鈴木愛理「恋におちたら」カバーは日常的な恋愛ソングに 空音と☆Taku Takahashiがもたらす現代性

鈴木愛理&空音のボーカルによって楽曲のメッセージも変化

 ここまでサウンドを中心に書いてきたが、あくまで本楽曲の軽やかさの要となっているのがボーカルを務める鈴木と空音であることは疑いようがない。Crystal Kayといえば言わずと知れた2000年代の日本を代表するR&Bディーヴァであり、その包容感と情熱に満ちた歌声が原曲の魅力となっていたのは間違いない。一方で、鈴木のまっすぐで透き通った、それでいて感情の変化を絶妙に描き分ける歌声は、今回のカバーバージョンにおける軽やかで風通しの良いサウンドと見事にマッチしている。一方の空音のラップパートにおいても、原曲の雰囲気を壊さず、むしろそこにある景色の細部を描くかのような言葉選びが、元々のドラマティックな印象を(良い意味で)身近で親しみやすいものへと変化させている。例えるならば、原曲がプロポーズの運命的な瞬間を想起させるものであったとすれば、今回のカバーバージョンは二人の何気ないデートの場面がいかに特別なものであるかを祝福しているように感じられる。

 そんな雰囲気を最も印象づけるのが、〈ひとしきり雨が泣き止むのを待つコンビニ〉という日常的な風景から続く〈今日という日 もう2度とない〉という空音の言葉に導かれるように二人が揃って歌う〈My flowers shine so bright〉の美しさであり、そのあまりにも見事な日常の肯定は、この二人だからこそ確かな説得力を持つものとして響くのではないだろうか。UKガラージ/2ステップやジャージークラブの導入については、NewJeansやPinkPantheressに代表される近年のポップシーンのトレンド(まさに「2000年代リバイバル」や「Y2K」といった言葉とセットで語られることが多い)とも呼応するものであり、そうしたアプローチが約19年もの時を経て歌われる「恋におちたら」を現代的な手触りを持つ楽曲へと生まれ変わらせているのは間違いない。だが、それがただビートを変えたり、“今っぽく”リミックスしたものではなく、「今、歌われるべき楽曲」としての意味を感じさせるのは、原曲の持つ懐かしさや魅力を大事にしながらも、それを壮大でドラマティックなものではなく、何気ない日常を肯定するために歌おうという、今の鈴木愛理のリアルで等身大な姿にこそあるのではないだろうか。

※1:https://realsound.jp/2024/03/post-1592586.html

◾️配信情報
鈴木愛理「恋におちたら feat. 空音 & ☆Taku Takahashi」
配信中:https://erj.lnk.to/u8mxAf

◾️アルバム情報
鈴木愛理 ニューアルバム『28/29』
2024年3月20日(水)発売
【初回生産限定盤】(CD+Blu-ray+Goods):税込5,500円
・スペシャルボックス仕様
・スペシャルフォトブック(全32P写真集)付属
【通常盤】(CD+Goods):税込3,300円
・メッセージ入りフォトカード(3種ランダム封入)
 CD予約:https://airisuzuki.lnk.to/2829

<収録内容>
[CD]
01. 最強の推し!
02. ハートはお手上げ
03. heart notes
04. ONE DAY
05. shampoo ツミキ feat. 鈴木愛理(春野 Remix)
06. 恋におちたら feat. 空音 & ☆Taku Takahashi
07. Pink Shadow(28/29 Ver.)
08. 空は二度燃える 40mP feat. 鈴木愛理 (28/29 Ver.)
09. 平等なメロディ
10. 光

[Blu-ray]初回生産限定盤のみ付属
01.「ハートはお手上げ」 Music Video
02.「ハートはお手上げ」 Shooting Documentary
03.「heart notes」 Music Video
04.「heart notes」 Shooting Documentary
05.「最強の推し!」 Music Video
06.「最強の推し!」 Shooting Documentary

■ライブ情報
鈴木愛理『28/29』リリース記念イベント
・大阪会場
【日程】2024年6月30日(日)
【会場】サンライズビル大阪 ホールB
【住所】〒541-0051 大阪府大阪市中央区備後町2-6-8
・東京会場
【日程】2024年7月6日(土)・7日(日)
【会場】サンライズビル東京 グリーンホール
【住所】〒103-8470 東京都中央区日本橋富沢町11-12

イベント詳細:https://fortunemusic.jp/

鈴木愛理 Official Site

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