Sadie、アンティック‐珈琲店-、SuG……V系バンドの再結成がシーンに与える刺激
ヴィジュアル系バンドの再結成といえば、今年は他にも話題をさらったバンドがいる。アンティック‐珈琲店-とSuGだ。まず、アンカフェの愛称で親しまれているアンティック‐珈琲店-。彼らはそれまで先人たちが築いてきたヴィジュアル系の耽美な雰囲気を良い意味で崩した立役者だと思っている。ダークな色合いが多かった周りのバンドとは違いポップでカラフルな見た目に加え、万人受けしやすいポップな楽曲でシーンを盛り上げた。その点では、ヴィジュアル系とJ-POPの垣根を越えた楽曲を多く提示したSuGも同じではないだろうか。SuGにいたっては、ロックやポップに加えてオルタナティブロックやエレクトロニックといった要素を逸早く楽曲に取り込んでいた印象がある。当時、自分たちの音楽性を“SuG流パンク”と表現していたが、今振り返ってみると、かなり緻密な計算をして楽曲からMV、そしてファッションにいたるまで、SuGを取り巻く世界観を作り上げていたように思える。そうした努力の末、音楽は自由でいいんだと聴き手に感じさせてくれた。ただ、メンバーからすれば、このシーンでそれ以上の自由や楽しさを感じることができなかったからこそ、ヴィジュアル系バンドとしての活動に幕を閉じたのかもしれない。
三者とも、ヴィジュアル系が嫌になったから離れたわけではないと思っている。むしろ、90年代のヴィジュアル系に対して多大なるリスペクトを持っていただけに、誇りを持ちながら2000年代のシーンを引っ張っていった。だが、活動していくにつれ、当初抱いていたイメージから離れてしまったから、歩みを一度止めたのかもしれない。時は流れ、各々が大人になり、自分たちが愛してきたヴィジュアル系の現状を目の当たりにした今、自分たちだったらこんなかっこいいことができるという新しい可能性の下、復活を誓ったのだろう。2000年初期に一世を風靡したバンドが懐古趣味だけで再結成したのではなく、ヴィジュアル系ひいては音楽シーンに刺激を与えるために、まずは自らが行動する。それはまるで、バンドを組んだときのような初期衝動に近いのではないだろうか。現状を冷めた目で見るのではなく、自らが先頭に立って開拓していく。その姿は多くの音楽ファンに勇気をくれる。
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