UNFAIR RULE、グッドメロディで歌う整理できない感情 『バズリズム』やフェスでも話題に

UNFAIR RULEが歌う整理できない感情

 UNFAIR RULEがニューシングル『ふたりでいてもひとり』をリリースした。本シングルは会場限定盤シングルと配信シングルの2形態でリリースされており、配信では「悲しくないよ、」と「503」の2曲を、会場限定盤ではさらに「日記」を加えた計3曲を聴くことができる。シングルという形だが、すべての曲が1人の男性をテーマに制作された、コンセプトアルバムのような作品だ。

 UNFAIR RULEは山本珠羽(Gt/Vo)、片山葉(Ba)、杉田崇(Dr)からなる岡山発のスリーピースバンド。初めて全国流通盤をリリースしたのは2023年4月でありながら、『バズリズム02』(日本テレビ系)で毎年年始に発表されるネクストブレイクアーティストライキング「今年コレがバズるぞ!BEST10」では2023年にトップ30に選出、2024年はトップ10にランクインするなど、耳の早いリスナーや音楽関係者から早々に注目を集めていた。

 山本の実体験をもとにしたリアルな歌詞が多くのリスナーの共感を呼ぶのはもちろんのこと、メロディックパンクがそのルーツというだけあって、一聴して惹きつけるグッドメロディやポップなサウンドも魅力。例えば2023年4月リリースの2ndアルバム『いつものこと』1曲目の「非行少女」は山本の高校時代の学校の窮屈さと、音楽で生きていくと決めたことを歌った楽曲。ドラムのカウントとコードをかき鳴らしたシンプルなイントロから〈いつもサボっていた保健室〉というフレーズに入るが、フックになるメロディに乗せて歌われるからこそ、この一節だけでグッと楽曲に引き込まれる。また、たった1節で学校が舞台であること、そして教室にまっすぐに向かうことのできない苦しさを伝えられる歌詞の力にも驚かされる。この曲に限らず、彼女たちの楽曲はメロディセンスと巧みな言葉選びで、曲の頭に一気に引き込む力が絶大だ。ちなみに「非行少女」だが、楽曲の最後には2022年の“今の私”も登場し、あの頃を救ってくれるのが優しいし、うれしい。

UNFAIR RULE-『非行少女』Music Video

 同じく『いつものこと』に収録されており、1st EP収録曲でもある「次の日のこと」は、グッドメロディファンならギターのコードで進むだけのシンプルなイントロだけで、もう胸を掴まれることだろう。なお彼女たちはライブにも定評があり、『京都大作戦2022前夜祭「牛若ノ舞台 宵山2022」』に出演したり、『FM802 MINAMI WHEEL』では初出場の2022年、翌年の2023年と2年連続で入場規制がかかったりと、ライブの実力も折り紙つき。もちろんバンド自身もライブに自信を持っているからこそ、今回あえて会場限定盤を用意しているのだろう。

UNFAIR RULE-『次の日のこと』Music Video

 そんなUNFAIR RULEによる最新シングル『ふたりでいてもひとり』。「3曲とも山本の実体験をもとに、1人の男性をテーマに制作された」と制作の背景がはっきりと公表されているにも関わらず、全曲を聴いても、例えば「好きな人との出会いから別れを描いたのか」とか「忘れられない人への想いを綴ったのか」といった、その男性との明確な関係性が浮かび上がってこない。特に「悲しくないよ、」で言えば、〈わかりっこないよ人の事なんて〉や〈「今ここに居なくてもいいからそばにはいてね」が伝わるかな/君にすら間違った伝わり方をしちゃうだろうけど〉と、むしろ気持ちが正しく伝わらないこと、伝わるわけがないと思っていることが綴られる。その理由は山本のSNSにあった。

「このシングルであたしの心の中の全てがあの人には理解できませんように!」(※1)。

 この“きっとわかってもらえないだろうな”という、自分でもわけのわからない感情、でもめちゃくちゃに寂しいとか、めちゃくちゃにうれしいとか、好きすぎて涙が出てしまうとか、むしろわかってほしくないとか、そういう言葉に表すことのできない感情を音楽にして歌っているのがUNFAIR RULEなのだ。

UNFAIR RULE「悲しくないよ、」

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる