R&Bイベント『STAY READY vol.2』aimiインタビューとライブレポートで振り返る 開催までの舞台裏とステージ上で感じたこと

 R&Bシンガーのaimiが主催するR&Bイベント『STAY READY vol.2』が、9月15日代官山SPACE ODDにて開催された。「日本でR&Bを盛り上げたい」というaimiの強い想いのもと行われた本イベントには、DJ AKITO、DaBook、EMI MARIA、MIREI(當山みれい)、Sincereが出演。R&Bを愛する者たちが集結した温かなムードに包まれる空間となった。

 本記事では前半にaimiによる『STAY READY vol.2』を振り返るインタビュー(取材:猪又孝)、後半にはライブレポート(取材:小渕晃)を掲載。aimiがどんな思いで当日に臨んだのか、その舞台裏とあわせて当日のイベントの模様を味わってほしい。(編集部)

R&B『STAY READY vol.2』で目指したのは会場の一体感

ーー今回の出演者はどんなことを考えて決めたんですか?

aimi:共通しているのはR&Bがルーツにあるアーティストということです。EMIさん(EMI MARIA)は第1回にも出てもらったので、次は私のステージへのゲストではなくソロのステージをしっかり見せてもらいたいと思いました。

――MIREIは?

aimi:當山みれい名義でのライブを対バンで見せてもらったときに歌声に圧倒されたのと、海外名義のMIREIの方ではもう少し攻めたことをやっているのを知っていたので、初めて日本でMIREI名義でライブをやるのであれば『STAY READY』でぜひ! という感じでした。Sincereは去年、大阪のイベントで初めて出会って以降、いろんなライブで活躍している姿を見ていて。彼女は直球R&Bじゃないけど、私の中では進化したR&Bという枠で声を掛けました。

ーーさらに今回は、DaBookとDJ AKITOという2名のDJがラインナップされていました。

aimi:もともと3人でblock.fmで『Vibe-In-Radio』というラジオ番組をやっていたことから参加をお願いしました。彼らと一緒に江ノ島OPPA-LAで開催した『VIBEY』というパーティーが私のR&Bパーティーなるものの原体験なんです。だからこそ彼らにお願いして、そのパーティーを引き継ぐ形でやってみたかったんです。

――複数アーティストによるイベントでは、各出演者が順番にライブを披露する形式が多いですが、今回は各出演者の間にDJタイムがありました。その構成にaimiさんのこだわりを感じました。

aimi:前回、初めて開催したときはDJがいなくて、私が選んだBGMを流すカタチでやったんですけど、それだとどうしてもショーケース感が強くなった気がしました。ライブだけになると“観る”という感覚が強くなっちゃう。でも、DJがいることでお客さんがフロアで踊るとか体を揺らすとか能動的な行動が生まれるので、より参加型な空気が作りやすくなると思ってDJタイムを入れました。お客さんが自らムーヴするよう促したかったんです。

――DJの選曲が素晴らしかったです。ちゃんとテーマがある選曲にしていて、DaBookはミドルテンポの洋楽90’s R&Bが中心。AKITOは邦楽R&Bが中心。しかも女性出演者によるイベントだからかあえて男性R&Bを多めにしていました。そしてaimiさんに繋ぐ2回目のAKITOさんの選曲は、四つ打ちやディスコ系を混ぜながら会場を華やかにしていった。さらにライブが終わったあとは二人がB to Bでプレイ。そこでも「今夜はブギー・バック」などをかけてパーティーの余韻を感じられるような選曲にしていた。

aimi:選曲テーマは私から伝えてないんです。二人のことはよく知ってるし、ラジオも一緒にやっていたので、お任せすれば間違いないと思ってました。

――今回の開催に向けた準備では、どんなことが大変でしたか?

aimi:一番大変だったのは、出演アーティストの力を借りないとイベントとして成り立たせることができないというか。『STAY READY』って普通のライブイベントと全然違うと思うんですよ。

――どういう部分が?

aimi:成し遂げたいことが「R&Bをもっと日本で盛り上げたい」ということなので。出演者に自分のR&Bルーツに立ち返ってセットリストを作ってもらったり、お客さんに呼びかけてもらったり、他のイベントに比べて出演者自身が思いを持って向き合わなきゃいけない部分があったと思うんです。そのテーマを私がみなさんに伝えて、私の思いをわかってもらうのに時間がかかったかもしれないです。

――運命共同体みたいにならないといけない。

aimi:そう。「私のイベントに参加してください」だけじゃなくて、「R&Bが日本で盛り上がるためにできることはないかな?」っていうことの一つがこのイベントなので。そういう意味で、開催前に毎週、出演者の一人ずつとインスタライブをやったんです。

――インスタライブではaimiさんが聞き手に回って、各出演者の音楽的なバックグラウンドを紐解いていました。

aimi:「それぞれのアーティストがなぜこのR&Bパーティーに出るのか?」っていう意図をみんなに浸透させて理解してもらうことにすごく意味があると思っていたので。このイベントで何を伝えたいかということを細部まで擦り合わせて、イベントを一つにまとめる作業が大変でした。

――インスタでは開催前に、aimiさんによるMash Upカバーも投稿して、衆目を集める動きを加速させていました。

aimi:カバーだと入りやすいんじゃないかと思ったんです。でも、ただ普通にカバーするだけだとR&B度数が下がるな、もっと面白いことができないかなと考えて。Musiq Soulchildの「Teachme」とMuni Longの「Hrs & Hrs」を混ぜてハチロクにして、宇多田ヒカルさんの「In My Room」を歌いました。ジャパニーズR&Bのイベントをやるから絶対ジャパニーズR&Bをカバーしたいなと思っていたんです。とにかく開催までに、日本のR&B好きにどれだけ出会えるか。そういう時間との闘いだったと思います。

ライブ中にこぼれ出たaimiの“本音”

――ここからは今回のaimiさんのステージについて伺います。そもそも今回のライブはどんなものを目指したんですか?

aimi:テーマは一体感でした。どれだけお客さんと意思疎通できるか。これまではショーを見せるという感覚が強かったんですけど、お客さんの声出しもできるようになったので、みんなと一つの空間を作りたかったんです。なので、曲数は今までで一番多かったですね。40分の中にめちゃめちゃ詰め込んでMCは最小限に抑えて、DJセットを聴いているように流れに乗っていく感じで楽しめるものを目指しました。

――セットリストもアッパーな曲が多めでしたね。リズムやノリがはっきりわかるものというか。

aimi:そうですね。今回はBACARDIさんとコラボした「No One Is」や、JASMINEさんとの「Risk It All」を東京で初めてパフォーマンスする機会だったから、自分的にはリリースライブみたいな感覚もありました。そういう部分がハイライトになるようなセットリストを組んだんです。

――今回はDJ大自然とピアニストの竹田麻里絵さんがサポートメンバーとして参加していました。DJ大自然とはいつ頃からですか?

aimi:大自然さんは去年の8月からです。ギタリストの上条頌さんがコロナ禍の時期にやっていたYouTube配信があって、そこに私を呼んでくださったときに大自然さんに初めてお会いしたんです。そのとき、大自然さんがMPCを叩きながらDJ兼マニピュレーターとして音も出してくれたんですけど、それがめちゃくちゃ良くて。自分のパフォーマンスのレベルアップを計るためにも大自然さんにお願いしたくて、そこから、それまでサポートしてくださった麻里絵さんと3人でという感じになっていきました。

――今回、aimiさんのステージではEMI MARIAさんとの「Howʼs The Weather?」を披露しました。二人で揃ってサイドステップする感じも可愛くて、すごくチャーミングなステージでした。

aimi:EMIさんとは3曲入りのシングルを出してから、ライブを一緒にやらせてもらうようになって。ステージ上でも私たちのヴァイブスができあがってきたなという感じがあって、思わずEMIさんの手を握っちゃったんですよ、ステージの上で。前もって考えていたわけじゃなくて自然にそうしたくなっちゃったというか。なんか思い出すと泣けてくる……(と実際に涙ぐむ)。なんかそういう人なんですよね。

――安心感なんですかね。

aimi:日本のR&Bを盛り上げたくてもがいているのを知ってる人だから。その人が協力してくれて、ステージにいて、一緒に歌ってくれているっていう。それがなんかもう嬉しくて、つい手を握っちゃったんだと思います。

――一方、JASMINEさんとの「Risk It All」は、タフ&ストロングなパフォーマンスでした。

aimi:やばかったですね。爆発してましたよね、JASMINEさんも。あんなふうにパッと出てきて120%でヴァースをかませる人はなかなかいないなと尊敬の眼差しでした。「Risk It All」で言ってることと、私たちが成し遂げようとしていることが完全に一致した感じがあって、あの瞬間に曲が完成したなと思いました。

――さらに今回のライブで新曲を披露しました。「(wanna vibe) with you」というタイトルですが、どんな思いで書いた曲ですか?

aimi:『STAY READY』のことを想像しながら書いた曲ですが、実際当日を迎えるまで苦悩や迷いがありました。それを乗り越えてでも、みんなとヴァイブしていきたいという思いを曲にしました。

――実際、ステージで歌ってみてどんな感想を持ちましたか?

aimi:私が今まで作ってきた曲って自分との対峙を表現している曲が多いんですけど、〈I wanna vibe with you〉って、会場のみんなに指を差しながら歌う感じは今回初めてだったんです。一人ひとりに向けて歌えたから、それぞれの表情が今も思い返せるし、「本当みんな、いい顔してるなぁ」って思いながら歌っていました。

――その後のMCでは「日本でR&Bを盛り上げたいです、広めたいです」とメッセージして、「ここにいるみなさんがチームです」と伝えました。その言葉を発したときに涙をこぼしましたね。

aimi:自分はインディペンデントで活動していて……という話をするつもりでいたんですけど、あそこで「みんながチームです」っていう本音が出ると思っていなくて。で、なんかぐわっとときちゃったんですよね。本当ポロッと出ちゃったひと言で。私のチームってこの人たちだって本心から思ったというか。

――その涙のあとに「力を貸してほしいんです」と話していて。aimiさんの熱意というか、切なる願いが痛いほど伝わってきました。直接、呼びかけなきゃって。

aimi:ムーブメントは一人では作れないし、コミュニティは一人じゃ成り立たないから。みんなはそういうキャラじゃないかもしれないけど、力を貸してくださいって頭を下げるのは今だと思って語りかけたんです。

――当日のラスト曲は「Chosen One」でした。どんな気持ちで歌っていました?

aimi:今、話してきたことがすべてですけど、R&Bが好きって大声で叫んでいる人は少ないし、あの場所に来てくれた人はあの場所を作るためには、一人も欠けてはならないっていう感覚があったので、歌詞にある〈We are the chosen one〉であることに誇りを持っていこうって。そういう気持ちで歌っていました。

――「Chosen One」のイントロ部分で「This is Real! This is R&B!」って叫んでましたしね。

aimi:え、言ってました? 覚えてない(笑)。自分が想像した以上に今回の『STAY READY』が温かいコミュニティだったので、無意識のうちに出たんでしょうね(笑)。

――今後はどのようなライブ展開を考えていますか? 

aimi:まだ何も決まってないんです。だけど、引き続き私自身のライブはやっていきたいです。なので、実現に向けて、またみなさんに力を貸してもらえると嬉しいです。

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