eill、自分らしくいることを体現したステージ 25歳の今を刻んだZepp DiverCityワンマン

 eillが3月19日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でワンマンライブ『BLUE ROSE SHOW 2024 in TOKYO』を開催した。eillは昨年後半より韓国進出にも精力的に取り組んできており、日本で行うワンマンライブとしては、2023年6月の『eill 5th Anniversary Live “MAKUAKE”』以来となる。

 ステージにはまっしろい緞帳が下ろされ、eillとバンドメンバーのシルエットが大きく映された状態で1曲目の「hikari」の演奏がスタートした。最初の1ヴァースをビートレスで歌い終えた瞬間に幕が上がり、力強いバンドアンサンブルが加わった。ベースとドラムの出音の大きさに驚かされた。この低音感とグルーヴに彼女の強いこだわりを感じる。しかもそれがUSのR&BではなくK-POP由来と思われるのも2024年らしい。続く「花のように」では、歌詞が飛んでしまうアクシデント。照れ笑いしながらメンバーに「もう一回」と合図して、もう一度頭から歌い直した。その後「MAKUAKE」「palette」と歌うも、序盤は声色から若干の緊張が感じられた。

 eillは「すいませんね〜。緊張なのかよくわかんないけど(「花のように」の)頭しくっちゃいました」「でも人生こういうこともあるよね」とポジティブに気持ちを切り替えていく。「HUSH」「Succubus」「初恋」と初期の楽曲をメドレー形式で届けると、恋愛リアリティ番組『ラブ トランジット』の主題歌として人気の「happy ending」もダイナミックにアレンジされたバンドのグルーヴに乗せてリズミカルなボーカルを聞かせた。

 コロナ禍で観客が声を出せないライブを体験している彼女は、MCで「ファンの人と一緒にワッと声を出すのは久しぶりな感覚でなんかトキメキました。最後まで一緒にやっていきたいと思います」と話して、「片っぽ」をピアノの弾き語りで歌った。バンドアレンジもかっこいいが、シンプルなセットで歌唱すると、より彼女のシンガーソングライターとしての資質ーーメロディセンスや歌詞に込めた情感の表現力が際立つように感じた。「楽しいな、ライブって」という言葉にもう緊張はない。映画『夏へのトンネル、さよならの出口』の挿入歌「プレロマンス」は1番をエレキギターのみで歌うと観客からの手拍子が巻き起こる。2番からはバンドも加わり、オリジナルよりも音数の少ないバージョンで披露された。同じく主題歌「フィナーレ。」ではボーカリスト・eillを堪能できる伸びやかな歌唱で観客を魅了した。

 ここからはミュージシャン・eillの変遷を体験するパート。まずは2月28日にリリースされた新曲「25」。ピンクパンサレスを彷彿させるクールなUKガラージナンバーだ。これがいまのeillのモード。2021年発表の「23」はテイラー・スウィフトを感じさせる王道のアメリカンポップスで、2019年の「20」はR&Bの要素も入っていて、eillの好奇心と無邪気さが表現されているように聞こえた。自身にとって大事な3曲を歌い終えると「音楽をやってると変わることと変わらないことがあって。(中略)でも私は“自分がここにいなきゃ”と思ってたことが結構あったりしたの。自分がどういうふうになっても、どこの道を歩いても、私が歩けば私の道になるんだってこの5年で気づけました。でもそれは変わらず音楽を聴いてくれるみんなが導いてくれた道。一緒に歩いてる道だと思ってます。今日は感謝の気持ちを一番伝えたいです。ありがとうございます」と話した。

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