TM NETWORK、The Street Sliders、さだまさし、松任谷由実……意外な組み合わせのトリビュートアルバム
The Street Slidersは22年半ぶりの再集結を記念して2023年3月にトリビュートとオリジナル音源の2枚組から成る作品『On The Street Again -Tribute & Origin-』をリリース。1980年の結成以降、多方面に影響を与えてきたバンドゆえ、本作には同年代から若い世代まで様々なミュージシャンが名を連ねた。
The Birthday、ザ・クロマニヨンズ 、エレファントカシマシといったトリビュートアルバムへの参加自体が貴重なバンドたちは各々の魂をぶつけるようにスライダーズの楽曲と向き合い、SUPER BEAVER、GEZAN、YONCE(Suchmos)といった世代の離れたミュージシャンたちもそれぞれの手法で楽曲を解釈。80年代から現代まで進化し続けるロックの多様さを実感できる作品だ。
ALIはスカビートで「EASY ACTION」をカバー。ホーンセクションや英語詞への書き換えなど、非常に挑戦的なアレンジを施した。また斉藤和義は「ありったけのコイン」を弾き語りでカバー。原曲の美しいメロディを抽出したシンプルな味わいだ。リスペクトと個性を両立させた名カバー揃いで、楽曲本来の味わいを損なわない本作はスライダーズを知らない人々への訴求力も抜群だ。
最後は少し特殊な作品。年末の恒例特番『クイズ☆正解は一年後』(TBS系)の企画で生まれたトリビュートアルバム『ザ・ブルーハーツ クイズ☆正解は一年後 トリビュート』である。本作は12組のお笑い芸人がTHE BLUE HEARTSの楽曲をカバーした作品で、2022年に首都圏の高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで内容の詳細を伏せて密かにCDが流通していたもの。現在は配信にて聴くことができる。
田村淳がメインボーカル、田村亮はコーラスに徹するという2人の“関係性”を如実に表したロンドンブーツ1号2号の「TRAIN-TRAIN」や、パンクロック映えするしゃがれ声を聴かせるくっきー!(野生爆弾)の「終わらない歌」など、歌っている芸人のキャラクターと楽曲が絶妙にリンクしている。ミリオンヒットシンガーでもある有吉弘行による「青空」の穏やかな歌声も聴きごたえ十分だ。楽曲本来の魅力と、豊かなキャラクター性を備えた歌声によってトリビュートアルバムが成立する好例だろう。
個性的なトリビュートアルバムが次々とリリースされる昨今。どの作品にも共通しているのは、名曲を歌い継ぐ意義深さだ。時代を超え、現代のシーンとも呼応する。名曲たちの普遍的な魅力はいつまでも色褪せないのだ。
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