Dannie May、1stアルバム『Ishi』を経て新たなフェーズへ バンドの現在地を強烈に示したワンマンライブをレポート
愛する人との未来を思うラブソングがソウルやヒップホップ寄りの曲調で表現されたのと対照的に、Yuno作の「もういいって」はグラムロックテイストもあるロックンロール。友達以上恋人未満の好きだった人との実話ベースなのだと、MCで理解した。どこかT.Rexのオケでマイケル・ジャクソン楽曲のコーラスが入るような面白さがあった。マサのコードカッティングとタリラのクラビネットの音色がファンキーな「待ツ宵」でもYunoの色気たっぷりなボーカルが堪能でき、そのグルーヴは「灰々」に接続。間奏にJamiroquaiの「Virtual Insanity」のフレーズを直感して、ニヤついてしまった。
そして、個人的に最も驚きがあった流れが「If you イフユー」と「適切でいたい」の2曲。タリラが「イフユー!」とタイトルコールをした途端、フロアの集中力が増した気がしたのも錯覚じゃなかった。これまでのアッパーなテンションから、グッと沈み込むようなシンセベースのロー感と、ごく小さく繊細に歌うタリラのボーカルがヒリヒリするような感覚に導くのだ。だが、サビでは音源より何倍も膨張するシンセや生ドラムの音圧が迫ってくるのがライブならでは。悲しみや孤独感をダークポップに昇華したこの曲がセットリストをグッと締めていたのは間違いない。そこから「天国と地獄」のメロディをピアノでなぞったSEで始まる「適切でいたい」は孤独な魂が同調圧力で圧殺されないように、自分自身に言い聞かせるような切実さがあった。サビの〈一歩逆らってみれば/容赦のない迫害の運命〉をユニゾンでコーラスする3人に呼応するオーディエンス。この盛り上がりの背景には、たしかな共通認識があるのだと思った。
終盤を迎える頃になって、マサが「詰め込みすぎたわ、セトリ」「超楽しい」と息を弾ませる。たしかに、新作『Ishi』を軸にしつつ、お馴染みのナンバーもストーリー性を持った流れで組んだからだろう。なかなかの曲数である。
ラストスパートはここまでの喜怒哀楽を抱えたうえで、解き放っていくような選曲で突き進む。「KAMIKAZE」のサビである〈あっかんべーのベーまたBAN BAN BAN〉のシンガロング、そして、この日いちばんのジャンプが起こる。ライブでグッとフィジカルな趣きを増したこの曲に続き、四つ打ちのギターロック「OFFSIDE」、ガレージロックテイストもあるマサのギターで盛り上がりを加速させた「ええじゃないか」と、邦楽ロック的なノリのよさを連発するのは、いい意味でライブの定石といった感じだ。続いていく日常を前向きなバイブスで彩るピアノポップ「めいびー」。この曲で本編を締め括っても何らおかしくはないのだが、そこは『Ishi』を作り上げた今のDannie Mayのたくましさ。音源では初めて生音で作り上げたという「ただ生きる」を本編ラストにセットしてみせた。これが本当に頷くばかりの素晴らしい歌詞で、〈ただ生きる〉ことの難しさ、正直でいることの美しさを説得力を持って伝える構成に、あらためて射抜かれた。この曲がラストに存在することが、今のDannie Mayの強みだと言っていいだろう。
長く大きな拍手と歓声が続いたが、そこにひとり、「アンコール!」と声を上げた女性がいた。後でバンド名のハッシュタグをツイッターで見ていたら、どうもアンコールの呼びかけにテンプレートはないらしい。その人は勇気を出して声を上げたようだ。それはさておき、アンコールでなんと4曲も演奏した彼ら。8月23日リリースの新曲「BOOM BOOM BOOM」も一足早く披露し、最後の最後にはライブ締めくくりの定番だという「御蘇 -Gosu-」で、ゴスペルテイストのあるコーラスを会場全体で歌う。大袈裟に言えば、この日の出会いに感謝するような場面だった。天才じゃなくても、カリスマじゃなくても、アイデアと真心のある音楽は人を動かし得るのだ。
■リリース情報
New Digital Single『BOOM BOOM BOOM』(読み:ブーン ブーン ブーン)
2023年8月23日(水)配信リリース
■公演情報
『Dannie May ONEMAN LIVE 「SURPRISE」』
2023年10月26日(木)
東京・渋谷WWW
OPEN 18:15/START 19:00
Ticket:4,500円+D代
チケット購入はこちら:https://w.pia.jp/t/danniemay-t/
受付期間:2023年7月17日(月)21:00~2023年7月31日(月)23:59
枚数制限:お1人様4枚まで
Dannie May オフィシャルサイト:https://danniemay.com/