Spotify、2023年年間ランキング分析 アニメソング以外にも広がる海外ヒットの道筋
音楽ストリーミングサービス・Spotifyが2023年を振り返る各種ランキングを発表した。本稿では、この結果から今年1年の音楽シーンの傾向を分析する。
【国内で最も再生された楽曲】
1. アイドル / YOASOBI
2. 怪獣の花唄 / Vaundy
3. Subtitle / Official髭男dism
4. ダンスホール / Mrs. GREEN APPLE
5. W / X / Y / Tani Yuuki
6. Overdose / なとり
7. KICK BACK / 米津玄師
8. 美しい鰭 / スピッツ
9. ベテルギウス / 優里
10. シンデレラボーイ / Saucy Dog【海外で最も再生された国内アーティスト】
1. YOASOBI
2. 藤井 風
3. XG
4. 米津玄師
5. 久石譲
6. Ado
7. RADWIMPS
8. Eve
9. ONE OK ROCK
10. LiSA
11. Lamp
12. 澤野弘之
13. imase
14. BABYMETAL
15. Aimer
16. Nujabes
17. Vaundy
18. ヨルシカ
19. アトラスサウンドチーム
20. Official髭男dism【海外で最も再生された国内アーティストの楽曲】
1. 死ぬのがいいわ / 藤井 風
2. アイドル / YOASOBI
3. KICK BACK / 米津玄師
4. NIGHT DANCER / imase
5. 夜に駆ける / YOASOBI
6. SHOOTING STAR / XG
7. LEFT RIGHT / XG
8. すずめ / RADWIMPS feat. 十明
9. Tokyo Drift(FAST & FURIOUS) / Teriyaki Boyz
10. まつり / 藤井 風
11. 廻廻奇譚 / Eve
12. 紅蓮華 / LiSA
13. Overdose / なとり
14. 怪物 / YOASOBI
15. The Rumbling / SiM
16. 青のすみか / キタニタツヤ
17. 残響散歌 / Aimer
18. たぶん / YOASOBI
19. シルエット / KANA-BOON
20. unravel / TK from 凛として時雨
YOASOBI「アイドル」のヒットとアニメ主題歌の堅調ぶり
まず2023年最大のトピックは、何と言ってもYOASOBI「アイドル」のスマッシュヒットだ。テレビアニメ『【推しの子】』のオープニング主題歌である同曲は、今年4月に配信リリースされるや否や破竹の勢いで再生され、【国内で最も再生された楽曲】で1位に輝いた。さらに海外では、去年以前にリリースされた「夜に駆ける」(5位)や「怪物」(14位)も引き続き再生されており、【海外で最も再生された国内アーティスト】で3年連続の1位を獲得。アーティストとしての人気を国内外で不動のものとしつつあるなか、「アイドル」はそのダメ押しとなる一曲であった。
この「アイドル」の世界的なヒットに関連して、ランキングから読み取れるのはアニメソングの堅調ぶりである。【海外で最も再生された国内アーティスト】には、テレビアニメ『チェンソーマン』にオープニングテーマ「KICK BACK」を書き下ろした米津玄師のほか、Spotify年間ランキング常連のジブリ映画サウンドトラックを手掛ける久石譲、新海誠監督によるアニメ映画『君の名は。』や『すずめの戸締まり』の音楽を担当したRADWIMPSなどが名を連ねる。また、【海外で最も再生された国内アーティストの楽曲】にはテレビアニメや劇場版アニメ映画の主題歌が並ぶ。特に11位〜20位は軒並みアニメのオープニングテーマだ。
日本のアニメは海外でも評価が高い。スタジオジブリ作品はもちろん、『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』、『進撃の巨人』、『東京喰種』といった人気漫画を原作としたテレビアニメの主題歌は海外でも再生される傾向がある。ただし、【海外で最も再生された国内アーティストの楽曲】のトップ10に目を向けると、アニメ関連は10曲中「アイドル」「KICK BACK」「すずめ」の3曲と、そこまで大きく占めているわけではない。ランキング全体を見渡せばアニメソングは多いものの、トップ層に絞るとそこには容易には立ち入れない領域が存在する。つまり、トップ10とそれ以下のあいだには、分厚い“壁”がある。アニメタイアップは確かに多くの人々に届けることができるが、ランキングのトップ10にまで上り詰めるものは一握りということだ。
SNSからのヒットと、韓国で広がる“イエスジャパン現象”
ノンタイアップながらその“壁”を超え、【海外で最も再生された国内アーティストの楽曲】でトップ10に入ったものと言えば、同ランキングで2年連続1位を記録した藤井 風「死ぬのがいいわ」や、4位に位置するimase「NIGHT DANCER」が挙げられる。この2曲には共通点がある。それがTikTokを中心としたSNSでのバイラルヒットだ。
藤井 風「死ぬのがいいわ」は昨年、TikTokの投稿がきっかけとなって世界中のバイラルチャートを席巻し海外リスナーが急増。その熱が冷めないうちに今年、自身初となるアジアツアーを開催したことで、海外からの再生が持続したと考えられる。国別の【最も再生された国内アーティストの楽曲】ではブラジル、フランス、インド、インドネシア、アメリカでトップ5にランクイン。さらに今年は同曲に続き、「まつり」も上半期に同様のバイラルヒットが起きていた。一つの楽曲のヒットから同様の現象が連鎖的に起きつつある今の状況は、楽曲人気からアーティスト人気へと移行している段階だと言えるだろう。
藤井風、いよいよ世界に見つかる アルバム曲「死ぬのがいいわ」世界各国でバイラルヒットの理由
藤井風の楽曲「死ぬのがいいわ」が現在、世界中でバズを巻き起こしている。同曲は、2020年にリリースされた1stアルバム『H…
imaseもまた、SNSを介して海外で火がついたアーティストの一人だ。「NIGHT DANCER」は韓国の人気グループが立て続けにダンス動画を投稿したことで知名度が上昇。今年2月にはJ-POPとして初めて韓国を代表する音楽プラットフォーム「MelOn」の総合ランキング「TOP100」入りを達成した。その後、BTSのJUNG KOOKが自身のSNSでこの曲を好きだと公言したことが決め手となり、Spotify韓国「トップ50」で最高5位にまで駆け上がった。
imase、なぜ海外で最も勢いを伸ばす日本人アーティストになり得たのか 「NIGHT DANCER」にも表れる素朴と洒落のバランス
imaseの楽曲「NIGHT DANCER」がグローバルヒットを巻き起こしている。 imaseは現在22歳のアーティスト。2…
このimaseのように、韓国で火がつき、その後に世界へと波及していく流れは、ここ最近のヒットの特徴と言える。近年、韓国の若者のあいだで日本ブーム、いわゆる“イエスジャパン現象”が広がっている。そのムードが下地にあるため、韓国は今、海外におけるJ-POPのヒットの“震源地”となりやすいのだ。実際に国別のランキングを見ても、韓国は他国とは少々異なるチャートを形成している。
【韓国で最も再生された国内アーティスト楽曲】
1. アイドル / YOASOBI
2. NIGHT DANCER / imase
3. KICK BACK / 米津玄師
4. 愛を伝えたいだとか / あいみょん
5. ベテルギウス / 優里
アニメに関連した「アイドル」や「KICK BACK」に続き、あいみょんの「愛を伝えたいだとか」がランクインしているのが象徴的だ。2017年にリリースされた同曲は、昨年からSNSで人気が再燃。ダンスチャレンジが流行し、BTSのSUGAが自身のプレイリストに入れていることも話題となった。こうした韓国独自の審美眼でJ-POPを“掘り起こし”、その後に世界へと広がっていく流れは今後も増えていくだろう。