SPYAIR、『ハイキュー!!』に重なるバンドの物語 タッグの歴史からEP『オレンジ』を紐解く

 そして「オレンジ」である。優雅なストリングスに、シャープなバンドアンサンブルが重なっていくイントロからドラマチックだ。ジャキジャキにリズムが立っているバンドサウンドも、とてもSPYAIRらしい。Aメロを少しぶっきらぼうな趣きで歌い始めるYOSUKEは、後半にいくに従い、その声質の良さを発揮している。弱冠25歳の背中に背負ったSPYAIRの歴史に対して、全力で向き合っていることが窺えるボーカリゼーションも聴きどころではあるが、肝は中高音から高音の多彩さだ。ファルセットはもちろん、同じメロディの同じ音でも、最初から全開で出したり、ふわっと絶妙なクレッシェンドをつけたりしている。加えて、喉の開きや鳴らす部分をおそらく無意識で使い分け、そこが声音に変化をもたらしている。自分自身の最高値を攻めているボーカルとしてのスタンスがはっきり歌に表れており、聴いていてとてもスリリングである。

SPYAIR『オレンジ』Music Video(『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』主題歌)

 MOMIKENが手掛けた歌詞にも注目してほしい。「オレンジ」の歌詞には、これまでの『ハイキュー!!』ソングへのセルフオマージュが散りばめられている。歴代ソングの歌詞は、曲と一緒ならば聴き手への応援ソングに聴こえる。しかし歌詞だけ見ると『ハイキュー!!』の主人公や登場人物、つまり選手視点を意識して書かれていることがわかる。原作あってこその視点を踏まえながら、聴き手を限定しないシンプルな言葉をセレクトしているMOMIKENの才能に改めて驚いた。

 SPYAIRの心意気、そして『ハイキュー!!』という作品に対してのリスペクトと感謝がぎっしり詰まっているのがEP『オレンジ』だ。そんな彼らは4月からの全国7大都市ツアー『SPYAIR TOUR 2024 -ORANGE-』を経て、5月中旬から単独アジアツアー『SPYAIR ASIA TOUR 2024 -ORANGE-』を、9月には日比谷野外大音楽堂で単独野外ライブ『Just Like This 2024』を開催する。

〈明日へ向かう オレンジ色の空へ/羽ばたいていく〉

 「オレンジ」の歌詞が、今、これからのSPYAIRとリンクする。

◾️リリース情報
SPYAIR EP『オレンジ』
2024年2月14日(水)発売
配信:https://smar.lnk.to/by77J8
CD:https://smar.lnk.to/71PzJz
・期間生産限定盤:価格2,000円(税込)/品番AICL 4512
・通常盤:価格1,700円(税込)/品番AICL 4511

<収録曲>
1 オレンジ
2 イマジネーション - New Version -
3 アイム・ア・ビリーバー - New Version -
4 One Day - New Version -
5 オレンジ (Instrumental)
6 イマジネーション - New Version - (Instrumental)
7 アイム・ア・ビリーバー - New Version - (Instrumental)
8 One Day - New Version - (Instrumental)

SPYAIR OFFICIAL Web

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