『SAMRISE Festival』は“食×音楽”にこだわり抜いた新しいエンタテインメントへ 全世代が気兼ねなく参加できるフェスの提案

「日本のエンタテインメントの在り方を変えていかないといけないと思っている」

 2023年9月9日、10日の2日間にわたり、さいたまスーパーアリーナで開催される新しい音楽フェス『SAMRISE Festival』。出演アーティストのラインナップも、フードエリアの出店者も、そして音楽以外の企画の数々も、既存のフェスとは一線を画したユニークなものとなっているこのフェスティバルに興味を持ち、率直に「どういうことなのか」と主催者(TOKYO MUSIC LAND実行委員会・責任者)に疑問をぶつけると、そんな返事が返ってきた。その言葉を聞いて、このイベントは単に「新しいフェスを立ち上げます」ということではなく、少し大げさに言えばこの国のエンタテインメントカルチャーの担い手とそのユーザーに対する「提言」なのだと思った(以下、発言はすべて当フェス主催者によるもの)。

 もちろん『SAMRISE Festival』は一義的には音楽フェスティバルであり、UVERworldやWANIMAのようなロックバンドから、INI(このフェスでは初めて尾崎匠海、髙塚大夢、藤牧京介の3人編成でのライブパフォーマンスを行う)、THE RAMPAGEやGENERATIONSなど、現代のポップミュージックシーンを牽引するアクトが顔を揃える出演陣の豪華さも、もちろん『SAMRISE Festival』の大きな魅力のひとつだ。だが、例えば公式サイトを見たときにそれ以上に目を惹くのは、「音楽」と並んでフェスのメインコンテンツのように位置づけられている「食」の在り方だ。入場券とフードを買うための専用コインがセットになった「スターターセット」を購入することで楽しめるフードエリアには、日本一のマグロ仲卸業者として名高い「やま幸」や、世界中の食通から注目を集める六本木の高級鮨店「鮨さいとう」、2011年のミシュラン1つ星獲得以降、現在まで星を維持し続けている焼き鳥の名店「鳥しき」など、イベントのフードエリアではまずお目にかかれない名前がずらり。予約の取れない店も多く、そうした名店の味をフェスの場で楽しめるというのは驚きでしかない。

 なぜこんなことを実現しようと思ったのか。そこには主催者が海外のライブ会場を視察して回る中で感じた「日本との違い」が大きく影響していたという。

「海外ではライブ会場の中にレストランが併設されていたりして、音楽と食やお酒がセットになっている。フェスに限らず、食事があって、おいしいお酒があって、子どもから大人までが楽しめるような会場がたくさんあるんです。でも日本ではそうなっていない。そういうものが日本にもあれば、というのが最初の思いでした。単に『フェスを作りたい』というだけではなかったんです」

 確かに海外に行くと、ライブのヴェニューとレストランやバーは切っても切れない関係で、友人と食事や酒を楽しむ延長線上に音楽を楽しむという行為があると感じる。音楽のライブに限らず、スポーツ観戦や演劇・ミュージカルなどの鑑賞もそうだろう。エンタテインメントがそうやって人々の生活文化に深く根ざしているのだ。そうやって生活とエンタメがごく近いところで共存するからこそ、そこには経済が生まれる。

「ライブがひとつ行われるだけでも周辺のレストランが盛り上がったりするし、すごい経済効果があるんです。海外のエンタメは、そうした地域貢献という側面も非常に強い」

 そうした状況をここ日本でも生み出したい――そんな壮大なモチベーションから『SAMRISE Festival』は産声を上げた。もちろん名店を招致するのには人脈も丁寧な説明も必要だったはずだが、結果的に『SAMRISE Festival』は他に類を見ないスタイルのフェスティバルとして、まさに立ち上がろうとしている。そしてそこには、「幅広い世代にそれぞれの楽しみ方を見つけてほしい」という思いもある。

 歴史を重ね徐々に変わってきているとはいえ、ライブやフェスといえば「若い世代のもの」という認識が根強くある。それは前提とした上で、『SAMRISE Festival』が提案するのは「全世代がそれぞれの楽しみ方で楽しめる」フェスの在り方だ。

「若者が減ってきている中で、年齢の高い層が経済を回していかなければならない。エンタメにもそういう要素があってもいいと思うんです。私は今50代ですが、野外のフードエリアで列に並んで食事を買う、というのは正直しんどかったりもする。だったら3,000円払って(『SAMRISE Festival』のFOOD&BARエリアのスターターセットは税込2,970円)美味しいものを食べるという選択があってもいい。フェスに来ないような世代の人たちにも『これだったら楽しめる』という形をひとつ提案したいなと思っています。ライブをちょっとだけ観て、あとはシャンパンを楽しんでいてもいいし、普段食べられないものを味わいにフェスに来てもいい。そういう自由な感じが好きなんですよ。自由に選べる楽しみ方がもっとあっていいのかなと」

 その「自由に楽しむ」という思想は出演アーティストのブッキングにも表れているのではないだろうか。ラインナップの中にロックバンドもポップグループも並び立つタイムテーブルは、自分の興味や好みに応じて観るアーティストを選び、それ以外の時間は音楽以外のコンテンツでフェスを楽しむ、という1日の過ごし方へと参加者を誘っているように思える。もちろんライブを思う存分楽しみたい方は、ずっとステージにかぶりついていてもいい。それぞれの考え方や捉え方で形を変える自由なフェス、それが『SAMRISE Festival』ということだろう。

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