UNFAIR RULE、グッドメロディで歌う整理できない感情 『バズリズム』やフェスでも話題に
一方、TikTokでも使われることの多い彼女たちの楽曲「if」には〈単純な歌詞で、でもこれでいいのさ/君に伝わるかな〉というフレーズがある。単純な言葉を重ねることが一番伝わると思えば、単純な言葉を繰り返す。逆に「心の中の全てがあの人には理解できませんように」という想いを込めるなら、伝わらないように言葉を選ぶ。冒頭に、「山本の実体験をもとにしたリアルな歌詞が多くのリスナーの共感を呼ぶ」と書いたが、リアルな歌詞というのは「赤裸々につづる」という意味ではない。赤裸々に書いたり、整理することができない感情を「整理できない」と表現したりするのが山本の歌詞だ。
話を『ふたりでいてもひとり』に戻そう。「悲しくないよ、」というタイトルに読点がついていると同時に、歌詞の中にも1箇所だけ句読点が使われている箇所がある。〈もう、それでいい。〉だ。曲中の〈もう、それでいい。〉でぴしゃりと終止符を打っているが、タイトル「悲しくないよ、」では続きを思わせ、心残りを感じさせるという言葉遣い(正しくは“記号遣い”か)も秀逸。
会場限定盤シングルのみで聴くことのできる「日記」は〈ひとりで帰りを待ってる/外から聞こえてくるサイレン〉という歌詞から始まるミディアムチューン。この2節だけで、“帰りを待ってる”という状況と、心細さが一気に浮かび上がる。会場限定盤のみの収録ということで、続きの歌詞はぜひシングルを手に取って歌詞カードで読んでほしいのだけれど、感情(しかも整理のついていない、揺らぐ感情)をひたすら綴った「悲しくないよ、」とは対照的に、“ひとりで帰りを待ってる”主人公の目に写る情景がひたすら並ぶ。山本の歌詞の幅広さを改めて感じさせるシングルだ。
また1stミニアルバム『たからもの』、2ndアルバム『いつものこと』はいずれも1曲目は疾走感あふれるロックチューンで、ライブバンドとしての彼女たちらしさを全面に打ち出したものだったが、今作は3曲ともテンポは遅めで、盤石な演奏に乗せながらも歌詞やその世界観に重点を置いた作品に。こうしてUNFAIR RULEの新たな一面を感じさせる作品が完成した。2023年からシングルを配信リリースするようになり楽曲も増え、楽曲が届く距離も一気に広がったUNFAIR RULE。今年はさらに多くのリスナーの心を捉えていくことだろう。同時に、現時点でこれだけ振り幅の多いUNFAIR RULEが、この先どのような楽曲を届けてくれるのか楽しみでもある。
※1:https://twitter.com/kinoko_botiboti/status/1748010451206824160
◾️リリース情報
UNFAIR RULE
会場限定盤シングル『ふたりでいてもひとり』
2024年1月19日(金)より販売開始:1,200円(税込)
<収録曲>
M1. 悲しくないよ、
M2. 503
M3. 日記
配信シングル『ふたりでいてもひとり』
<収録曲>
M1. 悲しくないよ、
M2. 503
ダウンロード/ストリーミング:https://UNFAIRRULE.lnk.to/futarideitemohitori