原因は自分にある。念願の初アリーナ公演 “観測者”との相互関係が見えた特別な夜

 そしていよいよテーマソングの「Museum:0」。壮大なムービングステージに乗って再登場した7人は滾る魂を目に宿して力強く歌い上げる。声出しが可能なライブがようやく安定しつつある今、〈眺め続けるのは 退屈だったろう〉という歌詞からは喜びだけでなく今までの歯がゆい思いも計り知れず滲む。後半戦の勢いをつけるような疾走感のある「余白のための瘡蓋狂想曲」では、桜木が〈笑わないで印象派〉というパートの「派」に合わせて「ハハハ…」と嘲笑のような憑依的な笑い声を入れたのがライブならではの印象的なアレンジだった。続いて「Lion」、「0to1の幻想」でライブ終盤へと熱を増していく。

  幻想のような一夜の終わりが着々と近づく中披露されたのは「藍色閃光」。ミラーボールのもと、曲中に何度も出てくる“君”という存在を観客一人ひとりに自覚させるように心を込めて歌う姿がただただ美しい一曲だった。長野が煌めく笑顔を浮かべながら背を向けメインステージへと花道を歩く姿は、この時間の永続を願うには十分の儚さを放つ。本編最後は「原因は君にもある。」。中盤の〈ららら…〉と続くパートでは観測者の歌声を求め、「皆さんじゃなくて、あなた一人ひとりの番です」と最後まで大衆の中の個へ確実なメッセージを送る言葉が印象的だった。観測者のハーモニーに武藤は目を潤ませ、こらえるように天を仰いで踊る姿も深く記憶に残る「原因は自分にある。」で始まり「原因は君にもある。」で終わる秀逸なセットリストで見事に因果律を逆転させた彼らは、最後まで観測者との相互関係を大切に抱きしめながらステージを降りた。

 グッズTシャツをアレンジした衣装で登場したアンコールは「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」で始まり、次の「ギミギミラブ」では再びトロッコに乗り観測者の笑顔を見に行く。その後のメンバー一人ひとりからの挨拶では杢代が声を震わせ、涙ながらに漏らした「本当に生きててよかったです」の言葉が観測者の心に届いたはずだ。最後はアリーナの景色を7人で想像しながら歌ってきたという「THE EMPATHY」で晴れやかに幕を閉じた。

 見る者が怖気づくような攻撃的なナンバーからキラキラと愛嬌を振りまくアイドルソングまで幅広い楽曲を堪能できた今回のライブ。揺るがない哲学的なコンセプトからも、失われぬ“げんじぶ”らしさを感じることができた時間だった。また、来春のホールツアー『架空のアウトライン』の開催も発表された。本編最後に長野が放った「バイバイじゃなくて、またね」という言葉を信じ、今後も彼らの作り上げる唯一無二の世界を楽しみにしたい。

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