nyamura「you are my curse」バイラルロングヒット 淡々としたメロディから感じられる生々しさ

you are my curse / nyamura

 9月上旬現在、TikTokで「you are my curse」を使用した動画は71000投稿を超えている。また、nyamuraがライブで同曲を歌唱する様子を観客が撮影し投稿した動画も多数あり、115000を超える“いいね”がついている動画もあるが、注目すべきは、各ライブ動画のセーブ数だ。1000を超えている投稿も多く、中には10000を超えている投稿もある。nyamuraが他の楽曲を歌唱しているライブ動画の投稿もあるが、その中でも「you are my curse」がすべてにおいて桁違いの数字を残している。

 nyamuraは2020年頃から楽曲を作り始め、SoundCloudで楽曲を公開していた。YouTube、Twitter、Instagram、TikTokのアカウントはあるものの、自身の詳細なプロフィールは一切書かれておらず、TikTokのプロフィールにだけ「アーティスト」と記されている。現在、Spotifyで“nyamura”と検索すると公開されている音源は5曲。そのうち3曲が他アーティストとのコラボレーション曲である。 nyamura単独名義での楽曲は「はーどもーどかのじょ」と「you are my curse」の2曲で「はーどもーどかのじょ」は作詞・ミックス・リリックビデオの制作を自身が担当。「you are my curse」は作詞・作曲・リリックビデオの制作を手掛けている。

 nyamuraは「you are my curse」について、 「ファーストシングル「はーどもーどかのじょ」のその先、愛はやがて深い憎しみに昇華される」(※2)とコメントしている。「はーどもーどかのじょ」は〈殺したいほどだいすき〉というフレーズが象徴するように、不安定な彼女が、彼氏がつく“嘘”の向こうに見える現実を受け入れようとせず〈死ぬ時もずっと一緒だよ〉と思い込んでいる。妄想と暴走が並行している病み系ラブソングといえようか。曲調がポップなこと、nyamuraの澄んだ歌声で一聴ではわからないが、何度も聴くと闇に堕ちる一歩手前の狂気が見えてくる。その彼女が、闇に堕ちたのが「you are my curse」なのだろう。

 本曲のトラックからは、エレクトロニカやアンビエントの影響を感じるが、音数も音色の種類も少なく、繊細な音像が浮かび上がってくる。ダウンビートではあるが、この2~3年ですっかり定着した“チル”とは異なり、例えるなら子守歌のような音像である。淡々としたメロディで譜割りも細かく、リズムやボーカルアプローチはラップに近い要素も強いが、そこを声音を使い分け、しっかり歌に昇華しているところに歌い手としての表現力を感じる。印象的なのは、フレーズの途中で出てくるトーンの扱い方で、あまりバリエーションをつけず、ほぼ全部同じニュアンスで1曲通して歌っている。そこが楽曲に独特のノリを出しているのは確かだが、それよりも彼女の心が壊れてしまったことが切実に伝わってくる。ボーカルのエフェクトが強めだった「はーどもーどかのじょ」と比べ、nyamuraの地声の良さを生かしたミックスの差も、闇に堕ちたことで妄想から現実に戻って来た生々しさを感じさせる。もし、このボーカルエフェクトの差も含めて、自分の中で渦巻く黒い部分を描こうとしているのならば、次はどんな手法でくるのか想像ができない。そういう意味では、歌詞だけでなく、今後を含め未知なることが刺激的なアーティストだ。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2023-08-30
※2:https://youtu.be/Ug5PEHr-SxQ?si=Q4RiT0F-D8e13Rlb

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