この日のイベント は、ギターとベースを加えた4人編成で届けられた。オープニングナンバー「Dispersion」のトラックが不穏に鳴り響き、おもむろにHarukazeが柔らかく透き通った声でエスニックな旋律を歌い始めると、会場の空気は瞬時に一変。聴衆はみるみるうちにNAQT VANEワールドへと引きずり込まれた。

澤野弘之

 アコースティックギターの鋭いカッティングに導かれて始まった2曲目「NOWVERSE」からは一転、強烈なビートをともなうグルーヴィーなダンスチューンが次々に畳みかけられていった。澤野は終始泰然とした様子で寡黙に鍵盤を叩き続け、一方のHarukazeはシリアスかつクールなパワーボーカルでフロアを圧倒しながらも、観客全員とひとり残らず目を合わせんばかりの勢いで方々に手を振り笑顔を振りまいていく。それに呼応するように客席では白く輝くペンライトが規則正しく揺れ動き、曲目を重ねるごとに会場は一体感を増していくのだった。

 パフォーマンスは寸分違わずアルバム『Dispersion』の曲順通りに進行した。うっとりと陶酔するようにNAQT VANEの音楽世界に身を委ねるオーディエンスに対し、Harukazeは「もっと声が聞きたいよ!」と何度もコール&レスポンスを試みる。それが奏功してかフロアの緊張感も徐々にほどけていき、次第に声量を増していく聴衆にHarukazeも満足げだ。MCでは、Harukazeの「東京じゃないところから来たよって人!」との問いかけに「福岡!」「大阪!」「北海道!」などの返答が至るところから飛び交うなか、ひときわ大きな「中国!」の声が上がりHarukazeが目を丸くするひと幕も。楽曲パフォーマンスはあくまでスタイリッシュに、トークはあくまでほがらかに、ハイコントラストなステージングでVANEsを魅了していった。

Harukaze

 ウッドベースのボウイングをフィーチャーして幻想的な世界観を表現してみせた「Reminiscing」などを経てイベントが終盤に差しかかると、澤野があらたまった様子で「実はですね、今日このイベントで発表というか、お知らせがありまして」と客席へ向けて語り始めた。「NAQT VANEは“挑戦”をテーマにいろんなことをやっていきたいなと思っているなかで、可能性を広げていけるようなひとりのボーカリストに出会えて。より僕らが新しいことに突き進んでいくことになるんじゃないかなというところで、新体制の新メンバーを紹介できればと思っております」と飄々とした口調で告げ、フロアにどよめきを巻き起こした。

 そしてHarukazeが高らかに「Please welcome, Yunoa!!」と声を張り上げると、ストリートミックスなファッションに身を包んだ新ボーカリスト・Yunoaがステージに姿を現した。驚きを隠せずにいるオーディエンスが温かな拍手と歓声で彼女を迎え入れると、すかさず「Beautiful Mess」の演奏がスタート。Harukazeの力強くも透明感のあるボーカルに、それとは系統の異なるYunoaのハスキーかつスモーキーな歌声が重なることによって、楽曲に新たな色彩が加えられていく。そのポジティブな化学反応に対し、オーディエンスは盛大なシンガロングで応えるのだった。

 歌い終えたYunoaは、あらためてVANEsに挨拶。「初めまして、Yunoaです。ちょっと覚えづらい名前なんですけど、覚えて帰ってください」と控えめに呼びかけ、「アーティストとして生き始めてから、まだ2カ月も経っていなくて。NAQT VANEに入って今日から活動していく感じなんですけども……優しくしてください(笑)」 と茶目っ気のあるコメントで温かな喝采を呼んだ。

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