Sou、“好き”を詰め込み心の内側見せたワンマンライブ『inside』 東京公演をレポート

 2024年1月19日、東京のZepp Haneda(TOKYO)は、Souのワンマンライブ『Sou LIVE 2024 「inside」』で愛が咲く場所へと変貌した。昨年のデビュー10周年記念のワンマンライブ『Sou LIVE 2023「Orbit」』以来となった初日の東京公演は、Souが正真正銘の主役となり、彼の‟好き”が純粋に表れたライブだった。自身のオリジナル曲がありながらも、そこで彼が選んだ楽曲の大部分がボーカロイド楽曲だったことは、Souが真のボカロファンであることを示していたと言える。

 ステージに向けられた視線のなかで、上質な音響が会場を包み込む。スクリーンには白い光の流れがうごめく映像が映し出され、激しい青色のライティングと交差することで、近未来的な空間を創り出していた。青いペンライトを手に、期待に胸を膨らませながらSouの登場を待ちわびた客席。そして、Souがステージに現れた。

 「行くぞ、東京!」と投げた力強い一言と共に、片手を高く振り上げるSou。会場の空気が一変する。1曲目「人マニア」が始まると、Souの「みんな、跳ぼう?」の掛け声に呼応し、観客が一斉に跳び上がった。Souと観客が音楽のリズムでひとつに融合した瞬間だった。Souは続く「新興宗教」で、さらにエネルギーを放出。観客を一瞬にして熱狂の嵐に巻き込んでいく。

 純白のライティングが放たれた「ラグトレイン」。モニターに映るMVの少女のイラストが上下に動くサビで、Souもそれに呼応するように微かに身体を揺らし、曲の本質を高めていく。優しく撫でるように、そっと話しかけるようなウィスパーな歌声と、相対する力強い歌声の変化が心地好くもありながらパンチが効いている。曲が進むにつれ、大きくなるSouのエネルギーが会場に波及し、「ヴィラン」ではベースのディープな音色とSouのエッジボイスが完璧に調和し、曲にシアトリカルな要素を加えた。

 Souの高音ボーカルが曲の上を軽やかに舞い、彼が音楽のなかを散歩しているような生き生きとしたパフォーマンスが目の前で展開されたのは、リズムギターのカッティングが生み出すリズミカルなテクスチャーが特徴的な「命辛辛」。ステージ上で、「ミルキー」の持つ独特な雰囲気が会場を包んだ。この曲で、Souは身体を泳ぐようにしなやかに動きながら、シックに歌い上げる。歌声がレトロゲームを連想させるピコピコ音と融合した「ホワイトハッピー」、Souが片腕を見せながらもう一方の手でそれを叩いたあとは、真剣な表情と共に歌う姿が印象的だった「タイニーバニー」と、バリエーション豊かなセットリストだ。

 なかでもSouの歌声の生命力を実感したのは、物語性豊かなアニメーションがスクリーンに展開された「ゼロトーキング」だ。彼の声は、まるで作品の物語そのものを拡張するかのようにアニメーションの世界の一部になった。「アルバムを出したあとのライブのセットリストには、どうしてもアルバムの曲を優先して入れることが多いから、好きな曲はもちろん入れているけど、『ほかにもやりたい曲がいっぱいあるんだけどなあ』と思う時もある」――そう言い、「ボカロが好き」とあらためてその気持ちを伝えたSou。マイナーな曲からポピュラーな曲までを含む、ほかとは一線を画すセットリストは、個性そのものを照らしているようだった。Souがそれぞれの曲を深く理解し、感情を込めて歌うことで、彼の“歌ってみた動画”も含め、そこにはいつも愛が溢れている。だからこそ、もとの楽曲の物語を拡張する力があるのだ。

 「囮と致死毒」を経てイントロが鳴り響くと、観客の期待感が高まり、囁くような歌声が静かに響く「淡々、回想」へ。Souは、その歌声の特徴だけでなく、表現の繊細さも優れている。メロウなサウンドに合わせ、ステージをゆっくり歩きながら歌った「チョコレートミルク」のあとは、「おくすり飲んで寝よう」。バックスクリーンに映るピンクの世界観の映像に登場する女の子の指と同じ動きを取り入れ、子どものように楽しそうな表情で楽曲を完走するSouが立っていた。その後も「CH4NGE」、「KICK BACK」、「バグ」、「ノウナイディスコ」と、流れ星のごとくステージを彩っていく。

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