Deep Sea Diving Club、バンドの野心と観客の熱が交わるエモーショナルなライブ 『Mix Wave』携えたツアーファイナルを観て

 5月にリリースしたメジャー1st EP『Mix Wave』を携え、地元・福岡、大阪でライブを重ねてきたDeep Sea Diving Club(以下、DSDC)『Mix Wave Tour』。その3公演目、東京の会場となったのは渋谷・Spotify O-nest。バンド名にふさわしい「海の日」7月17日に開催されたそのライブは、これまで積み上げてきたDSDCの歩みをしっかりと見せながら、『Mix Wave』に刻まれた最新モードとさらにその先に進もうというバンドの野心も伝わってくる、とても力の入ったものになった。

 O-nestのステージ、中央ではバンド名を象ったネオンサインが青く光っている。のちほどMCで谷颯太(Vo)が語ったところによるとこのたび新しく作ったものだそうで、そのネオンサインが醸し出すクールでレトロな雰囲気は、彼らのパフォーマンスにもぴったりだった。開演時刻、SEが流れ出すとまずは出原昌平(Dr/Cho)、鳥飼悟志(Ba/Cho)、大井隆寛(Gt/Cho)、そしてサポートを務める宗正恭平(Key)が登場し呼吸を合わせる。そこに谷が登場して歌い始めた1曲目は「フーリッシュサマー」だ。開放的なサウンドと軽快なリズムが、この日も記録的な猛暑となった東京の夜を爽やかに吹き抜けていく。オーディエンスの手拍子を誘いつつこの曲を終えると、そのまま「Left Alone」へ。音源では土岐麻子とのコラボが話題を呼んだ楽曲だが、谷がひとりで歌うライブバージョンもまた違ったエモーションを感じさせてとてもいい。

 ツアーファイナルだけあってバンドのパフォーマンスにも充実ぶりが表れているのだが、それをさらに熱くさせるのがフロアのリアクションだ。リズムに体を揺らし、手を叩き、曲の合間には歓声を上げる。心地よいグルーヴで踊らせる「SUNSET CHEEKS」に、軽妙なギターのカッティングとハートフルなボーカルが穏やかに会場を包み込む「おやすみDaydream」。曲ごとに変わるムードを受け止めつつ全力で楽しむ気満々のオーディエンスが、会場の空気をどんどんよいものにしていく。「『Mix Wave Tour』東京、ツアーファイナルにようこそ! 序盤から飛ばしていくんでついてきてください。一緒にライブを作っていきましょう!」。そんな谷の挨拶から投下されたのは『Mix Wave』収録曲の「リユニオン」。力強く踏まれるキックドラムに合わせてハンズクラップが巻き起こり、それに背中を押されるように谷の歌声にも力がこもる。まさに「一緒に」盛り上がっていく最高のライブアンセムだ。オーディエンスのノリのよさに谷も思わずガッツポーズ。彼らにとって初めてお客さんの声出しありのツアーであり、その喜びと手応えもひとしおなのだろう。

 その後も「SARABA」「Just Dance」そして「bubbles」と思わず体が動き出してしまうエネルギーをもったダンスナンバーが繰り広げられる。「Just Dance」での谷のソウルフルな熱唱と出原のドラムソロ、歌謡曲的な切なさと夏の物悲しさを感じさせるサウンドが絶妙にマッチした「bubbles」。ステージとフロアの距離を一気に縮めながら、谷はさらに「声が出せます! 聞かせてくれ! Make some noise!」とオーディエンスを煽る。そしてメンバーを紹介しつつ一人ひとりが挨拶。「この会場も外の暑さに負けないくらい熱くなっていこうじゃないですか!」とメンバー顔負けの言葉を放ったサポート・宗正に続き、「まだまだ曲あるんで、さらにあっためていきます」と笑顔で語る鳥飼、バンド結成から8月で4年になることに触れ「そう考えると感慨深いものがありますね」という出原。そして谷に「切り込み隊長」と紹介された大井は、ゆるゆるだった鳥飼と出原のトークを塗り替えるように「俺は大丈夫だー!」と叫ぶ。そんな、どこかふわっとしたMCを経て披露されたのは、宗正のピアノから始まった大人っぽい「しじま」。そのコントラストもなんだかこのバンドのキャラクターをよく表しているような気がする。

 そこから続く曲が、そこまでの熱くて軽やかな夏の空気とは違ったムードを連れてくる。オーディエンスの歌声も重なっていっそうエモーショナルに響いた「FLACTAL」を経て「Miragesong」へ。力強いのに心が締め付けられるような切なさを帯びた不思議な1曲。谷の歌にも気持ちが乗り、サビでは一気に風景が開ける。それにしても、彼の声に宿るこの天性の切なさのようなものはなんだろう。アッパーな曲でも、もちろんこの「Miragesong」のようなミドルチューンでも、彼が歌うと途端に甘さも苦さも入り混じったような複雑な味わいが広がる。転調して突入する大サビを裏声も交えながら歌い上げると、続けて披露されたのは「渋谷の街を歩きながら作った」という「goodenough.」。谷と出原の共作によって生まれた独特の世界もまた、谷の歌声にかかればリアルな実感を伴った感情の波を生み出していく。

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