なんとBlu-ray16タイトル同時リリース。80's～90'sの音楽＆カルチャーへの偏愛を燃料に、熱狂的ファンを増やし続けるザ・リーサルウェポンズ（以下、ポンズ）の最新リリースは、常識破りの物量作戦だ。2020年のインディーズ期から2024年の最新映像まで、主要ステージを網羅した膨大なライブヒストリー。過去に配信済みの映像もあるが、ハイクオリティのBlu-rayでコンプリートできる意味は大きい。早速中身をチェックしよう。

　16タイトルの冒頭を飾るのは『コンバンワンマン IN TOKYO 2020』。活動開始1周年を記念して恵比寿LIQUIDROOMで開催された、今回のリリースの中では最も初期のライブで、サイボーグジョー（Vo）の日本語がまだ怪しく、アイキッド（Producer）はあまりしゃべらない。しかし冒頭の「アニキ」コールや観客参加型のツイン怒号システムなど、独自のスタイルはすでに完成済み。「80年代アクションスター」をはじめ初期代表曲満載。『ラグビーワールドカップ』やヒゲダンスのコントなど、体を張ったネタも多数。見どころ指数は満点に近い。

　『都立家政ブックマートライブ 2020 & 2022』は、ポンズの聖地・ブックマート都立家政店の店内で収録。2020年の4曲は当時生配信されたままの映像で、固定された縦型画面のチープさがかえって新鮮。2022年の2曲はサイボーグジョーが“故障”で不在、ブックマート都立家政店の店長がボーカルの当て振りを披露するシュールな内容だが、アイキッドが「さよならロックスター」を歌うレアなシーンが見られるから「これでいいのだ」と言っておこう。

　3枚目の『新宿バトルロイヤル 2021』は、アイキッドがこよなく愛する音楽とプロレスを合体させた新たなライブスタイルの発明だ。客席のど真ん中に作られたリングの上で、続々と登場するファイター（怪獣含む）たちと戦いながらライブが進む、前代未聞のパフォーマンスは百聞は一見に如かず。とにかくプロレスをしている時のアイキッドが実に楽しそうなので、これでいいのだ。

　『ポンズの野望 TOUR 2022 IN TOKYO ＜FINAL＞』は、メジャー1stアルバム『アイキッドとサイボーグジョー』のリリースツアーからの映像で、仕込み映像や照明の充実、スモークマシンの登場など、演出もメジャー級にパワーアップ。さらにアイキッド先生の漫談トークもパワーアップ。コロナ禍ゆえに怒号は聞こえないが、すっかりうまくなったジョーの歌とアイキッドの気合満点のギターがそれを補って余りある。

　2022年6月、映画『トップガン マーヴェリック』公開を（勝手に）記念する横浜某所の屋外ライブ『YOKOHAMA TOPGUN RESPECT 2022』は、なんとヘリコプターをチャーターして撮影した豪華版。ただし飛行シーンはほぼなく、ヘリをバックにひたすらカラオケで歌う、チープなのか贅沢なのかわからないのがポンズらしい。続く『中野駅前大盆踊り大会 2022』も屋外ライブで、地元市民の前で提灯をバックに歌うサイボーグジョーの絵面がいきなり面白い。手持ちカメラのリアルなアングル、警備のアナウンスやセミの声も聞こえる、ブートレグ感満載の仕上がりが楽しい。都立家政と鷺ノ宮在住の2人にとっては凱旋ライブと言える晴れ舞台だ。

　『大コンバンワンマン IN 中野サンプラザ 2022』も地元凱旋ライブで、ステージの規模感、照明や電飾や映像の豪華さ、どれをとっても過去最高を更新。「川中島の戦い」での殺陣の演出もかっこいい。そして何よりかっこいいのは、愛器・スタインバーガーを操るアイキッドのギターヒーローぶりだ。のちに本人も「まさかこの歳で、ギターがうまくなるとは思わなかった」（※1）と言っていたが、ギターキッズに夢を与える颯爽たる演奏にもぜひ注目を。

　さて、ここまで観てもまだ16タイトルの半分にも届かない。先を急ごう。2023年3月に開催された『BACK TO THE 80'S TOUR 2023 IN FUKUOKA ＜FINAL＞』の見どころは、ツアーファイナルならではの演奏の完成度と、旅先ならではのご当地トークで、福岡のうまいもんを語るアイキッドも嬉しそうだ（顔は見えないが）。声出し解禁前だが、この時期にしかない会場のあたたかい連帯感を感じられるのも、今となっては貴重なもの。そしていよいよコロナ禍の制約が解け、ツイン怒号システムが復活した2023年7月の『E.P.ウソつかない IN ZEPP SHINJUKU』。新しい会場の映像システムを使った派手な演出、小室哲哉ばりのシンセサイザー群に囲まれたアイキッドの雄姿、そして何よりすごい観客の歌と叫び。観客をステージに上げて無礼講で盛り上がる「きみマザ」まで、過去最高レベルの完成度のライブが楽しめる。