EXO CHEN、互いが互いの“北極星”であることをファンと確かめ合った旅 日本ツアー『Polaris』ライブレポート

 EXOのCHENが、8月17日にリリースした自身初の日本1stミニアルバム『ポラリス』を携えたソロライブツアー『CHEN JAPAN TOUR 2023 - Polaris -』を開催。1カ月間にわたり、名古屋、横浜、大阪、倉敷、福岡の全国5都市8公演を回る本ツアーから、本稿では9月1日に行われた横浜初日公演の模様をレポートする。

 「日本の皆さん、会いたかったです! 『ポラリス』の第一歩を始めましょうか」――彼にとって、2019年に全国4都市をまわったEXOの5度目のワールドツアー『EXO PLANET #5 - EXplOration - in JAPAN』以来の横浜でのライブとなった本公演。「こんにちは、チェンです。僕の初めての日本ツアー横浜公演にようこそ!」と、挨拶をしたCHENは、4月にベルーナドームで行われたEXOのファンクラブイベント『EXO-L-JAPAN presents EXO CHANNEL “THE BEST”』以来、過去の公演の映像を観ながら首を長くして、このツアーを待っていたと声を弾ませた。

 冒頭のギターセクションでしっとりと歌い上げたのは、本ツアーをサポートするAKバンドのギタリストにしてバンドマスター・渡辺裕太と織りなすバラードナンバー。以前出演したリアリティー番組『Heart 4 U』で韓国のさまざまな地域を訪れてバスキング(路上ライブ)を行ったことを想起させ、当時を再現するようにリラックスした空気感だった。シーン毎にステージの表情が一変し、観る者を壮大な『Polaris』の旅へと誘う本ツアーの演出を手がけるのは、ダンサー・振付師・俳優など多彩な領域で知られる世界的パフォーマンスチーム・s**t kingzのshojiだ。シックな装いに身を包んで再び登場したピアノセクションでも、細部まで拘られた繊細で美しいステージセットと、それ以上のカリスマ性を放つ彼自身のアーティスティックな存在感で魅了する。

 「ステージの上から皆さんを見ていると、EXOのライブを思い出します」「(ペンライトの)シルバーの波が、今日の僕をまた元気づけてくれたように思います」――観客の手元で輝くライトを眺めながら、EXOに思いを馳せるCHEN。「ここまでの『Polaris』の旅はどうでしたか?」「もう少し皆さんのそばに行ってみましょうか」、そう言って客席へ足を踏み入れようとした際、リハーサルの時にはあった階段がないハプニングがありつつも、「これは僕のソロコンサートですよね?(笑)」「今日だけは僕の自由にしてもいい気がするんですけど……」と、どうしてもファンの近くに行きたい気持ちが溢れ出てくる。その後、願いも叶い、客席に降りて「こんなふうに近くでお会いすると、本当に素敵ですね」とファンを見渡していたCHENの目が、不意に一際輝いた。男性ファンを発見したのだ。なかにはアメリカや中国からきた参加者もおり、ファンからパートナーの付き添いなど参加経緯はそれぞれでありながら、「『MAMA』(EXO 1stミニアルバム/2012年リリース)の時からファンです」「今日でファンになりました!」とさまざまな角度からCHENの“虜”になった声を聞いたCHENは、「やったー!」と笑顔を見せ、まるで背中に羽が生えているかのような軽快な足取りと満面の笑みでステージへと戻っていった。

 このように客席に降りて交流することが、自分にとって“すごく特別で意味のあるもの”だと話したCHEN。「EXOの公演の時にはトロッコに乗ったり、ステージから手を伸ばしたりしても全然届きませんでしたが、今回のツアーでこんな近くで皆さんとお会いできるのは、このコンサートのひとつの長所になっていると思います」という言葉通り、長年支えてくれたファンとようやく間近で会えるこの機会を誰よりも心待ちにしていたのは本人だったに違いない。

 後半には、雰囲気が180度変貌したオールバンドフィーチャーセクションで展開。「FREE WORLD」「Break Out」「Watch Out」と立て続けにかき鳴らした3曲の日本語楽曲は、彼の楽曲のなかでも、とりわけバンドサウンドが際立つロックチューンだ。CHENの楽曲は、聴く人をあたたかく大きな愛情で包み込み、感情に訴えかけるバラードテイストが大きな特徴であるように思うだろう。しかし、ロックナンバーを与えられた彼はまるで水を得た魚。本公演の前に風邪を引いてしまったとは思えないほど、音源を遥かに超える歌声で魂を注ぎ込む立ち姿は、まさにロックスターのそれを彷彿とさせる。観客の五感をすべて掌握するように全身で魅了する彼のステージを観れば、観客のペンライトを振る腕が一層と高くなるのも優に納得できる。「僕はこのセクションが始まる前にお伝えしましたよね? “僕のエネルギーが皆さんを引っ張っていくのではなくて、皆さんが僕を引っ張ってくれる”と」。そう力強く話したCHENの瞳には、再び柔らかな光が灯っていた。

 本編ラストには、難易度の高いラインナップが揃う彼の楽曲のなかでも「歌う前にお祈りをしなければいけない曲」とCHEN自身が語るほど難しいという、『ポラリス』のタイトル曲「Light Of My life」を披露。「皆さんの幸せを祈りました」と気合いを入れて歌い始めると、歌詞を間違えてしまい、もう一度最初から歌い直すことに。このようなハプニングすらも「かわいい!」と思わせてしまうCHENの人間性が随所に感じられた。頭を抱えて屈み、顔を赤くして心底照れる姿はまさしく愛嬌の塊だ。嘘ひとつない彼の笑顔を見れば、誰もが虜になってしまうのだ。その後、声を整えもう一度歌った「Light Of My life」は、繊細な感情表現と圧倒的な高音で、観る者すべてを感動させる完璧なステージだった。

CHEN 'Light Of My life' MV

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