MCバトルシーンはさらなる規模拡大へ 2023年は新興イベントが台頭、オーバーグラウンド化による課題も
2023年のMCバトルシーンを振り返ると、これまでにない盛り上がりを見せたのではないだろうか。新型コロナウイルス対策による歓声の制限がなくなり、ヘッズたちは熱気に包まれたMCバトルを今か今かと待ちわびていた。
そうでなくとも、今年は例年にないほどの新しい施策がなされたように思える。『戦極MCBATTLE』、『凱旋MCbattle』をはじめとした国内MCバトルシーンを牽引するイベントはもちろん、多種多様なMCバトルイベントが各地で開催された。
しかし隆盛の陰で課題も見つかった1年だろう。本稿では、そんな2023年のMCバトルシーンを振り返っていく。
MCバトルの“オーバーグラウンド化”
MCバトルが大衆の目に留まるようになったのは、比較的最近のことである。『フリースタイルダンジョン』や 『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』をはじめとしたTV番組で人気に火がつき、フリースタイルラップが一時ブームとなった。
また、上記の番組はダイヤの原石の発掘に一役買っている。特に今年4月に開催された『第18回高校生RAP選手権』では、優勝者の$hamisだけでなく、楓やL.B.R.Lといったラッパーたちがそれぞれの才能を発揮し、今日のMCバトルイベントに引っ張りだことなっている。
「ダイヤの原石の発掘」という流れで触れておきたいのが、『FSLトライアウト』である。MCバトルのプロリーグ化を目指した新たな企画『フリースタイルリーグ(通称:FSL)』発のプロのMCバトラーを誕生させる新企画として発足したが、HIPHOPにあるまじき暴力行為や、すでに別ジャンルで知名度のある参加者の出演によるコンセプトとの乖離から、MCバトルファンからは批判の声が殺到した。
この騒動に対し多くの批評が集まったのは、良くも悪くもMCバトルが国内に広く浸透したからだろう。元来アンダーグラウンドな文化だったMCバトルが、メディア露出などをきっかけに“オーバーグラウンド化”、つまり世間に受け入れられた証拠である。またこれにより、ラッパー個人がそれぞれの持ち味を歌い上げるコンテンツだったものにスポーツ性が重視され、大衆はより健全なものを求めるようになったのも否めない。
HIPHOPというジャンルの音楽性や、地下格闘技のようなイメージからファンになったユーザーは、今日のMCバトルのあり方について懐疑的な意見を持っている印象だ。SNS上では「MCバトルはいつからエンタメになったんだ」、「MCバトルはヒップホップではない」といった議論が度々見受けられる。
規模を拡大する大型イベント、新興イベントの台頭も
それでも、MCバトルは規模を拡大し続けている。
『戦極MCBATTLE』は今年7月に大台となる第30回大会(30章)を開催し、『凱旋MCbattle』は“挑戦”を掲げ、MCバトル業界初となる東京ガーデンシアターでのイベントを開催、見事大団円を迎えた。
また、国内のMCバトルシーンを牽引する6団体による共同企画『BATTLE SUMMIT』主催のZeppツアーが11月より開催されている。MCバトル業界においては史上最大規模の試みであり、普段東京で開催されることの多い大型イベントが全国を回るということから、執筆現在開催された『SPOTLIGHT 2023』、『口喧嘩祭 SPECIAL』、『凱旋MC battle 冬ノ陣 2023』、『KING OF KINGS VS 真 ADRENALINE』はどれも大きな盛り上がりを見せている。