aiko『相思相愛』レビュー:劇場版『名探偵コナン』主題歌が大反響、歌詞表現で光る巧みな手腕
aikoが新シングル『相思相愛』を5月8日にリリースした。本作はaikoの45作目のシングルで、表題曲は劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の主題歌。YouTubeで公開されているMVの再生回数はすでに550万回を突破し、コメント欄には楽曲に対する反響に加えて、同映画にまつわる声も寄せられている。特に劇中においてこの曲が流れるタイミングに賞賛の声が上がっており、映画のストーリーに楽曲がマッチしているとコナンファンからも絶賛。TikTokでもこの曲を使用した投稿が現在増加中のため、今後もさらなる広がりを見せそうだ。
aiko本人曰く「大切な人を想う一心で書いた」というこの曲。主人公が大切な相手を想う気持ちは、サビの〈ずっと遠くから見てる〉といったフレーズに色濃く表れている。なかでも、曲中において〈あたしはあなたにはなれない なれない〉という一文が何度か登場するが、この〈なれない〉という言葉の繰り返しによって、主人公が感じている心の寂しさや切なさが聴く側にも強く伝わる仕上がりとなっている。
サウンド面も見逃せない。緻密なバンドアンサンブルでありながらも、ボーカルそのものを際立たせる押し引きのバランスが見事。aikoのソングライティングのセンスを直に感じ取ることのできる、シンプルだが深みのあるアレンジが印象的だ。編曲を担当したのは、多くのJ-POP作品を手がけるトオミヨウ。最近では「食べた愛」「青空」「メロンソーダ」といったaiko作品でもアレンジを担当している。
そうした秀逸なアレンジも相まって、本作はやはり歌詞面が耳に強く残る。たとえば、この曲は〈あたし〉と〈あなた〉による非常にパーソナルな歌でありながら、〈どこかにある地球の〉や〈どこかにある宇宙で〉といった、あえてスケールの大きな言葉を用いることで、主人公の気持ちの深さや切実さが感じ取れるものになっている。個人的な感情と巨大な世界観との対比によって、一人の人間の心の内を詩的に、かつドラマチックに描くこうした巧みな手腕は、これぞaikoといったところ。〈月と目が合って笑う〉のような独特の表現にしても、aikoならではのリリックだと感じる。