エド・シーランのオリジナリティに酔いしれる ワンオクTakaも登場した東京ドーム公演

 ヘヴィかつブルージーな演奏に合わせてトーキングラップを披露した「Don't」、大切な人を失う喪失感について歌う「Eyes Closed」を経て「Give Me Love」の後半では、客席をブロックに分け異なるフレーズを歌わせることで、会場全体でハーモニーを作り上げた。

「日本のオーディエンスは、イギリスと比べるとすごく静かだよね」

 日本人とイギリス人の、ライブにおける楽しみ方の違いについて話し始めたエド。「最初の頃は、(あまりにも静かで)『僕のこと本当に好きなのかな……?』と不安になったことも正直あったんだけど(笑)、でもそれって単に文化の違いというか。日本人はみんな、僕の音楽に真剣に耳を傾けてくれているということが分かってとても嬉しかったよ」

 まるで月明かりのような、青白い光の中で「Boat」を披露。アコギからエレキギターに持ち替え、バンドと共に「Punchline」を披露した後は、エドが他アーティストとコラボした楽曲(エミネムとの「River」、ファイアボーイ・DMLとの「Peru」、カリードとの「Beautiful People」、カミラ・カベロ&カーディ・Bとの「South of the Border」、ジャスティン・ビーバーとの「I Don't Care」)をメドレーで畳み掛ける。曲が切り替わるたびに、客席からは大きな歓声が上がっていた。

 疾走感あふれる「Overpass Graffiti」を経て「Celestial」は、お馴染み『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』への提供曲。液晶モニターに映し出されるポケモンのキャラクターたちに、オーディエンスの顔も緩む。ゲストのバイオリン奏者 Alicia Enstromを迎え、アイリッシュフォーク調の「Galway Girl」を披露したあと、「Thinking Out Loud」を歌い出した瞬間に大歓声が。エドのモータウン愛があふれるこの曲と、続くジャスティン・ビーバーの「Love Yourself」をオーディエンスも共に歌い、さらに一体感を高めた。

 ライブもいよいよ終盤に。「Sing」の後半、小さな声でスタートしたシンガロングのボリュームを、徐々に大きくしていき最終的に会場が揺れるほどの大合唱へと導くエド。アカペラで観客全員に歌わせながら、それをバックに艶かしいファルセットボイスを聴かせるという、5万人を相手にした一大セッションを繰り広げた。

 かと思えば「One」や「Photograph」、「Tenerife Sea」といった静謐なフォークバラードでは、水を打ったように静まり返るオーディエンス。騒ぐ時は大いに騒ぎ、聴き入る時はリスペクトを込めて真剣に聴き入る日本のオーディエンスって、ひょっとして世界最良なのでは……? などと考えていると、会場からどよめきにも似た歓声が起きる。なんと、ONE OK ROCKのTakaがサプライズゲストとして登場したのだ。

 プライベートでも交流があり、前日はTaka主催のパーティにエドが招かれた様子が報じられていたので「ひょっとしたら?」と思っていた人も多かっただろう。とはいえ、それが現実になると興奮せずにはいられない。ONE OK ROCKの人気曲「Wherever You Are」を2人でデュエットし、固い握手&ハグを交わす姿に大きな歓声が上がった。

 ヒートアップした会場をチルアウトさせるかのように、オールディーズ風味の「Perfect」を歌ったあと、ドラッグ中毒に苦しむ男をテーマにした「Bloodstream」をアグレッシブに演奏。さらに、切なくも清々しい「Afterglow」を歌って本編は終了。アンコールでは、同球場が本拠地の読売ジャイアンツのベースボールシャツを着て登場し(2019年の武道館公演ではサッカー日本代表のユニフォーム姿だった)、「You Need Me, I Don't Need You」で高速ラップを披露。さらに「Shape of You」と「Bad Habits」を畳み掛けてこの日のライブに幕を下ろした。

 アイリッシュフォークを基軸としつつ、ロックやヒップホップ、EDMなどさまざまな音楽スタイルを取り込み、唯一無二のオリジナリティを獲得したエド・シーラン。どれだけ会場が大きくなろうと決して変わらない、そんな楽曲の本質が、気さくな人柄と共に貫かれていることを改めて認識した一夜だった。

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