サザンオールスターズ、変わりゆく時代の変わらないアティテュード 『茅ヶ崎ライブ』に向けて連続配信曲を総括

 45年前の1978年6月25日。日本の音楽シーンにとって非常に重要な記念日である。この日デビューを果たしたサザンオールスターズ。彼らがこの45年間に残した足跡と功績は語り切れないほど膨大だ。そして今年、45周年という節目を迎えても驚くほど精力的な活動を行い、いずれも大きな話題を呼んでいる。アニバーサリーイヤーとはいえ、単に過去を振り返るだけにとどまらず、前進していくのがサザンの今の姿なのだ。

 2023年6月24日に桑田佳祐のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM/JFN)で突如発表されたのは、新曲を3カ月連続で配信リリースすることと、10年ぶりに『茅ヶ崎ライブ』を行うということだった。そして、「サザンオールスターズ45周年特設サイト」が公開され、メンバーからのメッセージも掲載された。5年前の40周年の際にも新曲の発表やベストアルバム『海のOh, Yeah!!』のリリース、そして大規模なアリーナ&ドームツアーなどがあったが、それに比べればまだ現段階では少しこぢんまりとした印象かもしれない。しかし、これから先にも何かがあることを期待したいし、ここにはサザンならではの真摯なアティテュードが浮き彫りになっているのである。

 まず、7月17日に届けられた配信第一弾の「盆ギリ恋歌」からすでに突っ走っている。ちょっと猥雑な雰囲気のあるサザンらしいロックンロールではあるが、歌詞には日本の夏を感じさせるフレーズをこれでもかと盛り込みながら、〈スーパーボウルやグラミー賞〉という意表を突くワードが差し込まれたり、〈江ノ島が見えてきた 俺の家も近い〉なんていうどこかで聴いたことのある一節が聴こえてきたりと、とにかく遊び心もたっぷりでお祭り感満載だ。音楽的にも、歌謡曲的な和風のメロディをうまく駆使しつつ、ところどころでオリエンタルなエッセンスがちりばめられ、全体的には80年代のエレポップのような印象すらあって、一言では収められない情報量の多さに圧倒される。サザン以外にこんな曲は作れないだろう。そう思わせられる圧倒的なパワーを持つ一曲なのだ。

サザンオールスターズ - 盆ギリ恋歌 [Official Music Video]

 8月2日に配信された新曲第二弾「歌えニッポンの空」は、少し趣が違う一曲だ。日本の夏の情景を描いたという意味では「盆ギリ恋歌」と通底するが、こちらは桑田佳祐の生真面目な一面が表出された楽曲といえるかもしれない。故郷への想いを美しい言葉で綴りながら淡々と歌い上げ、〈ありがとう!!〉という感謝の一言を添える。世知辛いこの世の中で生きる人々へのエールのようでもあり、未来に生きる子どもたちへの希望のメッセージにも聞こえる。決して派手ではないが、ソフトなラテンテイストのサウンドに乗せたメロディも優しく、ノスタルジックな気分にさせられ、聴く者の心に響くことだろう。

サザンオールスターズ - 歌えニッポンの空 [Official Music Video]

 そして、9月18日配信の第三弾が、話題作「Relay〜杜の詩」である。ピアノの音色から穏やかに始まるこのナンバーには、サザンが根城とするビクタースタジオに隣接する神宮の〈杜〉の再開発を憂うメッセージが込められている。しかし、ここでの桑田佳祐は声高らかに反対を叫んでいるわけではない。なぜそうなるのかを教えてほしいと言い、そして賛成や反対の白黒をつけるのではなく、なぜそうなるのかを考えようという問題提起のメッセージが込められているのだ。クラシカルなストリングスや荘厳なコーラスを配したアレンジは、どこかジョン・レノンにも通じる印象があり、その背景には大きな愛を感じることができるだろう。彼の素直な人間性が表れた傑作と言ってもいいのではないだろうか。

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