乃木坂46、“バスラ”の持続可能なあり方 AKB48『選抜総選挙』『リクエストアワー』の変化から考える

 AKB48が2009年から2018年まで毎年開催していた『選抜総選挙』は、シングル表題曲を歌うメンバーをファンが選ぶというグループの代名詞的なイベント。上位7位までに入ったメンバーは「神7」と呼ばれ、多くのメディアでも注目を集めるなど、人気の指針として長らく語り継がれていた。だが、精神的にも未熟な若いメンバーが激しい競争に晒されることで、プレッシャーを感じることも少なくなく、SNSの発達も重なったことでそれはより顕著にあらわれた。もちろん、ネガティブな側面だけではなく、ファンの声が直接反映されるという点や、メンバーの努力やアピールが一定の影響力を及ぼすという点で、アイドルにとってのやりがいにもなっていた。

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 しかし、その『選抜総選挙』は2019年以降行われていない。はっきりとした理由は明らかになっていないが、第4回から同イベントを生中継してきたテレビがその覇権をインターネットに奪われつつあったことやAKB48グループのアイドルとしてのあり方、つまりは“競争”が時代にそぐわなくなったことなど、様々な要因が考えられる。その間にも『選抜総選挙』は全員参加から立候補制へと方針を変えており、これまで上位にランクインしていたメンバーが出馬しないケースも少なくなかった。48グループ全体を巻き込みながら、一時はゴールデンタイムで生放送されるなど大きな影響力をもっていた『選抜総選挙』。以降も、方針を変えながら48グループらしい展開がされていく。それがIZ*ONEを生み出した日韓同時放送オーディション番組『PRODUCE 48』であり、地上波番組連動オーディション『OUT OF 48』(日本テレビ系)である。これらは『選抜総選挙』の流れを組みつつも、うまく時代にフィットしたコンセプトと言え、『選抜総選挙』をブラッシュアップして方向転換した例として挙げられる。

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 AKB48のもうひとつの恒例イベントが、ファン投票によって選ばれた楽曲をランキング形式で披露する『リクエストアワー』だ。2008年から2013年までは100曲、2014年と2015年は200曲、2016年から2019年は100曲とボリュームのある構成が続いていたが、2020年は50曲に。2021年は新型コロナウイルスの影響により、メンバー投票による配信ライブとして行われ、2022年にはカップリング曲だけに限定した『カップリングリクエストアワーベスト30』、2023年には劇場公演曲に限定した『劇場公演曲リクエストアワーセットリストベスト30』として形を変えながらも伝統的なイベントとして現在まで続いている。

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 これらを踏まえた上で、乃木坂46におけるバスラを終了するのか、それとも持続可能な形で残していくのかなど様々な方法が考えられる。現実的にバスラを終了することは、誰も望んではいないだろう。だが、5年先を見据えた時に、現在と同じような形で開催することができるのかという疑問も浮上してくる。

 そうなると、『9th YEAR BIRTHDAY LIVE』のような期別で分ける形、もしくは今回の『12th YEAR BIRTHDAY LIVE』のような年代ごとでの開催がメンバーの負担を考えると理想的のようにも思える。ただし、期別ライブではグループの歴史を網羅するというバスラの役割とは少々趣旨がズレてしまうという問題もあり、筆者個人としては、新たな挑戦となった『12th YEAR BIRTHDAY LIVE』は今後の指針になるのではないかと考えている。たとえば、5年ごとに分けてそれぞれの年代にリリースされた楽曲をセレクトしていく形であれば、伝統を守りつつ、持続可能なバスラを作り上げていくことができるのではないだろうか。

 乃木坂46もデビューから12周年を迎え、モーニング娘。やAKB48に続く長寿アイドルグループとなった。グループには年月を経て培われた伝統があり、メンバーはそれと常に向き合い続けながら、新たな道を模索していかなければならない。そのひとつがバスラだ。乃木坂46にとって大切なライブだからこそ、メンバーにとってもファンにとっても理想的な形での開催を望みたい。

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