NEWS楽曲提供でも話題 カズミナナ、豊かな感情表現と五感を刺激するソングライティング
透明感のある声と、アコースティックギターをベースにしたシンプルで優しさや人間味あふれるサウンド。これまで自主制作した楽曲で、SNSを中心にジワジワと人気が上昇している名古屋在住のシンガーソングライター、カズミナナ。最近ではNEWSへの楽曲提供でも話題を呼んでいる注目の才能が、新曲「Snowflakes」を12月6日にリリースした。米ポートランドやロサンゼルスで暮らした経験のなかで培われたオルタナティブなフォークの要素を随所に散りばめながらも、街が華やかな景色に彩られるこの季節に置き去りにされた思い(孤独や葛藤)を優しく包み込んでくれるような、ドラマティックで温かみのある仕上がりに。そんな彼女にインタビューを行い、この楽曲が生まれた背景はもちろん、自身のバックグラウンドや今後のビジョンなども語ってもらった。(松永尚久)
映画音楽から受けた影響や海外生活の刺激
――まずはカズミさんの音楽履歴を教えてください。
カズミナナ(以下、カズミ):小学校4〜5年生の高学年あたりから作詞作曲を始めました。歌を歌い始めたのも同時期です。
――最初からご自身で音楽を作ったきっかけは?
カズミ:私は幼い頃から映画が大好きで、小学4年の頃に友達と遊び半分で映画を作ろうということになりまして。監督、脚本、主演、音楽を全て私が担当することになったんですけど、そこで作った主題歌が、周りの友達や家族など、みんなからの反応が良くて。そこから曲を作るのが好きだなと思うようになりました。
――とてもクリエイティブな環境のなかで、幼少期を過ごされていたのですね。
カズミ:生まれた頃からピアノはずっと近くにあって、映画もずっと観ていました。音楽はもちろん、芸術全般にずっと触れて育ってきました。
――映画ではなく、音楽の方でご自身のクリエイティビティを発揮したいと思うようになったきっかけはありますか?
カズミ:実は、最終的には大好きな映画に関わりたいという夢を持っているんですけど、周囲の評価もあって、自分で作った楽曲が好きになっていくにつれて、音楽を通じてそれに関わる人生にしたいと思うようになりました。
――そうなると、影響を受けた音楽も、映画のサウンドトラックだったりするのですか?
カズミ:そうですね。『ジュラシック・パーク』(1993年)のサントラや、『タイタニック』(1997年)の主題歌であるセリーヌ・ディオン「My Heart Will Go On」などを聴いて影響を受けましたね。
――その後、アメリカのポートランドの高校へ進学されたそうですね。ポートランドでの生活はいい刺激になったのでは?
カズミ:まず、英語は日本語よりもシンプルな表現なので、みんな気持ちをストレートに伝えてコミュニケーションを取っていました。だから、日本よりも感情を受け取る機会が多かったです。また、いろんな人種、国籍、宗教を持った人たちが集まった国なので、差別を目の当たりにすることもありましたが、さまざまな文化や価値観を学ぶことができて、視野が広がったと思います。
――ポートランドはここ最近、クリエイターが多く暮らしている場所としても有名ですよね。ミュージシャンもたくさんいたと思うのですが。
カズミ:私は洋楽がずっと好きで聴いていたのですが、ポートランドに行ってからローカルやインディーズのミュージシャンが積極的に活動していることを知って。しかも、どの方もレベルがすごく高い。ポップのフィールドで多くの人に親しまれるものを作るというより、自分のやりたいことを追求する彼らの姿勢に触れられたことは、今につながるいい経験や刺激になりました。ポートランドの町も芸術作品みたいな建物ばかりですし、とても暮らしやすかったですね。
――高校卒業後はロサンゼルスの専門学校へ通われたそうで。
カズミ:そうですね。ロサンゼルスはエンターテインメントの都市なので、ポートランド以上にいろんな人がいて、毎日忙しなく生活している印象がありました。
――専門学校卒業後は日本へ帰国されたようですが、海外での生活を経験して、日本でできることがあると感じたのですか?
カズミ:私がアメリカに行っていた頃に、ちょうど日本のアニメ作品が人気になり始めて、その流れでアメリカでも日本のエンターテインメントはすごいっていう風潮になってきました。ちょっと言い方が良くないかもしれないですが、それまで日本は他国に比べると閉鎖的で、あまり海外の人が興味を示す芸術的なコンテンツが少ないイメージだったんですけど、アニメの影響でそうではなくなってきたことがわかって。結果、私自身も渡米するまでは洋楽路線で行きたい/アメリカで売れたいって考えていたんですけど、実際に暮らして、現地で人気の日本の音楽を耳にすると、日本の音楽には世界でも受け入れられる良さがあることに気づいたんです。だから、今は世界でも受け入れられるような日本の音楽を作りたいという気持ちになりました。
――現在は地元・名古屋を拠点に活動をされているそうで。
カズミ:はい、小さい頃は東京に行きたいと思っていたんですけど、実家に簡易的なスタジオを作ることができて、そこで作曲やレコーディング、さらに配信もできる状態になるうちに、どこで活動しても関係ないなと思うようになってきました。だったら、落ち着ける場所でしばらく活動したいと思い、今は名古屋を拠点にしています。
――ご自宅にスタジオがあるということは、完全にDIYで楽曲制作を?
カズミ:これまで自分で音源を配信していた頃は、全部自宅で完成させていました。今もデモ制作は自宅で行っていますね。
「感情の波を表現したい」
――カズミさんの作品は、アコースティックギターをベースにした楽曲が多い印象ですね。今や、パソコンや音楽アプリで自由にいろんな楽器や音色を取り入れられる時代ですが、アコースティックサウンドにこだわる理由を教えてください。
カズミ:私が学生の頃から好きな洋楽のミュージシャンが、オルタナティブフォークのアーティストが好きな方々で。彼らは生の楽器の音色を大事にしながら歌っていて、その美しさに惹かれたというか。温かみのある音って、本当に人が演奏した楽器からしか出ないものだなって。それで、楽器を自分で演奏することを大切にするようになったんです。アコースティックギターに関しては、自分の弾き方、エフェクター、また演奏する場所で本当に音色が変わるので、それがすごく楽しくて。実験的にずっと弾いているうちに、自然と手放せないものになりました。
――サウンドメイキングに関しては、どんなこだわりがありますか?
カズミ:私は、音の響きや重なりがすごく大事だと思っていて。旋律やコードを耳にしただけでも、涙が出るような美しい音を作りたいと思っていて。つまり、言葉がなくても綺麗な色や悲しい歌が伝わるような、繊細な音やメロディを作ることを意識しています。
――確かにメロディやアレンジだけでも、曲が持っている表情が伝わってきました。言語の壁を超えて、いろんな人たちに思いが伝わるようなサウンドになっている気がします。
カズミ:映画音楽って、歌がないものが多いので。でも映像との相乗効果で、エモーショナルさが伝わってくるということを学んできてたので、無意識に自分も表現しているのかもしれませんね。
――歌詞も映像的ですよね。誰しもが心のなかに抱える葛藤や劣等感、不安といった感情を包み隠さず繊細に、そしてドラマティックに表現されているような気がしました。
カズミ:ポジティブに言えば、私は小さい頃から感受性が豊かで、常にいろんなことを考えるタイプ。でも、それを伝えるのがあまり得意ではないので、人間関係がうまくいかなくなると、心が塞ぎ込みがちになってしまうんです。そういう状態に陥った時に救われる音楽って、明るい励ましのメッセージにあふれたものよりも、とことん自分に寄り添って一緒に悲しんでくれるようなものでした。私もそういう気持ちにそっと寄り添ってあげられるような言葉選びをするように心がけています。
――カズミさんのその繊細な言葉選びには、実際に多くのリスナーからも反響が届いていますよね。
カズミ:楽曲よりも見た目とか、キラキラした雰囲気を重要視することも多いイメージですが、私に感想を伝えてくださる皆さんは、私が大切にしている/したいことをちゃんと理解してくださっていて。その反響がとても嬉しかったですし、活動の励みにもなっています。
――自主制作した楽曲「鮫」にはカズミさんはどんな思いを閉じ込めたのでしょう?
カズミ:鮫って、ホオジロザメとか大きなものを想像すると怖い印象だし、一匹狼というか、群れであまり泳がない強い存在っていうイメージなんですけど、身体は傷だらけで。きっと、鮫も心の中では傷ついてるかもしれないし、孤独を感じてるかもしれない。そういう目に見えない孤独や寂しさを歌った曲です。だから、メロディと言葉は、すごく、すごく、時間をかけて作りました。
――一つひとつのフレーズを大切に語りかけるように歌っているのも印象的でした。
カズミ:この楽曲に限らず、感情の波を表現したいと思っていますね。息づかいも、きちんと伝わるように。これからはさらに技術を身につけて、より感情表現を豊かにしたいと思っています。
――また「鮫」のMVでアコースティックギターを抱えてビーチで演奏する姿も印象的です。
カズミ:私の友人がカメラマンをやっていて、二人っきりで撮影しました。「鮫」というタイトルなので、海をバックに動画を撮りたくて、監督/編集は全部自分で行いました。
――エンディングで流れるオフショットも印象的でした。微笑ましい気分になりますね(笑)。
カズミ:ありがとうございます。エンディングで、メイキング映像が流れる映画が大好きなので、そういう感じをちょっと入れたくて(笑)。