『龍が如く』シリーズ音楽の美学 『7外伝』ミュージックディレクターに聞いた制作の裏側

『龍が如く』音楽の美学

『龍が如く』が長く愛されている理由は間口の広さ

ーーそしてシリーズおなじみの「カラオケ楽曲」にも新曲がありますね。青木さん作曲の「さよならSilent Night」の制作についてお聞かせください。

青木:カラオケは堀井が作成する「楽曲コンセプトシート」をもとに制作を進めます。毎回何曲か新曲を書き下ろしていますが、どういう曲調で、こういう雰囲気にしたいっていうイメージが堀井の中で固まっていて、我々はその通りに制作していくんです。

ーーこの曲は、"詞先"ですか、"曲先"ですか?

青木:カラオケはほぼ全て"曲先"ですね。ただ、堀井からオーダーが来るときにすでに歌詞のイメージは資料に書いてあるんです。「さよならSilent Night」の場合はクリスマスソングというオーダーでしたが、ただ明るいだけの雰囲気にはしたくなくて、クリスマスをモチーフにした哀愁のあるロックのミドルナンバーがいい、というがっちりした指定がありました。その中で桐生が歌うならどんなメロディがいいかを模索したり、ゲームの尺に収めるからワンコーラスはこれぐらいの尺で……というような落とし込みをしていった感じです。ゲーム内の時期はクリスマスで、街には楽しげな雰囲気があるけれど、桐生は孤独を抱えている。楽しさと悲しさを両立させたいと思ったので、メジャーとマイナーを行ったり来たりするコード進行にしたところがこだわりポイントです。サントラのフル尺バージョンのみで聞ける部分ですが、ワンコーラス終わった後の間奏部分でカノン進行を用いたり、あとは全体的にベルの音色を入れていたり、クリスマスっぽくなる工夫は色々しています。

ーーそのほか、『7外伝』の楽曲の中で、思い入れのあるエピソードがあれば教えてください。

青木:今回は楽曲制作よりもディレクションの業務が多く、さまざまな人に楽曲制作を依頼しました。依頼して上がってきた中でも印象深い曲が2曲あり、一つは福田(有理)の作った「Reward」という曲です。これは桐生が号泣するシーンで流れる曲なのですが、これぞゲーム音楽の醍醐味というか、「映像と合わせて聴いた方がなぜか存在感が出る曲」なんです。曲単体で聴くと、淡々としていてピアノがポロンと流れる割とシンプルな曲なんですが、映像やセリフ・効果音と合わせて聴くと、なぜか曲の方に耳がいくという……。とてもいい劇伴になっていて、「これは私には出来ない!」と感じました。

 もう一曲は「儚き夢」です。ラスボス戦で流れる音楽が2曲あり、これは後半で流れるものです。花田(啓太朗)が作った曲なんですが、この曲を聴いたとき、私はもう、泣いてしまって。

ーー青木さんの中にグッと刺さる楽曲だったんですね。

青木:桐生がラスボスと戦う目的や敵側の切実な想い、そしてその想いが叶わないことの悲しさがとてもうまく表現できていると思いました。あと、音楽の制作期間が2カ月ほどしかなくかなりタイトなスケジュールだったこともあり、心身共に余裕がなくしんどい時期だったので余計涙が……(苦笑)。

 最初のデモは、この前に流れる前半のラスボス曲「Deadly Struggle」の延長線上にあるような、ギターリフをフィーチャーした激し目の曲だったのですが、「もっとガラッと変えて、切なくしてください」とリテイクを出したんです。リテイク後に上がってきたテイクでグッと来ました。「Reward」と「儚き夢」は自分の想いや状態も相まって私にとって印象深い曲となりましたが、もちろん、他の楽曲も全部良いです(笑)。皆さんにとっての印象深い曲はなにか、知りたいですね。

ーー『龍が如く』シリーズがユーザーから長らく愛されている理由はどんなところにあると思いますか。

青木:私はもともと『龍が如く』というゲームにプライベートでハマっていたタイプの人間ではないですし、バトルのアクションも苦手でした。ただ、そんな私でもチームに合流した際に初めてプレイしてみて、ストーリーにグッとくる部分があったり、「このミニゲームは結構面白い」と感じたりして、なんだかんだ最後まで楽しく遊べたんです。ゲーム内のあらゆる要素の全てを愛しているわけではないけれど、部分的に愛せるところがたくさん見つかる、そんな間口の広さを持ち合わせているところが、『龍が如く』が長く愛されている理由の一つだと思います。

ーー最後に、来年発売が控える『龍が如く8』について。『8』の舞台はハワイで、桐生一馬と『7』の主人公である春日一番がダブル主人公として登場すると明かされています。読者のみなさんに伝えられる新情報はありますか?

青木:サウンド面ついてお答えしますと、まずこの『7外伝』とは全く違うテイストの楽曲が揃っています。舞台がハワイだということもあり、明るくてトロピカルな雰囲気が味わえるはずです。『8』はゲーム本編が大ボリュームなんですが、曲や効果音もとんでもないことになっています。1つ1つ手を抜かず、きっちり作りましたので、バラエティ豊かなラインナップをお楽しみいただきたいと、率直に思っています。楽曲の毛色が過去作とは全然違うものになっていて、バトルBGMなどの雰囲気もガラッと変わります。

 あとカラオケの話をすると、新曲だけで5曲の書き下ろしが入るのに加えていろんな過去の曲も聴けますので、こちらもポイントです。楽しみに待っていてください!

■リリース情報
『龍が如く7外伝 名を消した男 オリジナルサウンドトラック』
配信はこちら:https://segajp.lnk.to/ryu7gaiden
製品版:3,500 円(税込)
発売元:株式会社ウェーブマスター

<仕様>
製品版:ミュージックCD3枚組(全64曲収録)
制作スタッフコメンタリーブックレット
音楽配信サービス:全64曲収録
※音楽配信サービスによるデジタル版にはブックレットは付属しません。

<収録曲>
・Disc 1
1. In The Name Of
2. Beginning
3. Obedience
4. In Full Blast
5. Reason for the Fight
6. 帷
7. Furioso
8. Hannya's Attack
9. 応龍の目覚め
10. Bring It On
11. Assault
12. 溟
13. 不夜城
14. Unrequited
15. 決死の覚悟
16. Rupture
17. Memento
18. Soul of the Ogre
19. Two Faced Castle
20. Psycho's Prelude
21. Psycho's Anthem

・Disc 2
1. Nouveau Riche
2. Welcome to Kijinkai
3. Cheater
4. Ambition - Hey Guys!
5. Treachery
6. Mad Knife
7. Un altro appassionato
8. Wounded Beast
9. 怨讐
10. Deadly Struggle
11. 儚き夢
12. From Demise to Abyss
13. Reward
14. I'm Fading Away
15. Remember - Arranged Version of Amazing Grace

・Disc 3
1. ミッション開始
2. Addiction
3. Her Melancholy
4. Cold Fire
5. Reception at Coliseum
6. Start of TOURNAMENT
7. Hellish Octagon
8. Don't Be Rushed
9. Sponsor Wanted
10. Start of ZIGOKU RUMBLE
11. Rumbling at the Fort
12. Power of Death
13. The Hundred
14. Start of ZIGOKU TEAM RUMBLE
15. While the Ogre is Away
16. Jaki
17. Hell's Gate
18. Heaven's Gate
19. Start of SPECIAL EVENT MATCH
20. Mr.Try and Hit Me
21. Gambling Match
22. Fame on the Battlefield
23. Good Taste
24. Go for the Fastest!
25. さよならSilent Night【Full Spec Edition】
26. シン・い・ち・ず・侍【Full Spec Edition】
27. Like A Butterfly【Red Eyes Edition】
28. ミッション完了

公式サイト:https://ryu-ga-gotoku.com/gaiden/

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