カメレオン・ライム・ウーピーパイ、『SXSW Sydney』で掴み取った観客の心 異なるカラーの2公演をレポート

 『SXSW』といえば、アメリカ・オースティンで毎年春に開催される、音楽、映画、テックなどの祭典。音楽においては世界各国のレーベルやマネージメントオフィス、イベンターが集う世界最大の「見本市」としても知られ、新人アーティストの登竜門ともなっている。そんな『SXSW』が今年、アジア太平洋地域で初めて開催された。10月15日から22日(現地時間)にかけての1週間、オーストラリアはシドニーで繰り広げられた『SXSW Sydney』には、日本をはじめアジア各国からも多数のアーティストが参戦。そのなかの一組として2本のライブを行ったのがカメレオン・ライム・ウーピーパイ(CLWP)だ。CLWPは今年3月の本国での『SXSW』にも出演、そのパフォーマンスは海外メディアでも称賛を浴びていた。今回は国境を越えて期待が高まるなかでの登場となったわけだが、さすがというべきか、あらゆるボーダーを飛び越えるポップでアッパーなパフォーマンスで、シドニーのオーディエンスの心をがっちり掴んでみせたのだった。

 まずCLWPが立ったのは10月19日、Phoenix Central Parkでのステージ。ステージといっても、いわゆるコンサート的なものではなく、だだっ広いオープンスペースの床に直接楽器が置かれ、その周りをオーディエンスが取り囲むというスタイル(会場のPhoenix Central Parkは普段パフォーマンスアートなどが行われるスペースのようだ)。そしてCLWPのライブといえばVJによる曲に合わせた映像演出だが、この日はその映像もスクリーンではなく床に直接投影されていて、それもこのアーティストの個性を強調するのにとても効果的だった。

 ライブは「和」のテイストを用いてリミックスした「Mad Doctor(Whoopies Wa Remix)」からスタートした。さらに「LaLaLa」や「Where Is The Storm」とCLWPのライブに欠かせない楽曲を立て続けに披露。Chi-(Vo)は仲間であるWhoopies1号・2号とともに冒頭から堂々とした佇まいでオーディエンスをぐいぐいと引き込んでいく。「Where Is The Storm」ではこちらも彼らのライブに欠かせないコール&レスポンスを成功させる。最初は様子見的な空気もあったオーディエンスだが、Chi-に合わせて声を出しているうちにすっかり熱狂。この序盤の流れで会場をがっちりと掌握してみせた。

 「日本から来ました、カメレオン・ライム・ウーピーパイです! オーストラリアで初めてパフォーマンスできることをすごく楽しみにしていました!」。体を大きく動かしながらパフォーマンスした「Mole Dancer」を終え、Chi-が英語で挨拶。熱い歓声が起こり、そこから「scrap」や「Dear Idiot」とドープな楽曲を連発し、会場のムードを一変させる。10月11日にリリースされたばかりの最新曲「Chair」では床にさまざまな椅子の映像が次々と映し出されるのがシュールだ。

 続く「Unplastic Girl」では、この日のためにオーストラリアの先住民であるアボリジナルの人々の楽器・ディジュリドゥの音色を使ったスペシャルアレンジを披露。「Mad Doctor」のリミックスもそうだが、自由自在にカルチャーの壁を越えていってしまう自由度もCLWPらしい。この会場ならではの演出を生かした、床に映し出される人型に合わせて3人が寝そべるというパフォーマンスもおもしろかった。普通に考えればなかなかイレギュラーなライブで、こういうスタイルに彼らが慣れているわけはないと思うのだが、それでも全力で会場を自分のものにしていってしまう、その貪欲さと前向きさもカメレオン・ライム・ウーピーパイである。

 そして「アー・ユー・レディ?」とオーディエンスを煽ってライブは終盤へ向かう。「Stand Out Chameleon」のアッパーなビートで会場をダンスフロアに変貌させると、キラーチューン「Crush Style」が炸裂。Chi-が体全体を使って声を張り上げ、オーディエンスのテンションも最高潮。そのままラストの「Love You!!!!!!」に突入していく。Whoopiesのふたりとの決めポーズも披露し、またしてもコール&レスポンスで盛り上げる。記念すべき初のオーストラリアでのライブ、最後までアゲきって3人は去っていった。

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