小山田壮平の歌声が持つ瑞々しさ andymoriとソロ名義曲織り交ぜた恒例弾き語りツアー

 MCでは上海でライブをしたという話の流れで、イベンターから「中国でスイカは安いので盗まなくていい」と釘を刺されたと話した。そのイベンターの発言はandymoriの「グロリアス軽トラ」の〈スイカを盗みにいこうぜ〉という歌詞にちなんでいるわけだが、小山田は「別に高いから盗んだわけじゃない。ましてや本当に盗んだわけでもない(笑)」と笑いながら訂正。「そこでは〈上海の空の下〉と歌ってきたけれど、今日は〈恵比寿の空の下〉と歌います」と言って、「グロリアス軽トラ」を演奏。〈スイカを盗みにいこう〉と誘った後、力強く歌われた〈恵比寿の空の下〉というフレーズに大きな拍手と歓声が上がった。

 ブルースハープがエモーショナルに響いた「Life Is Party」で空に思いを馳せ、「夕暮れのハイ」で花の匂いが香る茜色の空を映し出したと思ったら、今度は打って変わって小山田が愛する画家、ゴッホゆかりの地である「ローヌの岸辺」の景色を描いた。曲が変わるごとに、その楽曲に込められた情景がみるみるうちに浮かぶ。やはりソングライターとしての力は圧倒的だ。

 終盤に、「今日はありがとうございました。こう見えてライブはそんなに多いほうじゃないと思ってるんですが、こう見えても頑張ってまして(笑)、アルバムが1月に出ます。心をこめて作ったアルバムなので、是非聴いてほしいです」と話した小山田。自分で口にした「こう見えても頑張ってまして」という言葉に突っ込みを入れた後、ギターをカッティングし、「アルティッチョの夜」を披露。猛々しくつんのめった声で、「ロックンロール!」と叫んだ。

 アンコールを求める拍手の中、再登場。「東京でライブをする時、必ずビールの6本セットを差し入れてくれる“ケンケン”っていうおっちゃんがいるんですけど、今そのビールを飲んできました(笑)」と告げると、客席から「おいしかった?」という問いかけが聞こえた。それを受け「おいしかったよ。ケンケンやんか(笑)?」と、差し入れをしてくれた張本人との会話が始まった。

 その後披露された「16」は途中でミスをしてしまい一旦演奏をストップ。「これはやり直し(笑)。みんなに歌ってもらおうかな」と提案し、客席から拍手が上がった。2回目の「16」では大合唱が起こり、呟くような声で「ありがとう」と感謝を伝え、オーディエンスはまた拍手で応えた。

 最後は「投げKISSをあげるよ」を歌い、「ありがとうございました! また会いましょう!」と充実した表情で挨拶をし、去っていった。来年1月17日には、この日のライブでも他の楽曲と分け隔てなく披露された新曲を収めた2ndアルバム『時をかけるメロディー』がリリースされる予定だ。

シンガーソングライター やまもとはるとの音楽に滲み出る揺れる心 小山田壮平との出会いを経て生まれた「からっぽのプール」

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