YUKI、ライブBlu-ray & DVD『SOUNDS OF TWENTY』レビュー 20周年記念武道館の映像で楽しみたい3つのポイント

 YUKIの20年に渡る音楽活動を通して我々が受け取ってきたものとは何か。7月19日にリリースされたライブBlu-ray & DVD『YUKI concert tour “SOUNDS OF TWENTY” 2022 日本武道館』を観れば、その答えに一歩近づくことができるだろう。

 本作には、2022年にソロデビュー20周年を記念して開催された全国ツアーファイナル、日本武道館公演本編の模様が全曲ノーカットで収録されている。これまでに35枚のシングル、11枚のオリジナルアルバムを発表してきたYUKIだが、“バンドとソロの両方で東京ドーム公演を行った史上初の女性シンガー”という記録を残した10周年記念公演を筆頭に、Zeppやホール、アリーナを巡る全国ツアーといった精力的なライブについても20年の活動を語る上で欠かすことはできない。そんなYUKIのライブ/コンサートの魅力がたっぷりと詰まった『YUKI concert tour “SOUNDS OF TWENTY” 2022 日本武道館』とはどんな公演だったのか、映像作品はどのような内容なのか。3つの軸から紐解いていく。

YUKIが持つポジティブなパワーとスター性

 まずはなんといっても、YUKIから放たれるポジティブなパワーとステージでの存在感について。歌に込められたメッセージはもちろん、元気を分け与えられるようなYUKIの姿を一目見ようと会場に足を運ぶ人も少なくないだろう。ライブ冒頭、YUKIのシルエットが映し出され、印象的な楽曲のイントロや比肩なき歌声が聴こえてくる際の高揚感には、いつの時代、どの公演であっても新鮮な感動を覚える。

 YUKIの一挙手一投足に目を奪われ、YUKIが笑顔になれば会場全体が笑顔に包まれる。最初のMCでYUKIが冗談交じりに「みんな今日、スーパースターを見に来たんでしょ?」と尋ねて観客を沸かせたように、この20年でYUKIは正真正銘のポップスターであり、ロックンロールスターであることをステージ上で証明してきた。『SOUNDS OF TWENTY』では、ダンスナンバーで見せるしなやかな身のこなしから、昨今すっかりお馴染みとなったギター演奏、そしてピアノ演奏まで、エンターテインメント性溢れるパフォーマンスを展開。バンドとストリングス、最大18名のメンバーを引き連れた華やかな演奏とともに届けられるYUKIの歌声は、ダンス、ロック、ジャズ……と、どんなリズムも軽やかに乗りこなしていく。20年を経てもなお、歌うことを心から楽しむその歌声を聞けば、“歌うために生まれてきた人とはYUKIのようなシンガーを指すのだ”と誰もが思うことだろう。

 また、「愛とユーモアと思いやりと健康が大事」など心の中にメモしておきたいフレーズが飛び出したMCや、YUKIのライブ中のいきいきとした表情をしっかり追うことができるのも映像作品ならではの楽しみだ。当日参加した人もそうでない人も、YUKIの溢れんばかりのバイタリティを感じてほしい。

代表曲から最新曲まで……振り返るだけではない20周年のモード

 YUKIはこれまでもライブを通してファンとともに活動の節目を祝ってきた。5年、10年のタイミングではその時点までの活動を総括するベスト盤を携えたパーティーを、15年のタイミングではアルバム『まばたき』の楽曲を中心にした選曲が披露された。そんななか、20年を祝す本公演では、5月にリリースした初のEP『Free & Fancy』や11月にリリースしたEP『Bump & Grind』も交えたより幅広い選曲がなされていた。

 オープニング映像の後、次第に熱を帯びていく「Good Times」から始まる意外な幕開け、1stシングル曲「the end of shite」やEP『Bump & Grind』収録の「My Vision」などが披露された序盤は、近年のYUKIのライブ演出でも珍しいロックマインドが全面に感じられる雰囲気に。「JOY」や「長い夢」、「プリズム」や「メランコリニスタ」といったポップナンバーを凝縮した中盤~「誰でもロンリー」を軸としたノンストップメドレー(11月27日大阪城ホール公演、12月5日日本武道館公演の日替わりバージョンも特典として収録)では、キャリア前期に構築されたポップサイドのYUKIの人気曲を堪能することができる。

 個人的には中盤「ひみつ」「Baby, it's you」の流れは白眉だった。静かに熱く燃え上がる恋愛から慈愛に満ちたまなざしまで、さまざまな愛を歌ってきたYUKIのシンガーとしての真骨頂ではないだろうか。猫型ピアノで弾き語りを披露した「Oh!ベンガル・ガール」はEP『Free & Fancy』から。新曲でのサプライズ的な挑戦も、常に新しい自分と出会おうとするYUKIらしい試みだ。

 後半には「恋愛模様」や「ランデヴー」「WAGON」などこれまで数々のライブをパワフルに盛り上げてきたナンバーや、YUKIのキャリアを随所で彩ってきたアニメ作品への提供曲から「ポストに声を投げ入れて」「坂道のメロディ」も披露された。ラストは「フラッグを立てろ」「鳴り響く限り」といった近年のYUKIの決意表明を歌うような2曲で締めくくる。20周年を迎えたYUKIが今この曲順で歌うことに意味がある、代表曲から最新曲までをおさえた充実のラインナップと言えるだろう。

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