Uniolla、4人の持ち味が“新鮮なバンドマジック”ヘ 音楽性の広がり&日本語の美しさが活きた充実の2ndアルバムを語る

Uniolla、4人のバンドマジック

 LOVE PSYCHEDELICOのKUMI(Vo)と、PLAGUES/Mellowheadの深沼元昭(Gt)、TRICERATOPSの林幸治(Ba)、そして岩中英明(Dr)の4人により結成されたUniollaが、2ndアルバム『Love me tender』を7月5日にリリースした。前作『Uniolla』からおよそ2年ぶりとなる本作は、これまでと同様に4人(+鍵盤楽器)によるオーガニックなバンドサウンドと、KUMIによる伸びやかなボーカルが特徴。前作では深沼が1990年代に聴いていた、英米のインディーバンドからインスパイアされた楽曲が並んでいたが、本作は曲ごとのアレンジの振り幅がさらに広がり、4人それぞれの持ち味が生かされた、より「バンドらしい」内容に仕上がっている。前回のインタビューでUniollaについて深沼は、「大人のガレージバンド」を目指すと意気込みを語ってくれた(※1)。あれから2年が経ち、それぞれにとってUniollaはどんな“場所”になったのか。メンバー全員にインタビューを行なった。(編集部)

80年代の素材を今のセンスでコーティングする面白さ

――前作『Uniolla』からおよそ2年ぶりの2ndアルバム『Love me tender』ですが、いつ頃から楽曲を作り始めていたのですか?

深沼元昭(以下、深沼):前作をリリースして、すぐに行なった1stツアー(2021年12月)で単純に曲が足りなかったんです。とはいえ、ベテランのメンバーが多いからこそ、やろうと思えばいくらでもできるカバー曲でセットリストを埋めるとか、そういうことはしたくなかった(笑)。なので、まずは「アルバムを制作する」というより「ツアーを形にする」という気持ちでレパートリーを増やしていきました。

KUMI:「嘘はないはず」「It's just the time」「Leap」「容赦なく美しい朝」は、一昨年12月の1stツアーですでにやっていたよね。で、「Love me tender」と「ララ」を去年8月のワンマンライブで初披露しているから、アルバム10曲のうち6曲はすでに人前で演奏していることになる(2023年の3月のワンマンライブでは、「まぼろし」と「No wrong answers」も披露)。

深沼:実は表題曲の「Love me tender」も元々あった曲なんです。1stアルバムが完成した頃にはすでに骨組みはあって、基本的にはいい感じだなと思いつつも、アレンジ的には「もう一歩かな」と思う部分もあって。KUMIにも聴かせてはいたんだけど。

KUMI:そうそう。私は気に入ってたよ。

深沼:だからこそ、もうちょっと詰めてからリリースしたいという気持ちがその時にはあって。すぐには録らずに寝かせていたんです。

――では1曲ずつお聞きします。冒頭曲「The 1st chapter」は、Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』からインスピレーションを得て作ったそうですね。

深沼:あのドラマで使用されていた楽曲は、僕にとってはリアルタイムというか、中学生くらいの頃に聴いていたものばかりで懐かしくて。ただ、おそらくドラマで使用する際にマスタリングなどで、今のサウンドに寄せている気がするんですよ。例えばJourneyの「Separate Ways」とか、明らかに番組用にミックスし直されていたし。そういう、当時の素材を今のセンスでコーティングしている感じが面白いなと。ドラマの登場人物たちのファッションもそうじゃないですか。80年代風の懐かしい服装だけど、ディティールはやっぱり今っぽい。

KUMI:そうだね。観ていて「懐かしくてかっこいい!」と思うけど、あの時代の“まんま”ではないような感じ。

――組み合わせのバランスで、今っぽくしている印象はありますね。

深沼:そういうところも含めて楽しく観ていたので、この「The 1st chapter」は80’sっぽいシンセをふんだんに使いながらアレンジしていきました。「こういう曲が、アルバムに1曲くらいあってもいいよね」くらいの気持ちだったんですけど、これを聴いたNAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)くんからの激推しがあって(笑)。「これはすごい!」と言ってくれたので、晴れてアルバムのリード曲になりました。

Uniolla「The 1st chapter」Music Video

――続く「嘘はないはず」は、The Pretendersやトレイシー・ウルマンを彷彿とさせるような、軽快なポップチューンです。初ワンマンライブでもとても印象的でした。

深沼:この曲はヒデくん(岩中英明)が最初から気に入ってくれてたよね?

岩中英明(以下、岩中):めっちゃ好きです。軽快なリズムと鍵盤の切ないサウンドがたまらなくて。ライブ中に時々気持ちが持っていかれそうになるんですよ。「あ、今ドラムを叩いてるんだった、ちゃんとしなきゃ」って(笑)。

――「It's just the time」もライブで披露していましたね。

林幸治(以下、林):この曲も「嘘はないはず」も、ライブで弾いていたベースラインよりはシンプルになっています。特に「嘘はないはず」は、曲の後半で動きまくるベースラインが全編にわたって入っていたんですけど、「ちょっとやり過ぎかな」と思ってレコーディングでは少し抑えました(笑)。そうやって、ライブをやる中で少しずつアレンジが研ぎ澄まされていったところがありました。先にライブで披露したのは、そういう意味でも良かったのかなと思っています。

深沼:ちなみにこの曲、ギターを軸にギターポップっぽく仕上げているけど、元々はR&Bっぽい曲なんですよ。ブラスとか入れたらまた印象が変わると思います。ライブでやっていく中で、「もっとシンプルなバンドアレンジでもいいのかな」というふうに気持ちが変わっていった曲の一つです。

「言い回しのカッコよさで逃げようとすると、KUMIのチェックが入る(笑)」

――「So am I」はどのように作っていった曲ですか?

林:この曲は、後半のレコーディングに入る前、深沼さんのスタジオへ遊びに行った時に聴かせてもらったのを覚えています。その段階ですごく良いなと思ったんですよ。イントロのギターの感じとか、Haimっぽさを感じるというか。

深沼:ああ、なるほど。分かる。

――サビのコード進行やメロディは、ちょっとバート・バカラックっぽくもあって。

林:俺もそれ、思いました。この曲、Mellowhead用に作っていたんですよね?

KUMI:そういう意味では、アルバムの中では成り立ちが一番古い曲になるのかな。

深沼:そうそう。サビは当時のままだけど、歌詞も日本語にするなど原型からはかなり変わっている。バカラックは、言われてみれば確かにそうだね。他の曲よりもモーダルでコード進行も凝っているし。ちなみに、この曲は歌詞チェックが一番厳しかった(笑)。

KUMI:英語詞のときも、それはそれでとても良かったんだけど、この曲のメロディは日本語の方が合いそうだなと思って。わりと作詞に口を出した歌詞の一つかもしれない。

深沼:言い回しのカッコよさで逃げようとすると、すぐにKUMIのチェックが入る(笑)。「ここ、何言ってるのか分からない」「曖昧すぎるよ」って。

Uniolla - So am I (Lyric Video)

――いいバランス関係ですね。「Leap (Alternate Mix)」は、ベースにコーラスエフェクトをかけているのがとても印象的です。

深沼:歌メロっぽいリフが最初に浮かんで、たまたま最後にあのベースを入れたら上手くハマったんです。コーラス処理は、The Cureっぽい感じになったらいいなと。New Orderのピーター・フックっぽくもあるけど、ああいう低音で支えないベースが今新鮮でかっこいいなと思って試しました。

――「ララ」はマンドリンの音色が効いていますよね。マンドリンとメロトロンはUniollaサウンドの重要なスパイスというか。

KUMI:そうだね。基本的にライブでは「4人で演奏して成立するアレンジ」というのをUniollaでは心掛けているけど、そこにプラスアルファで入るのがマンドリンやメロトロンのサウンドという感じですね。

深沼:この曲はライブと配信に間に合わせるよう比較的しっかりヘッドアレンジしたんだけど、ドラムが相当変わっているからどうなるか心配だった。

KUMI:基本的にUniollaのドラムは難しいよね。変わったパターンが多くない?

深沼:そうだね。1stアルバムに入っている「A perfect day」も変なドラムだった。最後に普通のパターンに戻るんだけど、基本的にハイハットがなくてずっとフラム。「ララ」に関しては最後までタムもなければハイハットもなくて。

岩中:そうなんですよ(笑)。めちゃめちゃ難しかったんですけど、レコーディングでは上手く録ることができてよかったです。

――〈今がさっきへと変わってく/戸惑ってる時間はない/想いは全部伝えよう/言葉になんなくても〉という歌詞が心に響きます。

深沼:ちょうどこの曲を作っている時は、コロナ禍の真っ只中だったんです。人と直接会う機会が減ってリモートで話すことが多くなって。Zoomなどを介して人と会話すると、本当に話が伝わらなくてもどかしい思いをよくしたんです。これだけテクノロジーが発達したとはいえ「こんなものか」みたいな肩透かし感は確実にあったし、やはりコミュニケーションは、顔と顔を突き合わせることが大切なのだなと再認識させられましたね。

林:俺も、リモート会議は大の苦手です(笑)。対面で話していたら伝わるはずのニュアンスも伝わりにくいし。ほんと、紙に書いてあった要点をただ読み上げるだけ、みたいな時間になってしまうんですよ。

深沼:分かる(笑)。もちろん、声さえ聞こえれば、そしてモニターで表情なども確認できれば理屈上は会話も成立するはずなんだけど、それ以外の情報を交換することがいかに大切なのかを思い知らされたよね。

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