追悼 チバユウスケ TMGE、The Birthday……鮮烈なロックを追求し続けた極上のフロントマン

 コロナ禍でバンドの活動があまりできなくなった時期は、10年ほど前から始めていたYUSUKE CHIBA -SNAKE ON THE BEACH-名義でのソロを作っていた。携帯電話もスマートフォンも頑なに持たなかった男がiPadを持ち、事務所のスタジオで打ち込みも使って曲を作っていると知って驚いたが、新しいガジェットを楽しんでいたのかもしれない。当初はインストだけだったが、昨年8月に出した『SINGS』は全曲歌入りのアルバムで、やっぱり曲を作ったら歌わずにいられないんだろうと思ったものだ。

YUSUKE CHIBA - SNAKE ON THE BEACH - 「ラブレター」MUSIC VIDEO

 趣味で撮り溜めていた写真をプリントして個展を開いたりもした。仲間たちと飲むのが口実なのではないかとも思うほどオープニングパーティは盛況だった。人物など撮らずに街角の光景や空や雲といったものが被写体の心象風景だが、いかにもチバらしいクールな作品だ。

 コロナ禍の最中もThe Birthdayは配信などせず、現場でのライブを続けていた。それまで使ったことのなかったNHKホールなどでのライブは、緊張感もあり見応えがあった。観客の収容人数は50%でマスク着用、声出し禁止といった縛りがあったが、「変わんねえよ」と言っていた。本心だったか強がりだったかはわからない。

 今年1月27日、下北沢Flowers LoftのDJイベント『Getting Better “New Year Party 2023”』にチバは顔を出し、久々にDJを務めていた。その時はさすがにCDを回していたが、TMGE時代にはもっぱらヴァイナルをスピンしていたものだ。その夜は自分のソロからの曲などをかけていたが、やがてニヤリとして「今日は特別に聴かせてやるよ」と言って流したのは、復活したThe Street Slidersのトリビュート盤『On The Street Again -Tribute & Origin-』(2023年3月)でThe Birthdayがカバーした「Let’s go down the street」だ。トリビュート盤の参加アーティストは発表されていたが、誰がどんな曲をやるかはまだ発表されていなかった。オーディエンスたちは、わからなかったに違いない。自分の出番が終わると、遊びに来ていたクハラや親しい仲間たちと楽屋で陽気に騒いでいた。あんなに楽しそうなチバを見たのは久しぶりだった。

 これまでやってきたインタビューのデータを見直していたら、原稿には使わなかった部分で、今はそういう気分じゃないがやってみたいことがあると言い、「そういう気分になったら、やるかもしれない。The Birthday20周年とか」と笑っているものがあった。言うまでもないがバンドは続けると思っていたわけだ。20周年をバンドのメンバーと共に迎えてほしかった。

Yusuke Chiba, you'll be remembered forever.
Rest in Peace.

The Birthday - なぜか今日は

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