パン野実々美、ワンマンライブでファンに伝える“恩返し” メジャーデビューに向けて進み続ける
ライブは後半へ向かう。「パーティしたくなっちゃったな。着替えてきちゃお」と、一旦ステージから姿を消したパン野実々美。その間をバンドメンバーが他愛もない会話でつなぐ。ほどなくして、パン野実々美が衣装チェンジし、手にジュリ扇を持って現れた。そして、80年代後半に日本を席捲したド派手なユーロビートをサンプリングしたようなサウンドも印象的な、ダンサブルなアッパーチューン「チントンシャンでぱーりない!」へ。遊び心を詰めまくって1曲に仕上げたようなアグレッシブなバックサウンドの中で、ひときわ映えていたのがパン野実々美の歌い手としての表現力だ。リズムを重視し歌うAメロでは言葉のつなぎを滑らかにしてメロディを印象づけ、サビ前のバース〈アタシらしく GO!〉では、最後のトーンにクレッシェンドをかけ、次への展開を予感させる。絞り出すような低音でこぶしを回す一歩手前のようなアプローチも見せた。続いて、超高速のエレクトロスウィングという趣きの新曲「すごいInvincible。」では、リズム感と活舌の良さを発揮。カオティックなサウンド、高低差の激しいメロディを軽々と乗りこなすボーカルコントロールに驚く。序盤から中盤では、少し音程が微妙だったり、トーンがぶれたりという多少荒削りな部分も2~3カ所あったが、中盤以降はそれも一切なく安定したボーカルを披露。むしろ後半に向かって喉がより開いて、高音の伸びや音量も上がっていったように思う。
アンコールでは、2024年にビクターエンタテインメントよりメジャーデビューすることが発表された。観客から「おめでとう!」の声が飛ぶ。「ありがとう!」とまるで友達と会話をするように返すパン野実々美。その顔には光る汗と、満面の笑顔が溢れている。「皆さんのおかげ、ありがとね。だからみんなに拍手!」と、パン野実々美とバンドメンバーたちがステージから客席へ拍手を贈る。観客が感激しているのがムードでわかる。パン野実々美が続ける。
「これからみんなに恩返ししていくからね、覚悟しろ!(笑)」
盛り上がる会場。この後、「私が初めて作詞した曲」という言って披露されたバラード「夏雨」では、ひと言ひと言を丁寧に発音し、綺麗にロングトーンを響かせる。倍音を感じる瞬間も何度かあった。
最後のMCで、メジャーデビューを控えたこれからの活動に触れた後、パン野実々美はこう言った。
「伝えたいことが本当にたくさんあるよ……だから、来年も再来年も(パン野実々美)に……ついて来い!」
〈夢の跡をいつか超えて/はじまる/僕らの未来〉――「群像夏」の最初のフレーズだ。パン野実々美の次なる未来は、もう、すぐそこまで来ている。
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