台湾の音楽フェス『大港開唱 MEGAPORT Festival』で印象的だったアーティストは?(前編)

土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.2

 日本で近々見ることができるアーティストというと、「草東沒有派對 No Party For Cao Dong」。日本ではあまり知られていないかもしれないのですが、ものすごい実力と人気があるバンドで、男臭く、ファンが拳をあげて泣きながら歌っちゃう系です。実は去年来日していて、大阪の梅田クラブクアトロでワンマンを見たのですが、ほぼ台湾からのお客さんでチケットはソールドアウト。国内でチケットが取れないから、ファンが海外まで見に行ってしまうという状態なんですね。「一番見たい台湾アーティストは誰?」と台湾の音楽関係者に聞くと、ほぼ全員彼らの名前をあげました。絶対に見た方がいいよと強くお勧めされました。もちろん一番大きな「南霸天」ステージに初日トリで登場。ヘビーでタフなロックバンド。凄まじい演奏テクニックとパワーで、言葉がわからなくても圧倒されます。今年のフジロックにも出ます! これぞインターナショナルなアーティストだというパフォーマンスです。ただ、モッシュやらダイブやらが苦手な人は、どうぞ少し離れたところで安全に(私もセーフティーエリアで見ます、笑)。

草東沒有派對 No Party For Cao Dong - 床 Lie【Official Lyric Video】

 この「南霸天」ステージは海沿い、まさに港に組まれていて、入り口のゲート横には、大きな船が横付けされています。フェスが掲げるテーマの「人生」と「音楽」。人生に寄り添う音楽、音楽が必要な人生、人生のアップダウンがあるからこそ響く音楽……など色々想像してはグッと胸が熱くなっているのですが、海ではなく港で見るライブとして、やはりロックは最高です。

 絶対に台湾で見たかったのが「拍謝少年 Sorry Youth」です。去年の来日ツアー時、私のラジオ番組にもゲストで来てくれたのですが、ちょっとナードなキャラクターと、ステージに上がった時に急に輝くプレイ姿の差に、びっくりしました。絵に描いたような「音楽好きが集まって学生の時に組んだバンド」という感じ。大人になっても好きな音楽の話でいつまでも盛り上がれる愛すべき人たちです。そして彼らは多くの人が使っている公用語の台湾華語ではなく、台湾特有の言語である台湾語で歌っているということを、忘れてはいけません。そこには彼らのプライドがある。ASIAN KUNG-FU GENERATIONに憧れて結成したというだけあって、メロディはキャッチーで、とてもフレンドリーに跳ねるリズムの曲も多い。ライブの後、このフェスに出演していたアジカンと一緒に晩御飯でテーブルを囲んだのだけど、彼らはアジカンにバックボーンを尋ねたり、社会情勢の話をしたり、それはそれは親和性の高い2組でした。現在レコーディング中とのことで、作品が完成したらまた来日してくれるはず。山あり谷ありの人生の歌が多いとのことですが、言葉がわからなくても伝わってくるものがあると思います。

拍謝少年 Sorry Youth - 歹勢中年 Sorry No Youth (Official MV)

 今回、私にとって初めての台湾の音楽フェスで、素晴らしい体験をたくさんしたので伝えたいことが多く、どんなふうに記事にまとめようかとワクワクしている最中の4月3日、台湾の東部沖で大きな地震が起きた。私の番組に来てくれたこともあり、今回のフェス取材の段取りもしてくれた拍謝少年 Sorry Youthにメッセージを送った。彼らは運よく大きな被害はないとのことで、逆に沖縄のことを心配してくれた。日本に災害が起きた時、すぐに心配して支援してくれるのが台湾の人たちだ。フェス開催エリア内にあるカフェでは、能登半島地震のチャリティライブをすぐに開催してくれた。お店にお礼を伝えたくてコーヒーを飲みに行ってきたところだ。

 被災された台湾の方々にお見舞いを申し上げるとともに、私が今すぐ台湾にできる最大のことは、このフェスでの素晴らしい体験を日本の皆さんにしっかり伝えることだと思う。次回は、後編をお届けします。

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