ちゃんみな×BMSG、Adoも……アーティストによるアイドル/グループプロデュースのメリットは?

 「命日」「B級」など、昨年も話題曲を次々と生み出したちゃんみなが、SKY-HIが代表を務め、BE:FIRST、MAZZELらを輩出してきたBMSGと組んでガールズグループをプロデュースすることが、2023年11月4日に開催された日本テレビ主催のイベント『バズリズム LIVE 2023』のなかで発表された。

 『No No Girls』と題された同オーディションプロジェクトは、BMSGが起業時から掲げるスローガン「才能を殺さないために。」に共鳴したちゃんみなが、新時代のアーティストとなり得る存在を募るというもの。ちゃんみなからは「ただ、あなたの声と人生を見せてください。」とメッセージが投げかけられた。オーディションの模様は、日本テレビにて2024年夏頃より放送予定だ。

INTERVIEW with SKY-HI / ちゃんみな - GIRLS GROUP AUDITION PROJECT 2024 "No No Girls"

 一方、メジャーデビュー曲「うっせぇわ」から昨年リリースの「唱」などヒット作が続くAdoも、“レトロホラー”をコンセプトとしたアイドルグループのプロデュースを行う。Adoからは「新たな『アイドル』の概念をお魅せするつもりです。皆様期待していてください。」と自信を覗かせるコメントも。メンバー募集はすでに締め切られており、プロジェクトは現在進行中とみられる。

 令和を代表するアーティストのちゃんみなとAdoがガールズグループをプロデュースすることで、シーンが新たなフェーズに入ることは間違いない。2010年頃、メジャーグループに加え、インディーズ/地下で活動する女性アイドルたちがシーンの裾野を広げて“アイドル戦国時代”と呼ばれる動きが起きた。それによるシーンの発展が、“メン地下”と呼ばれる男性地下アイドルシーンの隆盛を呼んだと言ってもいいだろう。

 “アイドル戦国時代”から約15年。現代の音楽界の頂点に立つアーティストたちがアイドル(もしくはアイドル的)なグループの制作に本格的に携わる時代がついにやってきた。

現在のシーンに強い影響を与えた小室哲哉、つんく♂らのアーティストプロデュース

 過去、アーティストがアイドルをプロデュースする例はいくつかあった。特に、現在のアイドルシーンに強い影響を与えているのが、小室哲哉とつんく♂の存在だろう。

 TM NETWORKなどで知られる小室は1980年代から岡田有希子らアイドル歌手にも楽曲提供を行っていたが、1990年代に入るとプロデューサーとしてアーティストを大ヒットに導いた。安室奈美恵、華原朋美、鈴木あみ(現:鈴木亜美)らの活躍で小室は一時代を築いたのだ。

 つんく♂はロックバンド、シャ乱Qのメンバーとしてメジャーデビュー。「シングルベッド」(1994年)、「ズルい女」(1995年)などでヒットチャートを賑わせた。そんなバンドの絶頂期真っ只中、バラエティ番組『ASAYAN』(テレビ東京系)の企画を通してアイドルをプロデュースすることが発表され、驚きを与えた。つんく♂はモーニング娘。で大きな成功を収め、以降もアイドルプロデューサーとして手腕を振るった。

大森靖子、女王蜂 アヴちゃん……昨今のプロデューサーアーティスト

 現在、アイドルやグループのプロデューサーとしても存在感を発揮しているアーティストはほかに誰がいるのか。

 まず思い浮かぶのは、大森靖子だろう。もともとモーニング娘。などのファンで知られ、現役アイドルやそのファンたちからも熱烈な支持を集める大森は、2018年に「孤独を孤立させない」のテーマのもと、ZOCを始動させた。社会や人にうまく馴染めなかったり、はみ出してしまったりしたメンバーのあり様を“個性”と捉え、大森独特の人間の内面を鋭く突くソングライティングを当てはめて、グループを一躍アイドルシーンの上位にまで浮上させた。加えて、大森がメンバーも兼任することでも注目を浴びた。2021年にはZOCに続いてMAPAも立ち上げるなど、今やアイドルシーンには欠かせないプロデューサーとなった。

大森靖子プロデュース新ユニット『椿宝座』の全貌

 女王蜂のアヴちゃんは2023年、スクール型オーディション番組『0年0組 -アヴちゃんの教室-』で結成されたオルタナティブ歌謡舞踊集団・龍宮城のプロデューサーを担当。同年発表の「RONDO」「Mr.FORTUNE」など各楽曲は、その世界観はもちろんのこと、メンバーの歌唱にも“アヴちゃんイズム”が行き届いているように思える。力強く捻るように歌われるボーカルスタイルは、アヴちゃんを想起させる部分が強い。また、アヴちゃんはグループのYouTubeチャンネルにも公開された「【アヴちゃん先生】第1話「裏島音楽学院の皆さん 地獄へようこそ」」(2023年1月19日配信)で、オーディション生に向けてかなり強烈な言い回しでメッセージを伝えていた。特に、「世のなかをぶっ壊したい、絶対気に入らねえ、許さないと思って組んだのが女王蜂というバンドです」との過去の挫折エピソードを交えた説明が印象的だった。龍宮城にも一人ひとりに何かしら情念を持たせて活動させていきたいように映った――というより、それがないと自分が作る曲は歌えないとアヴちゃんは考えていたのではないだろうか。

【アヴちゃん先生】第1話「裏島音楽学院の皆さん 地獄へようこそ」

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