Chilli Beans.『Welcome to My Castle』の中心にある絶対的な自信 武道館ライブ控えるバンドの現在を聞く

「自分たちが伝えられるのはすごくシンプルなこと」(Moto)

ーー「My life is saikooo」は、どのように作りましたか?

Moto:作った時によくヒップホップを聴いていて、そういう言葉遊びを取り入れた歌詞やサウンドができたら面白いかなと思って。遊びながら作った曲だったんですけど、ちょっと皮肉めいた歌詞や音数の少ないサウンド感も含めて、楽しんでもらえたら嬉しいです。

ーー音数の話がありましたけど、他の曲も含めてアレンジは格段に洗練された感じがありますよね。聴きようによってはすごくシンプルに聴こえるし、でもよく聴き込むといろいろなことをやってる。曲によって違うと思いますが、たとえば「Welcome」はどういうことを考えてアレンジしたんですか?

Maika:マイケル・ジャクソンっぽさが欲しいとか、ちょっと不気味な「Be Our Guest」(ディスニー映画『美女と野獣』の劇中歌)みたいな雰囲気にしてみたいみたいな話をしていて。そういう映像のイメージをもとにして、それぞれが思ったことを入れて作っていきました。

ーーこれはベース冥利に尽きる感じですよね。

Maika:ベースから作りました!

ーー「wonderland」はどうですか? 僕すごくこの曲が好きです。

Lily:私も大好き。

Moto:これはドラムから作っていったんですけど、思ったことをそのまま呟いているみたいな曲にしたいなと思って、音数をとにかく少なくして温かみのある雰囲気にしました。

ーー音数を少なくする考え方、方向性みたいなものはアルバムを通してあったんですか?

Lily:落ち着いた感じのモードだったよね。前から聴いていたけど、そういう曲をさらに聴くようになって。「こういう曲がやっぱり自分たちは落ち着くな」みたいな気付きがあったんです。ギターの音は今までの曲よりも少なめにしている分、音作りを工夫しているので、アレンジにより注目できるようになっていると思います。メロディといい作用が起きるようなアレンジを考えたりとか、音の配置も含めて全体を見て曲を作ることを意識してました。

ーーMotoさんが「呟いているみたいな」とおっしゃっていましたけど、呟くにしても独り言じゃないというか、ちゃんと語りかけてくれるような親密さがあって。それは音数を削ったことによって、より歌やメロディが際立ったおかげだと思います。一つ一つ、みなさんがやっていることがきちんと聴こえてくる感じがありますね。

Moto:うん。自分たちが誰かに伝えられるのはすごくシンプルなことだと思うんです。いい意味で力を抜いて、そこで聴こえてきたものを大事にした結果、親密な感じに聴こえるものになったのかな。

Chilli Beans. - doll (Official Music Video)

ーー確かに力んでない感じはすごくありますよね。自分たちのお城にみんなを招待するけど、ピカピカに掃除はしませんよみたいな。自分達も、来る人もありのままでいい、別に着飾ったりする必要はないというメッセージが伝わってきます。

Lily:いろいろなアーティストのライブを観て、やっぱり自分たちは落ち着くというか、自分が自分らしくできる感覚を表現したいとすごく思ったんです。みんな好きな音楽はいっぱいあるから、観ると「こういうのやりたい」「かっこいい」とか思うけど、自分はその人じゃないから。自分が演奏するってなると、飾らずに、気張らないでできることをやりたいっていう思いがありました。

ーーいろいろな情報が入ってきたり、自分と誰かを比較しちゃったりすると揺れ動いたりするもので、実行するのは意外と難しいことですでも今回チリビは「ありのままでいいんだ」ということを堂々と、“城”というものをモチーフに大きなスケールでやっていると感じます。

Lily:お城って今までも変わってないし、これからも変わらないものの象徴っていう感じですね。

Chilli Beans. - Raise (Official Music Video)[TVアニメ「ONE PIECE」エンディングテーマ

ーーこれが私たちですよっていう。「Raise」が『ONE PIECE』のエンディングテーマになりましたけど、あの曲も『ONE PIECE』らしい雄大さはありながらも、すごくチリビらしい伝え方をしているなと思ったんですよね。

Moto:うん、感動しました。『ONE PIECE』のアニメの後ろで流れて、新しい「Raise」の形を見た気がして。

Lily:「Raise」はもともとモニ(Moto)が20歳の時に作っていたものを発展させていった曲なんです。20歳当時の「みんなで団結してこれから進もう」みたいな気持ちがそのまま入った曲だから、それが『ONE PIECE』の世界とマッチしていたのにすごく感動したよね。

Moto:そうそう。

Lily:自分たちもその時の気持ちになったし、それが繋がってすごく広い間口のある曲になって、いろんな人に伝わったのにびっくりというか。

ーーMotoさんの言いたいことを通訳してくれた(笑)。20歳の時に作った曲があって、それがたまたま『ONE PIECE』というお題にハマったという。

Lily:候補を2曲出して、『ONE PIECE』の制作スタッフの方々に選んでいただいたんですけど、「Raise」の方を気に入っていただけてすごく嬉しかった。

ーーチリビってそういうことが多いですよね。「My life is saikooo」もそうですけど、もともとあった曲が今やりたいことにガチっとハマるというか。

Moto:ずっと変わらないからなのかな。変われないというか。

Maika:だって「doll」は1stアルバム(2022年7月発売の『Chilli Beans.』)に何を入れるか決めている段階であったもんね。でもなんか「1stではないよね」っていう話になったんです。

Moto:世界観がすごく強かったから。

Maika:あと、次のアルバムのコンセプトは「キャッスル」でやりたいみたいな話を、1stアルバムができたすぐ後ぐらいには話していました。その頃からやりたいことが変わってないから、今回の作品も出来上がったんだと思います。ここに向かってバッチリ合わせてきたわけじゃなくて、もともとあったものが今っていうタイミングで出てきたっていう感じ。

ーーそれを可能にする状況や、もちろんみなさんがスキルや知識、経験をちゃんと蓄積してきたということでもありますよね。変わっていない部分はあるけど、変わるべき部分はしっかり変わってきた。そこのバランスが取れるようになってきたんじゃないかなって思います。そういう意味ではこの『Welcome to My Castle』は今こういうふうに生まれる運命で、それはずっと前から決まっていた、と。

Lily:本当にそうだと思います。

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