FAKE TYPE.が拡張したエレクトロ・スウィングの真骨頂『FAKE SWING 2』 大躍進の1年を語る

FAKE TYPE.『FAKE SWING 2』インタビュー

 FAKE TYPE.からニューアルバム『FAKE SWING 2』が届けられた。

 エレクトロ・スウィングを牽引するFAKE TYPE.。YouTube登録者数44万人を突破し、今年7月には初のアメリカ公演を行うなど、活動の規模を広げ続けている。「ウタカタララバイ」(『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』収録)も、彼らの知名度を上げた大きな理由だろう。

 『FAKE SWING 2』には、DEMONDICE、青妃らめ、nqrse、缶缶、花譜が参加。エレクトロ・スウィングを軸にしながら、さらに音楽性を広げた意欲作に仕上がっている。

 トップハムハット狂(MC/ラッパー)、DYES IWASAKI(トラックメーカー)に本作の制作について語ってもらった。(森朋之)

FAKE TYPE. Major 2nd Album 「FAKE SWING 2」 Trailer

「前作『FAKE SWING』でやってなかったことをやろう」って(DYES IWASAKI)

——前作『FAKE SWING』から約1年。7月に初のアメリカ公演を成功させるなど、活動の幅が広がっています。

DYES IWASAKI:海外公演自体が初めてだったんですよ。今年の12月で結成10周年になるんですが、ようやく海外でライブができて。今までにない動きができた年になりましたね。

TOPHAMHAT-KYO:しかも、めっちゃ盛り上がってくれたんですよ。ライブの前はちょっと不安もあったんだけど、「楽しむために来ているんだな」ということがわかって、「だったらこっちもいつも通り楽しむだけだ!」という気持ちになれた。いい経験になりましたね。

DYES IWASAKI:YouTubeなどで英語のコメントをもらうことも多いんですけど、「こういう人たちが聴いてくれてるんだな」って実感できて。

TOPHAMHAT-KYO: オーディエンスの声がデカいし、こっちのたどたどしい英語のMCにもちゃんと反応してくれたんですよ。ちょっと言葉に詰まると、「ダイジョウブ!」って日本語で返してくれたり(笑)。

——(笑)観客のテンションによって、パフォーマンスも変化しそうですね。

TOPHAMHAT-KYO:乗せられちゃったところはあるかも。全体のペースも考えないといけないんだけど、みんなが楽しんでくれてる姿を見て、さらに声を張っちゃったり(笑)。ライブの後半はかなりキツかったけど、それよりも楽しさが勝ってました。

DYES IWASAKI:僕らが何も言わなくてもコールが始まったり、日本とは違うベクトルの盛り上がり方があって。また海外でやりたいなと思いましたね。

FAKE TYPE. – FAKE TYPE. IN USA

——アメリカ公演の様子は、アルバム『FAKE SWING 2』の初回限定盤の特典映像(「FAKE TYPE. Live in LA」)にも収録されています。楽曲の制作はいつ頃から始まったんですか?

DYES IWASAKI:僕は去年からずっとやってましたね。まずトラックを作って、それをTOPHAMHAT-KYOに渡して。

TOPHAMHAT-KYO:去年末から、ちょこちょこやってましたね。

DYES IWASAKI:「前作『FAKE SWING』でやってなかったことをやろう」ということが、まず最初にあって。いちばん大きな違いは客演ですね。『FAKE SWING』は「ふたりだけでやるとこうなる」ということを示したんですけど、今回は広がりを持たせたかったので。トラック自体もブラッシュアップされているし、「エレクトロ・スウィングと別の何かを掛け合わせる」ということもやりたいと思ってました。たとえば「Toon Bangers feat. DEMONDICE」では和楽器を取り入れたり、「ヨソモノ」ではケルト音楽の要素を混ぜて作ったり。

——前作を踏まえつつ、新しい方向性も提示している。

TOPHAMHAT-KYO:そうですね。参加してくれた客演5人のうち4人が女性なのも大きくて。華やかさや美しさも随所に感じられるんじゃないかなと。

DYES IWASAKI:キャッチーだよね。

TOPHAMHAT-KYO:うん。あと、前回はなかった物語調の曲もいくつかあって。「BARBER SHOP feat.青妃らめ」「Dryad」がそうですね。

TOPHAMHAT-KYO

——なるほど。1曲目「Toon Bangers feat.DEMONDICE」には、アメリカのフィーメール・ラッパー DEMONDICEさんが参加。和のテイストを反映したトラックと英語のラップの組み合わせ、すごく面白いです。

DYES IWASAKI:そこはめちゃくちゃ狙ってましたね。

TOPHAMHAT-KYO:トラックは和っぽいんだけど、サビを英語にして、しかもアメリカ人のラッパーにやってもらうっていう。ちょっとヒネくれてるのがいいかなって。

DYES IWASAKI:「これがジャパニーズ・エレクトロ・スウィングだ」ということを示したかったんですよね。あと「DEMONDICEさんを呼びたい」というのはずっと前から話していて。

——DEMONDICEさんも以前からFAKE TYPE.をフェイバリットに挙げていました。

TOPHAMHAT-KYO:そうなんですよ。結成して数年くらい経った頃に、アメリカからライブを観に来てくれて。

DYES IWASAKI:インストアライブのツアーに遊びに来てくれたこともあって。僕らの曲のMVをファンアート的に作ってくれて、それが「Princess♂」(TOPHAMHAT-KYO)につながったんですよ。なので、FAKE TYPE.の曲にも呼びたかった。今回いちばんいい形に落とし込めたんじゃないかなと。

TOPHAMHAT-KYO:知る人ぞ知るFAKE TYPE.とDEMONDICEの歴史があるからこそ、中途半端なコラボになるのは嫌だったんですよ。しっかりしたコンセプトでやりたかったので、いい形でハマったのはよかったですね。

——歌詞のテーマも当然、DEMONDICEをイメージしているんですか?

TOPHAMHAT-KYO:そうですね。サビを英語にしていることもそうだし、「Toon」はアニメーションのことで、「Bangers」は“盛り上げる”みたいな意味があって。FAKE TYPE.もDEMONDICEもアニメのMVと一緒に楽曲を発表してきたし、このタイトルがいちばん合うだろうなと。

——海外のリスナーにも強く訴求できる曲だと思います。2曲目の「FAKE SOUL」はセルフボースティング的な楽曲。

TOPHAMHAT-KYO:まさに。最初のヴァースは自分自身のことを言ってて、次のヴァースは「DYESはこんなふうに考えているんだろうな」ということを勝手にリリックにしたんですよ。

DYES IWASAKI:自分が言いたいことを書いてくれました(笑)。前も同じようなことをやったことがあるんですよ、実は。「Stay Tuned」もそうだし。

TOPHAMHAT-KYO:たしかに!「FAKE SOUL」ほど露骨にDYESのことを歌詞にしたのは初めてですけどね。

——〈俺らは俺らの事が好き〉〈まずは自分に好かれてみな〉というメッセージを込めたワードも印象的でした。

TOPHAMHAT-KYO:自分を好きじゃないと人を好きになれないと思うし、自分が楽しめてなかったら、人を楽しませることもたぶんできないだろうなと。FAKE TYPE.で自分たちが好きなことをやれているからこそ伝えられるメッセージな気がしますね。

——エレクトロ・スウィングを貫いてますからね。

TOPHAMHAT-KYO:上手くいかない時期もあったんですけど(笑)。

DYES IWASAKI:僕ら、下積みが長いので(笑)。FAKE TYPE.を始めるまでは、バイトをしながら音楽活動をやっていて。

——なかなか結果が出ない時期、「売れるために音楽性を変えない?」というような話は出なかったんですか?

TOPHAMHAT-KYO:なかったですね(笑)。エレクトロ・スウィングをやってる人がいなかったので、「俺らがやればいちばんになれるな」と思って始めた……だよね?

DYES IWASAKI:そうです(笑)。

TOPHAMHAT-KYO:なかなか聴いてもらえなかったけど、時の流れとともに受け入れられて。ボカロでもエレクトロ・スウィングの曲が増えてるし、市民権を得た感じがありますね。

DYES IWASAKI:10年かかりました。

DYES IWASAKI

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