小倉久寛、チャリティライブ『テケテケな夏』を前に語る音楽への想い 加山雄三との特別な思い出も

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『らんまん』にも出演する小倉久寛が、7月29日にチャリティライブ『テケテケな夏2023』を開催する。動物愛護団体に収益の一部を寄付する同イベントには今回、サンプラザ中野くん、パッパラー河合、浅野ゆう子が出演。小倉は大崎聖二がバンマスを務める小倉久寛&世田谷ベンチャーズ名義で出演し、ギターの演奏やトークで盛り上げる。イベント開催を前に、スタートした経緯や小倉がギターに目覚めたきっかけ、動物への愛、加山雄三や三宅裕司との思い出などをたっぷりと語ってもらった。(編集部)

エレキギターを購入したきっかけは楽屋から聞こえた加山雄三の演奏

ーー『テケテケな夏』は、2019年に始まったイベントですが、まず始めた理由、きっかけを教えてください。

小倉久寛(以下、小倉):僕の所属するアミューズが中心になって、『Act Against AIDS』というエイズ啓発チャリティ・イベントが以前、行われていたんです(1993年〜2020年)。日本武道館などで大規模なコンサートをやっていましてね。2009年には浅草にアミューズミュージアムというものができて、そのビルには100人ほどが入れるいい感じのステージもあったんです。僕は、ちょうど落語をやりたいなと思っていた時で、声をかけたらコント赤信号の3人や、山口良一くんなどが集まってくれたので、2010年から『Act Against AIDS 浅草寄席』を始めました。それを10年やって、ちょうどいい区切りだからと終わりにしたんですけど、せっかくなのでチャリティイベントは続けましょうということになり、バンドでのライブをやっていくことにしました。それまでも、何年かに1回程度ですけど、ライブはたまにやっていたんですよ。

ーー以前から音楽のライブも行われていたんですね。

小倉:そうなんです。それで、寄付する先はどこにしようと考えた時に、僕は20年ほどペットのテレビ番組のナレーションをやっていたんです。その番組で、いろいろな事情によりかわいそうな状況に置かれてしまった動物と、保護団体の活動も見てきました。なので自分の活動も、何かの助けになればいいなと思い、動物愛護団体に収益の一部を寄付するということで始めたのが『テケテケな夏』です。コロナ禍で中断していましたけど、昨年再開し、今年は7月29日に行うことになりました。

ーーなるほど。動物の支援をしたいというお考えが、以前からあったのですね。

小倉:はい。僕の家でも飼っていますし、動物が好きなんです。それに妻がですね、僕以上にものすごく動物好きなんですよ。子供の頃からいろいろな動物を身近にして育ってきたようで、結婚してからもずっと動物を飼っているんです。

 今は犬で、ポメラニアンです。以前も犬でしたけど、その前は猫を飼っていましたね。犬、猫どちらも好きだけど、今は犬がかわいいなって。犬の愛情表現は特別ですよね。僕が帰ってくると、膝のところにやってくる、耳を丸めて。あの顔とか、しぐさとか、大声を出すのは我慢しつつ、それでも出ちゃう声だとか、たまらないんです。「この子はこうして、僕に愛情表現をしてくれているんだな」って。

ーーその小倉さんの観察眼や表現は、さすが、役者さんならではと思います。小倉さんが参加するスーパー・エキセントリック・シアター(以下、SET)はとても音楽と近い関係にある劇団だと存じていますが、小倉さんご自身が音楽を好きになったきっかけを教えていただけますか。

小倉:テレビですね。子どもの時に見たグループサウンズがすごくかっこよかったのを覚えています。それまで見たことも聞いたこともないような音楽、グループサウンズだとか、加山雄三さん、The Venturesが一気に目に入ってきて。寺内タケシさんの「運命」とか、ご存知ですか。ベートーヴェンの「運命」をエレキギターでやるんですけど、初めて聴いたときはしびれましたよ。加山さんの「夜空の星」もめちゃくちゃ好きなんです。イントロを聴くだけで、一気に体中の血が騒ぐような感じで。

ーーそれは何歳頃のお話ですか。その時にすぐ自分でもギターを弾きたいと思われたのですか?

小倉:小学校5、6年生だったと思います。中学校に入るぐらいまで、グループサウンズはすごいブームでした。ギターは自分でも弾きたいと思いましたけど、家の近くに楽器屋さんがなくて、子どもですから買うお金もないし、最初はただテレビで見て、楽しんでいただけですね。その後、中学生の時に、グループサウンズと入れ替わるようにフォークミュージックのブームが来て、フォークもかっこいいなって。『ヤング720』という番組が始まって、最初と最後にグループサウンズや、フォークの生演奏をやるんですけど、それを見てから学校に行っていたんですよ。最後まで見たくて、いつも遅刻ギリギリでしたね。僕の遅刻グセはその時ついたのかもしれません(笑)。

ーーそれだけ夢中で見ていらしたんですね。

小倉:そうですね。高校生になってやっと、入学祝いで親にアコースティックギターを買ってもらって、自分で弾き始めたのはその時からです。高校時代は下宿生活で、ギターが好きな人もいっぱいいたから、みんなでギターを弾いて歌って、楽しい夜を過ごしていました。

ーー小倉さんは声がとてもいいので、歌うとみんな驚いたのではないですか。

小倉:声はね、たまにいいって言われますよ(笑)。ただ高い声が出ないから、キーが低くて。

ーー小倉さんの今のバンドは世田谷ベンチャーズという名前ですが、The Venturesがやはり一番ですか?

小倉:全部好きでしたね、加山さんや、その頃のグループサウンズは。僕がアコースティックギターをエレキギターに持ち換えたきっかけは、加山さんなんです。1992年に放送された『社長になった若大将』というテレビドラマがあって。加山さん主演の映画シリーズの続編で、若大将が商社の社長になってからを描いた、若大将のその後みたいなドラマだった。それに僕は社員の役で出させてもらって。緑山スタジオという大きなスタジオで撮影したんですけど、控え室を出て廊下を歩いていたら、加山さんの楽屋から“テケテケテケテケッ”って聞こえてきてね。失礼しますって入っていったら、加山さんがギターを弾いていたんです。大きなアンプに繋いだ、白色のモズライトを持って。コンサートの練習だったらしいんですけど、あまりにかっこいいので、「ちょっと聴いてていいですか」ってお声をかけたら、「いいよ」と。それで感激して、次の日にエレキギターを買ったんです。

ーーすごい、翌日に!

小倉:それから徐々に練習してね。三宅(裕司)さんもギターが好きだから、SETの公演があると、いつも三宅さんと2人で弾くんですよ。三宅さんは上手だから、教えてもらいながらね。その後、CD付きの教則本を見つけて、こんないいものがあるんだって、一生懸命に練習するようになって、それが35歳ぐらいの時ですかね。30年、一生懸命練習して、弾ける曲はやっと15曲ぐらいですよ(笑)。

ーー加山さんに教えてくださいとは、さすがにお願いしなかったのですか?

小倉:加山さんのライブで一緒に弾いたことはあるんです。銀座のケネディハウスという、ザ・ワイルドワンズの加瀬邦彦さんが始めたライブハウスがあって。加山さんは月に一度だったかな、特別に出演されていたんです。それで僕も何回か見に伺ったんですけど、客席にいたら加山さんに呼ばれて、その場で一緒にギターを弾かせてもらったんです。曲は加山さんの「ブラック・サンド・ビーチ」で、「お前よく俺の前で、俺の曲を弾けるな。いい度胸してるよ」なんて言われながら(笑)。この曲もイントロに“テケテケテケテケ”ってギターの音が入っているんですけど、加山さん曰く「これは波の音なんだよ。波がぐわーっと来て、壊れていく、その音を表してるんだ」と。だからドライブ感がないと駄目だって。「お前のテケテケは日本一ドライブ感がない(笑)」って。

ーー「テケテケ」は加山さんとの思い出も含めて、小倉さんにとって大切な言葉なんですね。

小倉:そう、特別な思い出もあります。あとはね、三宅さんが『テケテケの日々』っていう本を出していて、『テケテケな夏』はそこからも来ているんです。

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