SHISHAMOのラブソングに夢中になる若者続出 恋愛の幻想も現実も鋭く描写する“少女漫画”的センス

 今年11月にCDデビュー10周年を迎えたばかりのSHISHAMOの楽曲が、TikTokでリバイバルヒットしている。

SHISHAMO「僕に彼女ができたんだ」

 2023年11月15日公開のBillboard JAPANの「TikTok Weekly Top 20」では、10年前にリリースした「僕に彼女ができたんだ」が前週19位から3位へジャンプアップしてリバイバルヒットの兆しをみせると、12月13日公開の同チャートでは2位にランクインし、翌週も同位をキープ。「僕に彼女ができたんだ」は、高校1年生の春に軽音楽部でバンドを結成したSHISHAMOが、2013年の3月に高校を卒業した後、6月から9月にかけてレコーディングし、11月にリリースしたデビューアルバム『SHISHAMO』のオープニングを飾っていた曲だが、TikTokでは同アルバムのラストナンバーを飾る初期の名曲でライブでも定番になっているキラーチューン「恋する」と共に、歌詞に合わせたダンスの振り付けが拡散。「踊ってみた」動画が多数投稿されると同時に、「頭から離れない、中毒性の高いTikTokの人気曲」としても話題となり、Apple MusicではTOP200まで急上昇している現象が起こっている。

SHISHAMO「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」

 また、SHISHAMO史上最長となるタイトル25文字の楽曲「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」は、2023年4月19日公開の「TikTok Weekly Top 20」で1位を獲得するほどのバイラルヒットを記録している。ロッテのWEB CMソングにも起用された楽曲で、2021年にリリースしたアルバム『SHISHAMO 7』に収録。TikTok上ではダンス動画に加えて、恋人や推しの映像に歌詞をのせる動画が流行している。自分のままでいることの大切さを伝える最新曲「私のままで」、「朝、メイクするときに聴いてる」というコメントが多数寄せられている「魔法のように」など、その他の楽曲も少しずつTikTokアプリ内で注目されてきているようだ。

SHISHAMO「私のままで」
SHISHAMO「魔法のように」

 10年前に川崎の高校生が作った恋愛ソングが、SHISHAMOと一緒に年齢を重ねてきた20代~30代だけでなく、10年後の現代の若者からも支持されているのはなぜだろうか。

 スリーピースロックバンドとしての爽快で強靭なアンサンブル、キュートでチャーミングなボーカル、思わず口ずさみたくなるポップなメロディラインなど、複合的な要素が組み合わさっていることは間違いないが、特筆すべきはやはり、歌詞のストーリー性にあるだろう。

 ほぼ全てのソングライティングを手がける宮崎朝子(Gt/Vo)は、デビュー当時から“実体験として描いてる曲はほとんどない”と語っている。楽曲の中に出てくる“私”は宮崎ではなく、架空の主人公だ。その子がどういう性格で、どこに住んでおり、どんな思いを抱えているのか。物語を作るようにストーリーを膨らませていきながら歌詞を描いていく。かつて漫画家を目指していたこともある宮崎ならではの作り方であり、端的にいえば、宮崎は「少女漫画を描く」ように作詞をしている。さらに極端にいうと、1曲1曲の歌詞が漫画の原作と言っても過言ではないのだ。だからこそ、リスナーは少女漫画や恋愛ドラマを見るようにSHIHAMOの楽曲のストーリーに入り込み、時には自分を主人公に当てはめて聴くことができる。

関連記事