台湾の音楽フェス『大港開唱 MEGAPORT Festival』で印象的だったアーティストは?(後編)

 「女神龍」ステージの2日目のラスト、大トリを飾ったのが「鄭宜農Enno Cheng」。大体1組40〜60分間の持ち時間なのですが、彼女だけ70分間というロングセットで、主催とお客さんからの期待値の高さが窺えます。実は現場で見ることができなかったので、動画を探して見入ってしまったのですが、前編で紹介した「洪佩瑜Pei-Yu Hung」と、もうひと組「那屋瓦少女隊Nanguaq Girls」がゲストで登場していました。ここでは「鄭宜農」と「那屋瓦少女隊」について紹介させてください。

 まず鄭宜農は、受賞歴も多数、ミュージシャンであり俳優でもある女性アーティスト。とても知的で力強く魅力的な方です。自身のYouTubeチャンネルの番組「邊走邊唱的女子」では、毎回女性ミュージシャンが出演、町を歩きながら、音楽制作に関する不安や葛藤を率直に語り合い、鄭宜農と演奏もします。きっと彼女は、自分と同じ女性ミュージシャンを応援し、多様な女性が受け入れられる場を作りたいのではないでしょうか。このチャンネルには「洪佩瑜」も「那屋瓦少女隊」も出演しています。

『大港開唱 MEGAPORT Festival』鄭宜農Enno Cheng、筆者、那屋瓦少女隊Nanguaq Girls
那屋瓦少女隊Nanguaq Girlsと

 「那屋瓦少女隊」は同じ日の早い時間に、同じステージに出演していたのですが、台湾原住民の歌手「ABAO」がプロデュースしている新しい若手原住民ミュージシャンの女性3人組。台湾華語とも台湾語ともまた全然違う言葉の響きがエキゾチックでカッコよかったです。最初はHIPHOPで会場中が手を挙げて踊り、R&Bのグルーヴに揺れ、最後の原住民の民謡まであっという間に感じました。原住民の言葉は大まかに分けても16種類あるそうですが、ライブではパイワン族、ブヌン族、ルカイ族、サキザヤ族、アミ族の言葉など、6つの原住民の言葉を使用。本人に尋ねると、言葉を分かる人は多分そんなにいないだろうとのことでした。ABAO曰く、若い原住民の子達はみんな、音楽の生まれつきのセンスがあるし、声もいいし、パフォーマンス力もあるから、みんなで活動すれば、たくさんの人に現在の原住民音楽のことを知ってもらえるのではないかと、このプロジェクトがスタートしたそうです。鄭宜農もきっと3人の音楽的才能とプロジェクトの意義に共感して、フックアップしたいと思っているのでしょう。

Makav 真愛【 Kingdom Lifestyle 】feat. ABAO阿爆 Official Music Video
【純享版】#邊走邊唱的女子 #鄭宜農 feat. #那屋瓦少女隊〈#千千萬萬 〉

 台湾のイベンター「東京兜圈Megurin' tokyo」の惠婷さんにお話を聞いたところ、このフェスのために再結成されたり、休止から目覚めたりするアーティストもいるそうです。ここだけのコラボレーションがサプライズではなくあらかじめ多数発表されていて、毎年それを楽しみにしているお客さんもたくさんいるとのこと。この厚さのラインナップを毎年用意しているなら、出演者が発表されなくてもチケットが売り切れるのは納得だし、チケットが買えなかった人がライブ会場の外で集会を開く(惠婷さん曰く「台湾あるある」なんだそうです)というのも分かります。ベテランのビッグスター、勢いある若手、注目のフレッシュな才能、そして日本のアーティストを海外で見るという新鮮さ、本当に見応えがあります。帰ってきてから見れなかった人を調べると、また出会いがあるし、本当に行ってよかった!

 アクセスがしやすいという点、元々観光地なので飲食店もトイレも多く、屋内に逃げることも簡単で体調管理がしやすい点。フェスのフードエリアも充実していて、今の台湾の流行の食を楽しめてめっちゃお得。(流行っているのか、ホットドックの出店が多かった。ピーナッツバターとソーセージなど日本人にとっては変わり種のホットドックが美味しかったです)。海外のフェスデビューには最適ではないかと思います。「人生的音楽祭。」の『大港開唱 MEGAPORT Festival』に、来年は参加してみませんか?

台湾の音楽フェス『大港開唱 MEGAPORT Festival』で印象的だったアーティストは?(前編)

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