PEDRO、新体制となって1年半ぶりに帰還 再会の高揚感が溢れた一夜限りのシークレットライブ
ラストスパートに差し掛かるにつれてフロアの一体感がさらに増していくなか、ラストの「雪の街」では冬の静けさと厳しさを音楽に昇華したようなシューゲイザーを鳴らす。アユニ・Dの歌声へ輪唱するように田渕とゆーまおのコーラスが重なった瞬間は、新生PEDROの誕生をまた改めて実感するきっかけにもなっていた。
アンコールではアユニ・Dがこう話す。
「昨日BiSH人生を全うしまして、目が覚めた今日、PEDRO人生が始まりました。この感覚って、小さい頃にお昼寝から目が覚めた感覚に少し似ているのかなって自分で思ったりして。BiSH人生ってすごくカオスなもので、今日目が覚めてPEDROが始まって不思議な感覚だったんですけど、今日このステージに立ってあなた方の顔を見たら、すごく安心というか、心が温かくなりました。『午睡から覚めたこどものように』という今日のライブタイトルなんですけど――“午睡”ってお昼寝という意味なんですけど、自分はそのときのような純粋な気持ちになっているな、そしてすごい人生を経験させてもらってるなと。自分は幸せ者だと思います」
そうして会場からの拍手に包まれながら「今日ここでみなさんに会うために新曲を作ったので聴いてください」と、新曲「飛んでゆけ」を初披露。ミドルテンポで、ゆっくりと身体を横に揺らしたくなるようなこの曲は、最新のアユニ・Dのモードが反映されたチルなロックナンバーだ。〈安心して暮らして/安全な体温で/安全な言葉で〉と、アユニ・Dらしい言葉で表現された歌詞が、優しさの詰まった願いとしてオーディエンスの胸を打つ。こうして1年半にわたる午睡から覚めたPEDROは、「人」でライブを締めくくると、「俺たちの夏、またどこかで会いましょう」という言葉を残してステージを去っていった。
アユニ・Dは、ロックバンド PEDROとしてロックシーンを2本の足で再び歩き始めた。いや、むしろこの日が本当の意味での第一歩と言えるだろう。彼女の生活は続く。
■セットリスト
PEDRO『午睡から覚めたこどものように』
6月30日(金)新代田FEVER
1. さすらひ
2. 浪漫
3. 自律神経出張中
4. 手紙
5. 魔法
6. おバカね
7. ぶきっちょ
8. いっそ僕の知らない世界の道端でのたれ死んでください
9. 万々歳
10. 感傷謳歌
11. 安眠
12. 死ぬ時も笑ってたいのよ
13. 吸って、吐いて
14. 雪の街
En1. 飛んでゆけ
En2. 人
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