連載「lit!」第73回:SEVENTEEN、Billlie、イム・ヨンウン……秋にぴったりのK-POP楽曲
秋はもう終わってしまったのでしょうか? 気象庁のホームページを見ると、秋は「9月から11月まで」となっています。とはいえ、すでに肌寒い日が多いですよね。柔らかな日の光が差し込む部屋でゆっくりしたり、涼しい風がそよそよと吹く街を歩いたりと、秋らしさを楽しむ時期はもうちょっと長くてもいいと個人的には思っています。そんなわけで、今回は残り少なくなった感のある秋にしっくりくるK-POPアイドルの新曲をお届けします。
SEVENTEEN 「God of Music」
彼らにとって11作目となるミニアルバム『SEVENTEENTH HEAVEN』ですが、先行注文数がK-POPアルバム史上トップとなる約520万枚になったとか。今年6月に「Stray Kidsのサードフルアルバム『★★★★★ (5-STAR)』の先行注文数が513万枚を突破し、歴代で最高に」と報道されたばかりなのに、もう追い抜いてしまうとはびっくりです。K-POPを聴き始めてから4半世紀以上が経ちましたが、予想できないことや驚くことはまだまだ続きます。リードトラックとなるこの曲は、周りからのプレッシャーに負けず、持ち味のひとつである元気はつらつとしたイメージをアピール。〈쿵 치 팍 치 쿵 쿵 치 팍 치 Yeah!(クン チ パッ チ クン クン チ パッ チ イェ!)〉という日本語で言うところの「ドンドコドン」のような言葉遊びを挿入した歌詞は、音楽をやる喜びを素直に綴ったもので、聴いている方も思わず満面の笑顔に。彼らの良さが十分に生かされたサウンドメイクです。
Billlie 「BYOB (bring your own best friend)」
先日出したばかりのシングル『side-B : memoirs of echo unseen』からの1曲。本作のリードトラック「DANG! (hocus pocus)」も悪くないのですが、マニアックでメロウな音作りが得意なBilllieの本領が発揮されたのはこちらの曲ではないでしょうか。弦楽器による幻想的な調べに導かれるようにエレポップ風のサウンドがスタート。〈secret invitation 단 한 가지 규칙 can't you see that it's our time?(秘密の招待状/ただ一つのルール/それが私たちの時間だって分かるでしょう?)〉と、ミステリアスなムードを漂わせながら歌います。タイトルの「BYOB」は、パーティーやイベントの招待状に記される場合が多い「酒類はご持参ください(Bring Your Own Bottle)」という意味の略語。しかし、この曲ではbring your own “best friend”として「一番のお友達をご持参ください」の略語にしているところに、Billlieらしさを感じました。現在、メンバーのMOON SUA(ムン・スア)とSUHYEON(スヒョン)が健康上の理由で参加していないため、5人での活動になっているものの、サウンドとパフォーマンスのクオリティは下がっていないので、とりあえずひと安心。でも早く完全体に戻ってほしいと切に願っております。
イム・ヨンウン「Do or Die」
ここ数年のトロット(日本の演歌に相当するジャンル)の盛り上がりに貢献しているのは、間違いなくこの男性です。同ジャンル専門のオーディション番組で知名度がアップした頃はトロットの香りがする歌唱がメインでしたが、最近は表現の幅が広がってきており、トロット以外の音に迷わずチャレンジ。軽快なギターロック「London Boy」の大ヒットで自信がついたのでしょう、なんと今度はEDMに接近。たくさんのダンサーとともにキレのいいダンスを披露する彼。そこにトロット界のプリンスの面影はありません。その意外性がウケて主要ヒットチャートで上位を記録。いわゆるギャップの魅力ってやつですね。