ずっと真夜中でいいのに。満漢全席にして孤高のアバンギャルド 圧巻のKアリーナ横浜公演レポ
その「中華」のモチーフはステージのセットだけでなくステージの演出、とりわけACAねが羽のついたバイク(町中華の出前でお馴染みのスーパーカブ風)でステージの上空を移動(!)してのアリーナ中央のサブステージで展開された、中盤のOpen Reel Ensembleを中心としたセットにおいて重要な鍵となっていた。ライブの真っ最中にサブステージ上でおもむろに炒飯の調理(!)を始めるACAねという奇を衒ったパートだけでなく、その前後で演奏された、ライブのために書き下ろされたのであろう楽曲(「NEO炒飯」「幻の五香粉」)のエキセントリシティ、アルバムの中で聴くよりも毎回ライブ演奏においてそのユニークさと凄みが伝わってくる「機械油」も含め、むしろずとまよの表現の核にあるのは、こうした前衛的なパフォーマンスなのではないかと思えてくるほどだった。
もちろん、オーディエンスのしゃもじ拍子でのリアクションの大きさによっていずれも代表曲である「MILABO」「お勉強しといてよ」「ハゼ馳せる果てるまで」の中から1曲だけ演目が決められても(結局、両日とも「ハゼ馳せる果てるまで」が選ばれた)ビクともしないありあまる名曲の数々。今回が初披露となった、四つ打ちのリニアビートにACAねの(ラップというよりも)トースティングが乗せられた新曲「Blues in the Closet」の斬新さと雲海のようなスモークと照明が織りなす見事な演出。アンコール3曲を含め全編にわたって一瞬たりとも不安定さを見せることがなくなったACAねの強靭で表情豊かな歌声。Mori Calliopeをフィーチャリングゲストに迎えての「綺羅キラー (feat. Mori Calliope)」と、そのままMori Calliopeも参加しての「あいつら全員同窓会」の流れの圧倒的なクライマックス感……などなど、一般的な意味におけるアリーナライブとしての満漢全席感&満腹感も文句のつけようがないものだったことは前提として、ライブを終えた後に充実感とともに痛感したのは、ずとまよにとってもはやライブとは「作品を発表する場」ではなく「作品そのもの」であるということだった。
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