s**t kingz NOPPOが掴んだダンスの“人間味” 初ソロ演出公演『GOOFY~マヌケな2人の間で~』ゲネプロに潜入

 ゲネが始まる前、NOPPO、Jillian、歌と音楽を担当する植松陽介、高橋あず美の4人で写真撮影。その間、和やかな空気が漂っており、本番に向けていい関係性が築かれていることが伝わってくる。4人の“間”は、何もない“間抜け”な状態ではなく、稽古や制作などの過程を経てコミュニケーションが十分に取られている状態なのだろう。そんなことを考えていると、ゲネがスタート。同会場は中央にステージがあり、360度に客席がある構成。どの席からもNOPPOとJillianの表情がしっかり見えるはずだ。そして、ダンスでコミュニケーションをするため、NOPPOとJillianにセリフはない。発せられるのは「おぉ」や「あぁ」といった言葉のみで、ほかはすべてジェスチャーやダンスで表現される。

NOPPO(s**t kingz)
Jillian Meyers

 最初の楽曲「Wonderful Piece」では、ステージ上の公園に現れたNOPPOがブロックでできた遊具や布でできた砂場などに、次々と興味を持っていく。ワクワクした表情で公園内を歩き回りつつも、何かを探しているかのよう。その心情を植松が歌い上げていくと、Jillianも公園にやってくる。NOPPOと同じくキラキラした表情で公園内を歩き回り、その心躍る様を高橋の歌声が描いていく。ふたりはブロックを動かしたり、登ったり。さまざまなダンス、動きで表現をしていった。

植松陽介
高橋あず美

 その後もダンスと動き、表情だけでコミュニケーションを重ねていくNOPPOとJillian。それでも伝えたいことは理解できるはずだ。たとえば、ふたりの動きによってその場にないものが見えてくる場面も。あらためて、言葉とはコミュニケーションツールのひとつにすぎないと思わせてくれる。そして何よりもふたりが楽しみながら表現をしているようで、観劇しているほうも自然と笑顔になってしまう。さらに、“客席”と“舞台”を分離させていないのも楽しい。“観客”と“出演者”の“間”でも、しっかりとコミュニケーションが発生していくのだ。

 そして舞台の終盤、6曲目の「シーソー」の歌詞は、〈lalalalalalalalala〉のみ。中央に並んだブロックに座ってうなだれたり、床に寝そべったり、沈んでいる様子で、サウンドもそれを助長しているかのよう。しかし明るい曲調に変化すると、ふたりははつらつとした表情に変わり、ブロックで遊具を作り上げていく。花や馬、城を次々と作り、楽しげに公園内を回りながら踊っていくNOPPOとJillian。ユニゾンダンスなども組み込まれており、四方向すべてを正面として踊っていった。

 再び公園ができあがると、かくれんぼがスタート。いろいろな場所に隠れようとするJillianを鬼役のNOPPOが探していく。Jillianが見事に隠れると7曲目の「手をつなご」がスタート。Jillianを見つけられずうなだれるNOPPOのもとにJillianが姿を現すと、今度は紐を使って遊んでいく。同曲の歌詞は、「そばにいるからたまには頼ってほしい」というメッセージが込められており、それに公園内でできる遊びの動きを取り入れて表現されている。紐を巧妙に使ったり、ブロックを円状に広げていったり。ぜひ、歌詞とダンス、表現のリンクを楽しんでみてほしい。

 こうしてあっという間に上演が終了。カーテンコールでは、「今から喋りまーす! やっと喋れる!」とNOPPO。Jillianも「喋りまーす!」と繰り返し、笑顔に包まれたまま幕を下ろした。

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