ライブ中のスマホ撮影が一般化 ビョーク、ボブ・ディラン……禁止することで差別化図る側面も

ライブ中のスマホ撮影、禁止で差別化も

 ライブに足繁く通う観客にとって、「ライブ中のスマホ撮影」は賛否両論ある話題である。また、海外では条件ありのケースもあるが、基本的には撮影OKで、日本では近年例外的なケースもあるが、基本的に撮影NG、と認識している音楽ファンが多いだろう。そのため、異なる文化の客層が集う音楽フェスやライブイベントだと、「スマホ撮影」について様々な意見が飛び交うケースもある。この場合、ルールを守る/守らないという視点で「スマホ撮影」の是非を語るケースも多いわけだが、近年、アーティストは「ライブ中のスマホ撮影」に対して、どのようなアプローチをしているのだろうか。この記事では、海外を中心にいくつかの事例から考えてみたい。

 前述の通り、海外ではほとんどのアーティストが(条件を設けつつも)スマホで撮影することや、それをSNSでシェアすることを許可しているし、それがプロモーションになるとプラスに捉えているケースも多い。一方で、厳重にライブ撮影をNGにしているアーティストもいる。

 例えば、Björkはそんなアーティストの一人だ。2023年の日本ツアー『björk japan 2023』では、アーティストサイドから「ライブ中のスマートフォンを含む録音・録画機器による撮影を禁止する」とアナウンスされた。「撮影に気を取られることなく、ぜひライブに参加する思いでBjörkのパフォーマンスを楽しんでほしい」と添えられていた(※1)。また、2023年に出演した『Coachella Valley Music and Arts Festival』においても、Björkは公式によるライブ配信を行わなかった(後日一部楽曲のみ公開)など、ある種のクリエイティブのコントロールの一環として、スマホ撮影を禁止にした可能性が考えられる。

 ボブ・ディランもライブ中のスマホ撮影禁止を強く主張してきたアーティストだ。2019年には観客がライブ中にスマホで撮影したことが原因で、途中で公演を終了させてしまい、そのままステージを後にするという事態が発生した。2023年の来日公演でもライブ中のスマホ撮影禁止というルールは徹底されており、スマートフォンを収納するロック付きポーチを入場口で配布して、物理的に撮影できない状態にしたうえで、ライブを行った。なお、アメリカのYondrという企業が開発したロック付きポーチについては、過去にMisfits、Guns N' Roses、Cage The Elephantなどのアーティストが使用した実績もある。

 ロンドンのCovertでは、「Drop Highlight」という技術を提案している。これは、会場入り口でQRコードが刻まれたリストバンドを受け取り、次の日にそのQRコードからクラウドにアクセスして、映像をダウンロードできるというもの。この技術を使うことで、ライブ中にスマホで撮影しないように誘導しながら音楽イベントを楽しんでもらえるようにできないか、と同社は考えているようだ。なお、Covertはロンドンを拠点とするハウスミュージックイベント会社であるRhythm Horizonsと提携し、スマホ撮影をなくすための方策として、2024年のイベントに「Drop Highlight」を導入することをアナウンスしている(※2)。

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