シンガーソングライター やまもとはるとの音楽に滲み出る揺れる心 小山田壮平との出会いを経て生まれた「からっぽのプール」

 やまもとが曲作りを始めたのは大学2年生の春。当初は歌詞を重視しておらず、英語のような言葉で歌ったり、とりあえず単語を並べてみたりするところから始まった。ターニングポイントになったのが2021年の10月。憧れのandymoriのボーカル&ギター、小山田壮平との出会いだ。

「壮平くんとは2人でスタジオに入ったりもしたし、釣りにも連れて行ってもらったし、本当にいろいろなことを教えてもらいました。ライブにも一緒に出演をさせていただきました。福岡で壮平くんとよく一緒にいた時期に、“はるとの曲はまだ甘い。もっと感情を発露させるんだよ”って言われていたんですよ。だけど当時の僕には言っていることが分からなくて。“どうしよう……”って思いつつ、言われたことをメモして。そこから“壮平くんはこんなにすごいのに、なんで俺は……”と劣等感を抱くようになってしまって。僕は壮平くんのことが大好きだけど、この人にはなれないし、到底追いつけない。それどころか手も足も出ない。壮平くんや上京して出会ったミュージシャンに恋しているような気持ちと、それなのに音楽に突き放されているような気持ち。そこから『からっぽのプール』という曲が生まれました」

からっぽのプール – やまもとはると (Music Video)

〈遠く眩しい太陽のような/君には追いつけないや僕では〉
〈こんなに空っぽな僕の頭では/こんなに真っ黒な僕の心では/何も言えない言うこともない〉

 「からっぽのプール」の歌詞は、美しく輝く〈君〉とちっぽけで空っぽな〈僕〉のコントラストが印象的だ。この曲で描かれる君と僕の関係とは、そのまま小山田とやまもとの関係なのだろう。やまもと自身を比喩する言葉としてタイトルに掲げられている「からっぽのプール」というワードは小説から拝借したものだという。

「歌詞を書き始めたら止まらなくなってしまって2時間くらいで全部書きました。“歌詞っぽくしよう”とか“難しい言葉を使おう”という邪念のない状態で、自分が知っている言葉の中で素直に書こうと思ったから、すらすら出てきたんだと思います。『からっぽのプール』は音楽のことで悩んでいた時期にアクセスできる曲で、自分にとってすごく大切な曲です。多分、この曲を書くまでは自分の感情の出口がなかったんだと思うんですよ。だから歌詞を全部書き終えたときはちょっとスッキリしたし、“今までとは違う曲ができた”と自分でも思いました。壮平くんから誘われて出たライブで初めて歌ったんですけど、みんなから“すごくいい”と言ってもらえて。“これでいいんだ”と思えましたね」

 約4分間の楽曲は〈これからどうなってゆくの〉というフレーズによって締め括られる。やまもとの歌声の響きも相まって、期待と不安がないまぜになったような、絶妙な余韻が残る。

「壮平くんと初めて一緒にスタジオに入ったとき、SNSに“21歳の子と初めてスタジオに入った。すごくいい声″みたいな投稿をしてくれていたんですよ。それがすごく嬉しくて、“どうなっちゃうんだ、俺の人生!”、“夢が叶っちゃうのかな?”ってめちゃくちゃワクワクしました。そうやって自分の人生が進んでいる感覚はあったけど、同時に“こんな自分が進んでもいいのか”という気持ちもあって。〈これからどうなってゆくの〉には、いろいろな感情が混ざり合って自分でもよく分からなくなっている感じが出ていると思います。その気持ちは、今もちょっとあって。事務所に所属させてもらったり、活動の規模が大きくなっているのはワクワクするけど、“もしかしたら売れちゃうかもしれないけど、まだ何も分かっていない自分が本当に売れてもいいんだろうか?”という気持ちは正直あります。“いろいろな人に自分の歌を聴いてほしい”と思いつつ、“はたして僕の音楽が人の人生を豊かにするんだろうか?”と考えてしまうし」

 どこか切なげな歌声とは裏腹に、インタビューでは明るくはきはきと話してくれた。しかし彼の歌には“楽しい人間になりたいが、なりきれない”人間性が滲み出ているし、それこそが彼の持ち味。現在は小山田と出会った地元の福岡を離れ、東京の音楽仲間から刺激を受けながら活動しているやまもと。日々と自意識の狭間から、今後どんな曲が生み出されるのだろうか。

 なおやまもとは現在、『Hyper Night Program GOW!!』(FM福岡)内「LIVE GOW 〜bloom〜」に毎月レギュラー出演中。同番組のプロデューサーは初めて「からっぽのプール」を聴いたときのことを振り返って「どこか儚くも気持ちのこもった歌声に心地よいギターのメロディで、歌が体にすっと入ってくるような感覚を覚えました」と語り、起用理由について「生の歌声を聞きたいと思ったのと同時に福岡出身のアーティストということで、ぜひ番組としてこれから長く関係を続けたいアーティストだと思った」とコメントしてくれた。やまもとの魅力については歌声とキャラクターを挙げ、「どこか耳に残る優しい歌声と、話せば話すほど色んな一面を持つちょっと不思議なキャラクターのギャップもあって魅力的です」という。この「ちょっと不思議なキャラクター」というのは、前述した“楽しい人間になりたいが、なりきれない”人間性とも共通しているだろう。

 今回取り上げた「からっぽのプール」をはじめ、ライブで披露している楽曲を中心とした6曲入りのEP『からっぽのプール』が現在配信中。どの曲も歌にグッと力がこもる瞬間や声のニュアンスの微細な変化がはっきり聴き取れるようなテイクで、23歳の“今”がそのままパッケージングされているのが今作の魅力だろう。ちなみに番組プロデューサーの推し曲は「モノクロの花」。「アップテンポなメロディの中に少し寂し気な歌詞と歌声、その歌詞が目に浮かぶようで、その世界観に引き込まれました」とコメントしてくれた。このEPを入り口にやまもとの歌に出会ってほしい。

■リリース情報
EP『からっぽのプール』
発売日:2023年7月19日(水)
品番:ASCU-6121
金額:2000円(税込)
収録曲:
01. 光
02. ほし
03. 追う風
04. 公園
05. モノクロの花
06. からっぽのプール
▼CDの購入はこちら
https://www.asmart.jp/shop/yamamoto_haruto
▼ダウンロード/ストリーミング
https://amuse-inc.lnk.to/KarapponoPool

■放送情報
FM福岡『Hyper Night Program GOW!!』内「LIVE GOW 〜bloom〜」
2023年8月30日(水)より出演
*毎週月~木曜日16:30~20:25 オンエア
*毎月最終水曜日に生出演
FM福岡『Hyper Night Program GOW!!』オフィシャルサイト:https://fmfukuoka.co.jp/program/gow/

■関連リンク
公式サイト:https://yamamotoharuto.com/
X(旧Twitter):https://twitter.com/harutosan8610/
Instagram:https://www.instagram.com/ha_ru6652/

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