ゆず、Kアリーナ横浜こけら落とし公演2日間を総括 アコギと歌、ダイナミックな演出…“HIBIKI”掲げた究極のエンターテインメント

 ゆずが9月29日、30日、10月1日、神奈川県・Kアリーナ横浜のこけら落とし公演『YUZU SPECIAL LIVE 2023 HIBIKI in K-Arena Yokohama』を開催した。本稿では、初日公演「DAY1 BLUE×FUTARI」、2日目の公演「DAY2 RED×ALL STARS」をレポートする。

「DAY1 BLUE×FUTARI」

 世界最大級の音楽特化型アリーナ会場、Kアリーナ横浜。こけら落とし公演を担当するのは、横浜出身のゆずだ。初日公演「DAY1 BLUE×FUTARI」は、北川悠仁、岩沢厚治による弾き語り。“アコギと歌”というベーシックなスタイルを軸にしながら、約2万人のオーディエンスと互いの声を響かせ合う圧巻のステージを繰り広げた。

 ゆずのライブ前には欠かせないラジオ体操の後、会場が暗転し、スクリーンには新曲「ビューティフル」のビジュアルでも使用されていたユリの花の3DCG映像が映し出される。大きな花が徐々に開いていく映像、新曲「ビューティフル」のトラックとともにゆずがセンターステージに登場。アコギの生音、2人の生声で、路上ライブ時代から演奏している「シュビドゥバー」の一節を響かせ、オーディエンスの大合唱が生まれる。この日のライブのコンセプトを明確に示すオープニングの後は、メインステージに戻り、コロナ禍に入ってすぐに制作され、有観客ライブでは初披露となった「そのときには」。さらに「このコンサートをやるときに、どんなことをやろうかといっぱい考えました。答えはシンプルだった。俺たちの音楽を、思いを、歌を、そして、君たち一人ひとりの思いを、歌声を、この会場に響かせること。タイトルは“HIBIKI”です。今日は俺たちとみんなで、声を出して、響き合わせて、一緒にこの会場のこけらを落とそう!」(北川)という言葉の後、「栄光の架橋」へ。スクリーンに歌詞を映し出し、1番は観客がメインボーカル。2番からはゆずも加わり、2万人の声とともに名曲に新たな命を吹き込んだ。

 “BLUE×FUTARI”というタイトルに合わせ、多くの観客がグッズのブルーのTシャツを着ている客席を見ながら「サッカー(日本代表の)応援みたい(笑)」(北川)というMCを挟み、色とりどりの楽曲が披露される。「始まりの場所」は北川がタンバリン、岩沢がアコギとハーモニカ。北川のトイピアノから始まった「遊園地」では〈一緒にいてくれないか?〉〈話したいこと たくさんあるんだ〉というフレーズを歌い上げ、鍵盤ハーモニカのイントロが鳴った瞬間にどよめきにも似た歓声が上がった「境界線」では、美しいハモリで魅了。情景や感情が鮮明に伝わってくる北川、岩沢の二人だけで描き出す歌はまさに、ゆずの真骨頂だ。

 「路上時代からずっと歌ってる……いや、“ずっと”じゃないか」(北川)「滅多に歌わないよ(笑)」(岩沢)というトークを挟んだ「する~」では、サビを「ブル~ブル~ブル~」とアレンジし、観客の年代別(10歳以下/10~20代/30~40代/50~60代/70代以降)で合唱。ほんわかと楽しい雰囲気のなかで、客層の広さ、つまり、ゆずのポピュラリティの高さがしっかりと伝わってきた。さらに「タッタ」ではオーディエンスが小さいタンバリンを鳴らしながら踊り、「友達の唄」では再び大合唱。2万人収容のアリーナ会場が、まるで路上ライブのような親密な空気で満たされた。

 北川、岩沢がドライブしながら横浜の名所を案内する映像(横浜スタジアム~帆船日本丸、ハマスタで食べた牛丼など二人の何気ないトークが楽しい)の後、アリーナの両サイドから登場。観客とハイタッチしながらセンターステージに上がった二人は「サヨナラバス」からライブ後半をスタートさせた。「俺たちの横浜に素敵な会場ができたから、誕生日をみんなと一緒にお祝いしたいと思います」(北川)という言葉に導かれたのは「贈る詩」。オーディエンスの手拍子とシンガロングが響き、心地よい一体感へと結びつく。さらに「青」では、〈泪が溢れて/途方にくれた夜に〉からはじまる切なくて青い感情を北川が熱唱。楽曲を重ねるにつれて、観客の感情の振れ幅が大きくなっていくのが手に取るようにわかる。

 そしてこの日のライブでもっとも強く印象に残ったのは、「響語り」という題名を冠したメドレーだった。「はるか」から始まり、「Hey和」「1」「虹」「SEIMEI」をつなぎ「はるか」に戻る構成から伝わってくるのは、生まれ育った故郷への思い、そして、平和への強く、深い願い。楽曲に込めたメッセージとリンクしたアニメーション映像、真摯な感情を刻んだボーカル/ハーモニーを含め、ゆずの奥深い表現、アートフォームとしての精度の高さをダイレクトに体感できるパフォーマンスだった。「このコンサートでは楽しいことをいっぱいやろうと思っていたんですけど、僕らはステージに立つ人間でもあるけど、生身の人間として、どうしても今思うことをみんなに伝えたい。その思いで、1年くらいかけて作ってきました。どんなふうに届くかなと思ってたんだけど、温かい拍手をいただけて。どうもありがとう」(北川)というコメントも心に残った。

 シリアスな雰囲気から一転、いきなり華やかなエンタメに振り切れるのもゆずの強さ。「少年」ではお約束の“Y・U・Z・U”の振付で盛り上がり、本編ラストの「夏色」ではもちろん“もう1回”コールが発生。楽しくて元気いっぱいのゆず、やっぱり最高だ。

 アンコールでは、ゆずの“今”を体感できた。再びユリの映像が映し出され、新曲「ビューティフル」へ。バンドによる演奏、そして、大勢のパフォーマーが登場し、あきらめずに前に進んでいく姿は美しいと肯定し、未来に進む力をダイナミックに表現した。ラストは「Frontier」。観客はフラッグを振り、大合唱でゆずをしっかりとサポート。圧倒的な一体感のなか、ライブは終了。最後は北川、岩沢が生声で「こけら落とし、おめでとうございます!」と叫び、会場は大きな拍手で包まれた。

関連記事