May J. 暗闇の時間を経て到達した“ユニバーサルラブ”の精神 「今はもう全く負のものは入れずに、光だけでいたい」

 May J.が7カ月ぶりとなる新曲「Spread Love」を、配信シングルとミュージックカードでリリースした。篠田ミル(Yahyel)とタッグを組み、全曲の作詞作曲を自身で手がけた9thアルバム『Silver Lining』で“希望の兆し”を掴んだ彼女は、配信リリースされた前作『Perch/Light The Way』で、あなたを照らし続ける“私だけの輝き方”に気づき、今井了介をプロデューサーに迎えた新曲「Spread Love」をもって、いよいよ新段階へと突入。R&B、J-POP、“Dark Pop”を経て、自身のルーツであるR&Bを現代的にアップデートしたサウンドにアプローチする彼女が語る、新たなフェーズとはーー。(永堀アツオ)

あのアルバムがあったからこそ、今はもう光の中にいる

May J.

ーー15周年イヤーを迎えて、「デビューアルバムのつもりで作った」と語っていた9枚目のアルバム『Silver Lining』をリリースした後から振り返ってもらっていいですか。

May J.:あのアルバムは究極に暗かったですよね(笑)。今、改めて聴くと、本当に悩んでいるなって。最後の方に答えというか、光が見えてくるようになっていたので、あの作業は自分にとってすごく大事なことだったんだなって思います。あのアルバムがあったからこそ、今はもう光の中にいるっていう。

ーーその後、今年1月に配信EP『Perch/Light The Way』をリリースしました。

May J.:光に向かっていく途中段階で(篠田)ミルくんと作った楽曲なので、まだサウンドがミニマムだったりして。ミルくん自身も明るい曲をあまり聴かないっていうし、暗めな曲が好きな2人が頑張って明るく作ったのが、あの2曲でした(笑)。ミルくんとの制作期間は本当に自分にとって宝物のような時期だったと思います。でも、今はもう全く負のものは入れずに、光だけでいたいなという気持ちになっていて。私は“エンパワーメント”という言葉が好きなんですけど、自分自身の気持ちを上げたり、誰かの気持ちを上げたり、そういうアップリフティングな方にいけたらいいなって思ってます。

ーーリスナーに音楽で力を与えたいってことですよね。『Perch/Light The Way』でDark Popがある種、完結して、「Spread Love」から新たなフェーズの始まりと考えていい?

May J.:そうですね。

ーープロデューサーには、2000年代に安室奈美恵やDOUBLEのヒット曲を手掛けたことでも知られている今井了介さんを迎えてます。

May J.:実はもう4〜5年ぐらい前から、今井さんと一緒にジャネット・ジャクソンのライブを見に行ったりとか、二人で会って、ちょこちょこ話していました。去年もテレビ番組でご一緒させてもらったんですけど、すごくタイミングよく、自分が変わりたいっていう時期に今井さんとお会いすることが多くて。実は「いつか今井了介プロデュースで、May J.をがっちりやりたいね」という話をずっと温めていたんですよ。

ーー初タッグではないですよね?

May J.:そうですね。「北極星 ~Polestar~ feat. SHOW」とか、何曲かお願いしていて。それこそデビュー当時の曲を書いてもらっているし、その後もちょこちょこあるんですけど、しっかり組んだのは今回が初めてでした。

ーー今はどう変わりたいと思ったタイミングでしたか。

May J.:いろいろあります。一つは自分のルーツであるR&Bにもう一度帰って、そこをもう少しアップデートできたらいいなって。それは、時代の流れもあるかもしれない。今はもう落ち着いてはいるかもしれないけど、Y2Kの再熱もあって。2000年代のR&Bは自分にとって一番音楽で影響を受けた時期だったので、それも関係あったと思います。あと、大きいのは、やっぱりコロナが徐々に落ち着いてきたことかな。もちろん、まだコロナは流行ってますけど、制限がなくなることで、どれだけ心が解き放たれるのかっていうことを感じて。自分だけじゃなくて、みんながそういうフェーズに入ってる。それだけでもこんなに自由に生き生きできるんだなっていうのを感じてました。

ーー今井さんとはどんな話をしたんですか。

May J.:まず自分の好きなプレイリストを作って、こういう感じの曲をやりたいですっていうイメージを二人で話し合って。今井さんはデビュー当時から私のことを知ってくれているし、私の活動もチェックしてくれていたので、彼なりの考えもたくさん聞きました。コロナ禍での制作は、自己と向き合っていた時間が長かったんです。でも、自分だけだとわからないこともやっぱりあるなと思ったし、どこか自分の中にあるものを崩したいっていう気持ちもあって。いつもそうなんですけどね。やっぱり新しいものを常に探っていきたいっていう思いがあるんですけど、今井さんは今の音楽業界を理解していらっしゃるので、そこと照らし合わせた新しいMay J.ができたらいいなっていう気持ちでした。

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