YOASOBI、LE SSERAFIM、SUPER BEAVER、福山雅治、My Hair is Bad、岩田剛典……注目新譜6作をレビュー

福山雅治「ひとみ」

福山雅治「ひとみ」

 父親と娘の関係を描いたドラマ『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)主題歌として書き下ろされた「ひとみ」は、往復書簡の形を取り入れて制作された。子につけた名前の意味、父としての思いを綴ったパートがあり、それを受けて娘が父親に対する気持ちを正直に打ち明ける。目に見えないものを手渡すような心のこもったやり取りこそがこの楽曲の核であり、福山雅治はそのなかにある温かさ、優しさを丁寧に掬い取りことで、多くの人が共感できる歌へと導いてみせた。楽曲の後半にはヴィヴァルディの『四季』より「春」の旋律をフィーチャーし、クラシカルで懐かしい音像を表現。言葉の響きを大切にしたふくよかなで奥深いボーカルをさりげなく際立たせている。(森)

My Hair is Bad「自由とヒステリー」

My Hair is Bad – 自由とヒステリー

 先週配信された「悲劇のヒロイン」と対をなす2週連続の配信シングル。00年代に流行った四つ打ちロックの、BPMをさらにアップさせたバージョン。バスドラのキックから始まり、ギターとベースが小気味よく走り出す様子にはそんなイメージを浮かべたが、最後まで聴けば、とにかく椎木知仁(Gt/Vo)のボーカルをメインに作られているのが印象的だ。いわゆる一番と二番の間、ラスト手前に多少のインタールードはあるが、それ以外は言葉数と起伏の多いメロディが、意外な展開を見せていく歌詞のストーリーが、最後まで曲を引っ張る役割をこなす。ここまで歌主体で組み立てるロックバンドも珍しい。彼女が部屋を出ていったこの話が、どう変わっていくのかも聴きどころ。(石井)

岩田剛典「MVP」

岩田剛典「MVP」

 3月6日リリースの2ndソロアルバム『ARTLESS』から先行配信された「MVP」は岩田剛典自身が作詞に参加したアッパーチューン。ドープなヒップホップと高揚感溢れるエレクトロをぶつけ合うようなトラックのなかで放たれるのは、自己肯定感をマックスにまで引き上げてくれる超ポジティブなリリック。特に〈嘲笑うHaters 無謀な夢 掌返し 不言実行するアリーナ〉というラインは強烈。彼自身が置かれた立場を俯瞰しながら、すべての批判をはねのけ、自分がやりたいことを貫く意思を刻んだこの曲は、いわば岩田の勝利宣言に等しい。攻撃的なボーカルも印象的なこの曲は、3月下旬にスタートする初のアリーナツアーでも強烈な存在感を発揮することになるだろう。(森)

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