ガロ、色褪せることのない名曲の数々 70年代フォーク&ロックシーンを牽引したバンドの奥深さ

 ほかに、10枚目のシングルとなった1974年の「ビートルズはもう聞かない」は、松本隆が彼らに唯一作詞を提供した曲。松本のビートルズ・モチーフの一環でもあり、過ぎゆく青春を回顧する切ない別れの歌である。作曲も佐藤健が手がけた新機軸の作品だった。シングル曲パートのラストとなる「さいごの手紙」は、メンバーの堀内護が作詞・作曲・編曲のすべてを手がけた作品で、今は亡き堀内への大野の想いが察せられる。瀬尾一三による瀟洒(しょうしゃ)なストリングス・アレンジも相まって強い印象を残す一曲となっている。そのカップリングだった大野の作詞・作曲による「青春の旅路」もつい聴きたくなってしまう。

 アディショナル・パートでは、5thアルバム『CIRCUS』から「大男の歌」と「ピエロの恋唄」、さらに阿久悠が全作詞を手がけた1975年の6thアルバム『吟遊詩人』から「悲歌(えれじぃ)」「大都会の羊飼い」、そしてタイトル曲の「吟遊詩人」が収められた。それまでのガロの作品群とは一線を画したイメージのアルバムに対する大野の思い入れの深さが窺える選曲となっている。なお「悲歌」は、ここでは唯一の大野自身の作曲によるナンバーである。なんとも切ない心に深く沁み入る傑作なのだ。

 今回のアルバムのラストを締めくくるのは、彼らの最後のオリジナル・アルバムとなった1975年の『三叉路』の冒頭に収められていた「夜間飛行機」。言葉では表しづらいような独特な余韻を残し、聴き終わってからももっとガロの世界に浸りたくなる。ここではシングル曲のみの収録だが、最初のアルバム『GAROファースト』なども素晴らしい楽曲ばかりだ。今聴いても決して古びていない瑞々しい作品群は、当時を知る世代はもちろんのこと、初めて耳にするであろう若い世代の琴線にもきっと触れるであろうことは想像に難くない。歌とともに時代は巡る。

ガロ『シングルズ&オリジンズ』

■リリース情報
ガロ『シングルズ&オリジンズ』
発売中
¥3,000(税込)

<収録楽曲>
【prologue】
1. 演奏旅行

【singles】
2. 地球はメリー・ゴーランド
3. 美しすぎて
4. たんぽぽ
5. 一人で行くさ
6. 学生街の喫茶店
7. 君の誕生日
8. ロマンス
9. 一枚の楽譜
10. 涙はいらない
11. 公園通り
12. 姫鏡台
13. ピクニック
14. ビートルズはもう聞かない
15. 一本の煙草
16. さいごの手紙

【additional tracks】
17. 大男の歌
18. ピエロの恋唄
19. 悲歌(えれじい)
20. 大都会の羊飼い
21. 吟遊詩人

【epilogue】
22. 夜間飛行機

詳細:https://www.110107.com/s/oto/discography/MHCL-3084

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