The Acesは自分らしくいられるコミュニティ クイアとしての誇りをバンドで発信する意義

The Aces、クイアとしての誇り

クイアコミュニティの一部でいられることに感謝している

ーー『I’ve Loved You For So Long』は、自己反省と自己探求のアルバムだそうですね。自分を見つめ直そうと思ったのは、大人になったことを意識したから? それとも、パンデミックで自分を見つめる時間が増えたからですか?

クリスタル:その両方だと思います。まず、年を重ねたからこそ過去を振り返ることができた。そして、パンデミックによって、振り返る時間ができたんです。言ってみれば、年齢とパンデミックのコンビネーションで、このアルバムが生まれたんです。

ーーあなたたちは20代半ばですが、10代の頃の自分と大きく変わったと思いますか?

全員:イエス!

ーーどんなところが変化しました?

ケナ:10代は自分がどういう人間なのかを探っている時期で、自分に自信を持てていないし、自分が何を考えているのかもわかりませんでした。20代になってから世界を見始めた。レコード契約を結んで、ツアーでいろんなところに出かけるようになって視野が広がっていったんです。

ケイティ:ティーンの時は、すごく狭い世界に生きていました。20代になって視野が広くなったんです。自分の決断に自信が持てるようになり、自分が欲しいものもはっきりしてくる。広い視野、広い世界観を得られたことが10代の頃との大きい違いだと思います。

ーー新作にはバラエティ豊かな曲が並んでいますが、アルバムを通じて自分たちの出発点に立ち戻ったような初期衝動的なエナジーを感じました。今回、サウンド面で意識したことはありましたか?

クリスタル:よりバンドサウンドを意識したと思います。自分たちが影響を受けたいろんなスタイルを詰め込んで、ライブレコーディングのようなサウンドを作りたかったんです。パーフェクトなものを目指すより、自分たちが今感じることをそのまま音にしました。

ーー歌詞に関しては共通するテーマはありましたか?

クリスタル:自分が何者かを探っていく。昔を振り返りながら、自分を見つけていく、というのがアルバムのテーマでした。クイアとしての経験や、どこにも属せずに孤独を感じていたことを思い出しながら、そこからどんな風に成長してきたのかを探求する。そんななかで感じたことが歌詞に反映されていると思います。

ーー日本人には歌詞の内容が伝わりにくいところがありますが、「Girls Make Me Wanna Die」のミュージックビデオはストーリー仕立てになって、LGBTQの恋の切なさが伝わってきました。

クリスタル:言葉が違うと曲の内容は伝わりにくいですよね。でも、ミュージックビデオは映像で歌っていることを表現ができる。あの曲は歌詞の内容をそのまま映像にしたので、ビデオを通じて曲のことを理解してもらえたのはすごく嬉しいです。

The Aces - Girls Make Me Wanna Die (Official Music Video)

ーーLGBTQのスポークスマン的な扱われ方をすることも多いと思うのですが、そういう立場にいることにプレッシャーを感じていませんか?

クリスタル:それはないですね。というのも、このコミュニティの人たちはみんな親切で優しいし愛に包まれているので、その一部でいられることに感謝しています。今のポジションにいることで、みんなが自分たちのメッセージに耳を傾けてくれるんです。自分たちのようにクイアであることをオープンにして、クイアでいることを誇りに思い、自分自身のことを受け入れられている人は、世界中を見渡してもまだまだ少ないと思うので、自分たちがこういう立場に入られることをすごく感謝していて。自分たちが時間をかけてやってきたことが、ようやく実を結んだと思っています。

メンバーにとっての“The Aces”とは

ーー10代の時から一緒に音楽をやってきて、時にぶつかることもあっただろうし、色々悩んだこともあったと思いますが、10年以上も同じメンバーでバンドをやってこれた秘訣ってなんでしょうか。

クリスタル:バンドを続けたい! という熱意。そして、それを楽しむことが大事だと思います。そして、もうひとつ大事なのが、常にコミュニケーションをとることです。私たちは昔からお互いに対してオープンで、自分の気持ちを隠さずに話し合ってきました。自分たちの感情をちゃんと外に出して話し合い、解決策を見つけていく。たまには妥協もして、一緒に関係を築き上げていくのが鍵だと思います。

ーーThe Acesはバンドであり、ひとつのコミュニティなんですね(ここでインタビューに参加する予定ではなかったドラマーのアリサ・ラミレスが現れる)。メンバー全員が揃ったところで伺いたいのですが、皆さんにとってバンドはどういう存在ですか?

クリスタル:自分のアイデンティティの一部ですね。というのも、10歳でバンドを初めて今27歳なので、人生でバンドをやっている時期の方が長いんです。なので、バンドは自分自身でいれる場所。家みたいな存在なんです。

ケナ:私は音楽をやっていることより、バンドにいることをエンジョイしています。バンドが私に良い経験を与えてくれる。他のメンバーと一緒に世界を旅して、一緒に音楽を作り、一緒に成長する。一人ではできない体験をみんなとすることで、自分たちのコミュニティを作ることができるんです。

ケイティ:私もケナと同じ。たくさんの国や街に行って、いろんな人と繋がることができるのは、バンドをやっていないとできなかったことでした。誰もが経験できることではないですよね。それに私はギターを弾くことも好きだし、パフォーマンスも好きなので、それを続けさせてもらえるのがすごく嬉しいんです。

アリサ・ラミレス(アリサ):私はクリスタルと同じで、バンドは自分にとってファミリーだし、自分のアイデンティティの一部です。自分が持っているものを使ってできる一番良いことがバンドだと思うし、このメンバーでバンドをするのが運命だったと思います。それにこのバンドは、いろんな人にセーフスペースを作るツールでもある。私たちの音楽を通じて世界中の人々がコミュニケーションを取り、お互いをサポートできる場所を作り出せるんじゃないかと思っています。

■関連リンク
The Aces / ジ・エイシズ
アルバム『I’ve Loved You For So Long』配信中
配信リンク:https://theaces.ffm.to/ilyfsl

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